価値の無くなった僕に誰も手を差し伸べはしない

1章

コピー

「まあ、確かにそうですからね　実際僕も全く悲しんでいませんし」

「それが普通の反応さね」

そうだろうなと僕は考える。
「それにこっちは直接迷惑をかけられたんだ」

何か小声で言葉を口にしたがその声は僕の耳には届かなかった。

「あ、シャルロッテさんは体調が悪そうなので僕の部屋で寝かせてます」
「ありがとうね　でもなんであんたの部屋で？」

「まあそれはいろいろありまして」

まさか女将さん本人にシャルロッテさんを近づけるともっと精神的苦痛や疲れを与える可能性があるからなどのことを伝えれるはずがない。

ましてや母親になど伝えれるはずがない。
理由を正直に話してしまえば女将さんは憤慨してしまい気まずくなるのは目に見えている。

最悪の場合、この宿から追い出されるかもしれない。
今は明るくなっているので他の宿も探すことができるだろう。

しかし、この宿は居心地がいい。

他の宿にいってもこの居心地は感じることが出来ないだろう。
それを僕のしょうもない行動や言動で失うのは惜しい。

伝えても誰も幸せにならないことは伝えない方が良いのだ。

人の心の内なんて知らない方が良いのだ。
世の中には知るべきではないことも存在する。

その一つが人が勝手に脳内で繰り広げていっている妄想の類だ。

女将さんからの質問を適当にはぐらかし「今、無理に起こして動かすと可哀想なので起きるまでそっとしておきますよ」と告げて僕は自室へと戻った。

周りの光景や何か嫌なことを思い出してしまったのか、シャルロッテさんはうなされていた。
まあ、眠っている人へ僕は助けることが出来ないので気にしないで考える。

これから何をしなければならない？
黒いローブの男はまず捕まえて話を聞かなければならない。

そしてまた何かやらかす可能性があるので僕の監視下に置くのが当面の目標だ。

しかし、現実問題僕はまだ黒いローブの男よりも残念なことに戦闘力は劣っている。
戦闘力以外でカバーできる部分があればいいのだがそんなところはない。

僕が知っている魔法や体術、学力等は全て彼から教えてもらった者なのだ。
元は彼の知識なのだから……

コピーがオリジナルに勝つことなどほぼ不可能だ。