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1章

しつけ小屋

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僕が希望がないと判断したのは王宮の敷地内に入り少し歩いてからだった。
新聞や噂話、喧噪を盗み聞きしたのであれば崩落寸前という話だった。

まあ、しかし話とは全く違うのではないか。
あくまで崩れかけというのがきいた話であった。

しかし、王宮は完全に崩れ落ちていた。
どこを見て崩落寸前と判断したのだろうか?

いや……騒動が起きた直後は崩落寸前だったのかもしれない。
しかし、時間が経ってしまったことにより崩れたのかもしれない。

人の伝達には齟齬が発生する場合も多い。
僕は深く考えるのも無駄だと思い。

思考を切り離す。
別に僕が考えることではないだろう。

「散って探した方が探索しやすいだろう!皆散れ!」

リーダー性を持つ彼に命令されて皆散り散りになっていく。
大体の人間は何人かのグループになり探索を続けていく。

その方が効率もいいだろう。
だが僕の目的には必要ない。


グループ行動というものは。

僕は1人で誰も探さない、向かわない方へと進んでいく。
大きな建物など一つもない。

小さくて汚い家までむかっていく。
数十秒歩くてそれは見えてくる。

この小屋は、ここに幼少期から住んでいた人間なら誰しもが入ったことがある。
ここはしつけ部屋_____いや正しく語るとするならばしつけ小屋か。

言うことを聞かない幼い子供をしつけのために入れて反省するまで出さない。
確かに……いうことをきかすにはいいんだろうけど……

トラウマになりかねない。

実際僕は一度入れられた記憶がうっすらとある。
しかし、何をしでかして入れられたかなど覚えていない。

ただ頭の片隅にその記憶が断片として残っているだけである。
相当な暗さだった。

考えながら小屋を見つめて気づく。

小屋は崩壊していなかった。
崩壊と言った大仰な言葉は似合わない。

倒れていなかった。
原型をとどめていた。

騒動があった王宮から少しばかり離れていたからだろうか?

それでも王宮は殆ど原型をとどめていなかったので破片などで何かしらの日がを受けていても不思議ではないのだが。

まあ、ダメもとで開けてみるか。

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