価値の無くなった僕に誰も手を差し伸べはしない

1章

騒ぎの正体

騒ぎの正体を知るために僕はシャルロッテさんをつれて宿屋の外に出る。

いらない紙きれのように扱われている新聞紙をひろいあげて騒ぎの正体を確認する。
僕はその内容に目をそらしたくなった。

この国で起こった重大事件とは……
現王の暗殺と王宮の壊滅であった。

現王が暗殺された直後に王宮がすさまじい音をたてて崩壊したらしい。
しかし、奇妙な点がいくつかあった大規模な崩落であったにもかかわらず、死亡者やけが人は現王以外誰もいない。

ただ、現王を心のよりどころにしていた何人かの家臣たちが現王の死亡の知らせを聞いて精紳がまいってしまっているらしい。


僕は思う。
恐らくこれが黒いローブの男が企んでいた計画というものなのだろう。

僕の嫌な予感は残念ながら的中してしまったらしい。

最悪だ。

だが、僕の心の一部は圧政を敷き一般市民の生活水準を大きく下げた愚王である。
死んだところで喜ぶものが多いのではないか？

事実、僕の一部は喜びの声をあげている。

しかし、号外の新聞を貰った者たちは絶望の表情や悲しみの表情を浮かべているものが殆どだ。

僕の真横にいるシャルロッテさんの表情もまた＿＿＿＿＿

彼女の表情は周囲の人間とは大きく異なっていた。
絶望色ではなく喜色に満ちていた。

本来なら圧政を敷いていた王が死んだのだから喜ぶものがいてもおかしくはない。
この誰もが絶望色を浮かべている今は喜色を浮かべているシャルロッテさんが異質に見えてしまうのだ。

僕の向ける視線に気づいたようだ。
さっとシャルロッテさんは顔を下に俯ける。

「やっぱりおかしいんですかね？私」

僕に問いかけてくる。
「みんなは王が死んで悲しんでいるんです。あまりのショックにやんでしまう人々もいると言うのに、私は喜色を顔に浮かべてしまうんです」

いや通常の人間ならばそれが普通の反応なのだ。
恨んでいても仕方がない。

「それが普通ですよ　僕だって圧政を敷いている現王には恨みつらみはありますけど、感謝の情は全く湧いていませんけどね」

シャルロッテさんの反応は恥じることではない。
僕はそのような事柄を彼女に告げた。