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1章

防音機能

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急な大声に僕は驚く。
日はとうに沈んでおり、こんな場所で大声を出していいのかと疑問に思う。

紹介された宿屋は木材で建築されており。そこまで防音機能など備わってなどいない。
王宮は大理石などで建築されているので防音機能は並みの建築物より備わっている。

完全に宿屋のおかみさんの大声は近所迷惑といっていいのだろう。
しかし苦情などが入っていないことからこの大声は日常茶飯事みたいなものなのだろう。

「ちょっ!女将さん!そんなに大声出さないでよ!」
シャルロッテさんが注意喚起を女将さんに告げる。

「なんだい、あんた?随分と他人行儀な呼び方じゃないか。私たちは親子の関係だと言うのに」
どうやら会話から察するにシャルロッテさんとこの宿屋の女将さんは母と子の関係らしい。

「公私は分けるべきなのっ!」
女将さんの言葉に反論する。

「いや、仕事中だろうとなんだろうと親子と言う関係は否定できるはずがない。よって別に公私をわけないでいいものとする」

「そんな暴論が通用するわけないでしょ」
確かにシャルロッテさんの発言も正論だ。

しかし、女将さんの言うこともまた正論だ。
ただこうやって他愛のない会話で盛り上がれるシャルロッテさんたちが僕にはとても眩しく見える。

僕には家族と呼べる人間がいないから。
存在していないというのは語弊があるのかもしれない。

ただ僕はその家族に裏切られてしまったわけだが。
アリスさんもかつては僕の家族と呼べる存在であった。

しかしアリスさんは第一王子が王の座についてしまってから一変した。
まるで何かの魔法にかかってしまったように元第一王子に愛を囁くようになってしまった。

それからは僕に目を向けることは全くなくなった。
自分を見捨てたアリスさんは僕の両親と同じだ。

僕の両親程最低とは言わないが、それなりのクズであることに変わりはないし、その事実はどうやっても捻じ曲げることのできない事実だ。

「ハハハハ、そうかもね」
僕の憂鬱な思考を遮るようにシャルロッテさんの母親_____紹介された宿屋の女将さんが豪快な笑い声をあげる。

「絶対にそうだからね!!」

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