価値の無くなった僕に誰も手を差し伸べはしない

1章

愛弟子

「私の計画にとってもう一人の私　つまり君の存在が邪魔になるわけだ、理解してくれたかね？」
「ええ、理解することが出来ました」

そのぐらいは先の会話で理解できる。
先程は皮肉で教養など持ち合わせていないと心中で語ってみたが、実際はそうとうあるとおもう。
勉学だって目の前にいる男に叩き込まれたのだから。

そんなことは知っているはずだ。

「だから＿＿今この場を持って愛弟子の君には退場してもらおうと思う」
「嫌だと言ったら」

「強制的に退場させよう」
殺すとか物騒な言葉が飛び出してくるかと思ったがそんなことはなかった。

「自ら退場するか、抵抗して強制的に退場させられるか選択しろと」
黒いローブの男は首を横に振って否定の意を示す。


「抵抗させる暇など与えない　君との会話で自ら退場する意思がないのは汲み取ることが出来た」
黒いローブの男が言葉を言い終わると同時に僕の体が淡い青色の光に包まれた。

「悪役になるのは私だけでいいんだよ　愛弟子には＿＿＿君には悪役ではなく正義のヒーローが似合ってるよ」
先程まで少年がいたそこには黒いローブの男ただ一人がたっており静かなる独白が吐かれた。



気付けば僕は宿屋の自室のベッドの上にいた。
これが強制的に退場させるということらしい。

力づくで退場させるのかと思ったが、予想していたことよりもはるかに平和的な解決方法だ。
あれは、神話や御伽話で出てくる転移魔法というものなのだろうか？

彼の口ぶりから察するに、僕は彼の計画を実行できるみたいだ。

僕と黒いローブの男、そして誰かは分からないがもう一人いるみたいだ。

僕は今彼が何を企んでいるのかは分からない。
僕は止めれるのかもしれない。

だとしても、彼が何をもって何を実行しようとしているかが分からないので対策のうちようがない。

彼を僕が止めに行っても、先程の平和的な魔法で退場させられてしまうことだろう。
そんなことは目に見えている。

それならば僕が無理して止めに行かなくてもいいだろう。
たくらみは大きなことだろうし、そんなことが起これば王城にいる衛兵たちがとんでくることだろう。

そいつらに任せていれば何とかなるだろう。