価値の無くなった僕に誰も手を差し伸べはしない

1章

片づけ

　僕は空になった皿をお盆へと移動させて皿を片づけるべく立ち上がる。

待っていても皿の回収にこの宿屋の女将さん　シャルロッテさんは来なかったので自分で片づけに行くしかないようだ。
　まあ、あれだけ美味しい料理が出たのだから皿の回収なんかしなくても文句を口にすることはないけれど。

　僕はお盆を持つことで両手が塞がっていることに気づいた。
僕はお盆を一度床に置いて解放された手でドアノブにてをかける。

　ドアを開けた瞬間、僕はドアが開いている時間に足でドアが閉まるのを防ぐ。
　僕は足で扉を止めながら器用にお盆を両手で救い上げる。
　開けたドアから僕は外へと出る。

スタッフルームは僕が宿泊している２回には存在していないだろう。
　存在しているとするならば１階だろう。

先程シャルロッテさんが姿を消した場所の近くにスタッフルームは存在しているだろう。

　僕が予想している場所に存在していなければ僕は心辺りがない。

確か大浴場の近くでいなくなったから……

ここらだとは思うけど、僕は大浴場へと向かっていた。
　彼女が僕と別れた場所を探索しているのだ。

数歩歩くと、スタッフルームと表記されたドアがあった。

普通ならノックするのだろうが、あいにく両手が塞がっている今の僕ではすることが出来ない。

出来ないものは出来ない。

しかしまあ、ノックしないのは失礼に値するかもしれないので足でノックを３かいする。
「はい」

短く声が聞こえた後、扉がゆっくりと開く。

シャルロッテさんが出てくると思っていたのだが、僕の予想は外れたようだ。

ドアが開いた時に立っていたのは、シャルロッテさんのお母さん＿＿＿＿つまりこの宿屋の女将さんだった。

「何か用かい？」

　僕は皿を返しに来た節を伝える。
「娘が取りに来なかったかい？」

女将さんに問いを投げかけられるが、そんな記憶はない。
ずっと部屋にいたし。


　「そうかいそうかい　わざわざありがとうね」
お礼を口に出して扉はゆっくりとしまっていった。


　「どうやら娘にはお仕置きが必要なようだね」

　不穏な言葉を残して女将さんはドアの後ろに消えていった。