転生令嬢は最強の侍女!

キノン

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19.ダイナ王女

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 私達はダイナ王女の後に続き、後宮にある花園へ向かって居た。

「花園でも、少し奥の方にお茶会が出来る場所があるの。宜しかったら、ご一緒にどうかしら?今、私の侍女にお茶とお菓子を持って来てもらう様に頼んだのだけれど」
「私がご一緒しても宜しいのでしょうか?」
「ええ、勿論ですわ」
 ダイナ王女の誘いにレティシアは無言で私達の顔を見て来た。見たところ、特に悪意を感じたりする事はなかったし、悪い人ではなさそうだから別に構わない。私はユラをチラッと見ると、ユラも同じなのか、頷いたので笑顔でレティシアに答えた。

「構いませんよ」
「ありがとう、リディア」
 花園へ着くとそこにはいろんな種類の花が咲き誇っていて、とても綺麗で癒される空間だった。更に少し奥へ歩けば、屋根付きのテラスがあり、テーブルと椅子が置いてあった。ダイナ王女に続き、レティシアが席に着くと、私とユラはレティシアの斜め後ろに控えた。
 ふいにダイナ王女と目が合い、ダイナ王女はニッコリと私に向かって微笑んで来た。
 いやーーーたまたま目が合っただけだ、特に気にする事はないだろうと思っていたが、結構な頻度でお茶会の最中にダイナ王女と目が合う事があった。というか、ダイナ王女が私を見てくる。これは気のせいではなくて、視線を逸らしていても、ダイナ王女の視線を感じていた。
 私、ダイナ王女に何かした?いや、してない。
 ダイナ王女と会うのは初めてだし、寧ろ私の記憶ではダイナ王女は乙女ゲームに出て来なかった筈だ。
 現世でアルスノウ国の話を耳にした事があるけれど、第一王女は大の人嫌いで公の場にもあまり姿を現さない事で有名だったから、花嫁候補の儀も辞退すると思っていたし…
 なのに何故、花嫁候補の儀に参加しているのだろう?乙女ゲームでヒロイン以外で唯一名前が出て来た令嬢はリリアナ侯爵令嬢だけだった。あとは、名もないモブ達ぐらい。
 隣国の第一王女なら、名前が出て来ていてもおかしくない。乙女ゲームに出て来なかったという事は、花嫁候補の儀に参加していないと思っていたのだけれど、一国の王女でありながらも、あまり目立つ行動がなかったから、居たけれど乙女ゲームでは登場すらしなかったのかしら?
あんな綺麗な黒髪の人なら気がつくのだけれどーーー
 あっ、いや、ちょっと待てよ。
 そういえば、名前は出てなかったけど、乙女ゲームの序盤に居たかもしれない。
 確か、花嫁候補達が広間に集められた時のスチルで、顔は描かれてないけれど、一人だけ黒髪の人が居たわ!ナイス、私の記憶力!
 そうじゃなくて、話が逸れてしまったわ。乙女ゲームに全く出てこないモブキャラなのに、何で私の方がばかり見るのだろう。
 もしかして、私と同じ転生者で、乙女ゲームを知っている者だとしたら納得がいく。
 だって、本来ならば私やユラはこの場にはいない人物なのだから。
 本来の乙女ゲームのシナリオ通りなら、レティシアは私ではなく別の伯爵令嬢を連れて行く筈だった。その令嬢達は、レティシアの意思とは関係なく、ヒロインの邪魔をして、その責任をレティシアに全て押し付けたのだから。
 急遽開かれたお茶会は問題なく、無事に終わり、ダイナ王女と別れた後は誰にも出くわす事はなく、無事に部屋へと帰って来た。
 部屋へ戻ると、私は遅めの昼食を取りに行った。先程のお茶会でお菓子を食べたので、軽めの昼食にする事にした。
 ユラが行くと言ったが、後宮へ来てから筋トレやヨガぐらいしか身体を動かしていないので、少し息抜きがてらに走りたかった為、ユラに頼み込み、人に見つからず目立つ行為は禁止と念を押されて出て来た。
 とりあえず、厨房へ向かう前に後宮の裏手にある森へ下調べに来た。あまり人が来ないなら、ローレンス家でしてた様にとはいかないけれど、此処である程度なら身体を鍛えられるし、ストレス発散出来るなんて思っていたのにーーー


「あら、貴女はレティシア様の侍女ですわね」
 そう言って、私の前に現れたのは、先程までレティシアを一緒にお茶会をしていたダイナ王女だった。んもぉ!!良い場所だと思ったのにぃ!!

「王女殿下、失礼致しました。王女殿下がいらっしゃるとも知らずに、私はすぐにこの場を立ち去りますので」
 私は深々と頭を下げると、ダイナ王女はクスクスと可愛らしく笑うと続けて話始めた。

「構わないわ。私が後から来たのですから、それより貴女はこんな所で何をなさっているのかしら?」
「レティシア様に少しばかり休息の時間を頂きましたので、此処で休息をと思いまして」
 そう答えると、ダイナ王女は辺りを見回してから、そっと私に近づいて来ると、耳元で囁いた。

「確かに、此処なら

 その瞬間、私はらしからぬ素早い動きでダイナ王女と一定の距離を置き、エプロンに手をやって、いつでも暗器を出せるようにすると同時に後悔した。
 あまりにも驚き過ぎて、咄嗟に身体が動いてしまった。あっ、私って驚くとこんな動きするんだ。なんて呑気な事考えてる場合じゃなかった。
 目の前のダイナ王女は、そんな私を見て優雅に笑ってるし。

「ごめんなさい。少し意地悪してしまったわ」
「あっいえ、あのーーー」
「貴女はこう思っているでしょう。『どうして私が此処で筋トレしようとしている事がわかったの』って」
 この王女は一体?ダイナ王女の言動は、まるで私の心を読んでるみたいだった。
 まず、私と接触して来た目的も分からなかった。
 乙女ゲームでもモブキャラなのにーーーまさか、私と同じ前世の記憶持ちの転生?
 それに、この乙女ゲームをプレイした事のある人間だったら、本来の乙女ゲームでリディアは登場していない人物だ。本来なら、レティシアは私ではなく別の伯爵令嬢を連れて行く筈だった。
 乙女ゲームのスチルでの令嬢達はボヤけた顔無しスチルだったけど、名前があったわ。確か「アンネイ」と「ハーティナ」だったかしら?その名前なら確かに存在している。一応、確認はした。そして、此処にも来ている。確か、別の令嬢のお付きとして来ていた。
 話が逸れてしまったけど、まさかそれだけで私と接触して来たのかしら?私かユラのどちらかが、もしかしたら転生者かも知れないって?
 とりあえず、ヘマしないようにしないと、敵か味方かまだ分からないもの。
 もう既にヘマしている気がしてならないけど…

「ごめんなさい。少し悪戯しようと思っただけなの。これだけは言わせて、私は貴女のではないから」
 ダイナ王女は申し訳なさそうに謝ると、両手を上げてそう言った。
 私はエプロンにやっていた手を下ろし、姿勢を正すと、ダイナ王女を見た。

「…敵じゃないと言う証拠はございますか?」
 そう言うと、ダイナ王女は少しホッとしたのか、手を下ろし、また話始めた。

「見せられる証拠という物は持っていませんが、私の知り得る情報ならあります。この森の先に小さな小屋がございますので、良かったそちらでお話しませんか?此処は人通りが少ないとはいえ、いつ人が通るかわかりません」
「分かりました」
 ダイナ王女の言う通り、人通りが少ないがいつ人が通るか分からない状況で、レティシアの侍女と隣国の王女が話している所を見られると不味い。良からぬ噂を流されてしまったら、レティシアに迷惑がかかってしまう。
 私はダイナ王女に続いて、森の中へと入って行った。

 少し歩いた所に小屋があり、中へ入ると、そこには小さなテーブルに椅子が二つと農機具などが置いてあるだけの部屋だった。人の手が入っているのか、中は埃はなく綺麗だった。

「此処は、今は使われていない小屋なので人は来ません。私が少し掃除したので、まだ綺麗でしょう?」
 そう言って、椅子に座ると話始めた。

「最初に貴女に伝えなくてはいけない事があります」
「はい」
「私はの命を受けて、此処へ来ています」
「ある方?」
「ええ、ある方とは私達の国では神と言われる方でございます。私の国では、ごく稀に神憑きという者が生まれるのですが、その神憑きとして生まれて来たのが私でした。普通の人には見えないモノが見えたり、不思議な能力を持つ者の事をそう呼びます。私は五歳の時に目覚めましたが、私の目の前にいたのは、ミカルと名乗る神様で、その方に沢山のお話をお聞き致しました」
「ミカル…」
 ダイナ王女が神様の名前をいうが、全く聞き覚えのない名前だった。でも、まさか、私を転生させたあの管理人の事?
 
「ミカル様は、ある一人の少女のお話もして下さいました。それが、貴女の事です」
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