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1章

痕跡

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背中に少しの重量感を感じながら歩を進めていく。
これからアリスさんをどうしようかと考える。

取りあえずは聞きたいことがあるので気軽に話せる場所に居てもらいたいものだ。
先程解散した場所に来たのだが、誰も何かしらの痕跡を見つけていないのか。

集まっていない。

いつまでも背負っているのも苦痛なので僕はアリスさんを降ろし原型をとどめている安全そうな木を選び、そこにもたれかけさせる。

黒いローブの男を探しに行きたいのは山々だがこのまま放っておくわけにもいかない。
1時間ほど経ったころだろうか。

徐々に探索に出かけていたチームが戻り始めてきた。

「よし!集合するんだ!」

号令で集合した人間の顔を見渡す。
「何か痕跡を発見した者はいるか」

僕は挙手する。
「王の痕跡ではありませんが、王宮で働いていたと思われる職員を発見しました」

顔見知りなのは黙っておいた方が吉というものだろう。
「そうか!それはでかした!王もどこかで我々の行動にお喜びになっていることだろう」

リーダーの男が『天国』や『あちらがわ』でといった言葉を使わないところをみると、まだ王が生きていることに賭けているらしい。

もしくは今回の探索で何かしらの痕跡を発見したのかもしれない。
「その職員はどこにいる?」

「気絶していたので木陰で休ませています」

「気絶しているのか、目立った外傷は見られないから命に別状はないとは思うが……念のためだ。あとで病院に連れていってくれ。診察代やもしもの入院費は銀行や金貸しに王のご意思と伝えれば快く払ってくれるはずだ。何かひと悶着あっても私が証人になろう。あと数日はここで痕跡を探してみるつもりだ」

「了解しました」

存外、人間性は失われていないらしい。

「他に何か発見したものはいるか?」

男が尋ねてみるが皆首を横に振るばかりだ。
誰もが気落ちした様子を見せている。

「そこまで落ち込むことはない!皆が一丸となりもう一度探せば必ず見つけれるはずだ」

「と、私も偉そうに上からものを語っているが実は何も見つけることのできなかった君たちの仲間だ。唯一何かを発見できたのはこの青年だ!盛大な拍手を!」

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