女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ

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女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』その(16)シルヴィア失神。

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夏の大会で元幕内力士雷豪を倒したシルヴィア滝田だが、半年ぶりの彼女は以前にも増して逞しくなっているようで表情にも自信がみなぎっている。

長身モデル風3人の美女に先導されて花道を歩いてくるが、モデルたちにも遜色ないスタイルの良さ。
それにしなやかに鍛えられた筋肉、夏より一回り大きくなっているようだ。
試合前の計量では176.2cm 69.5kg
身長で1.7cm、体重も1.5kg アップ。
まだ18才の女子高生であり成長する。

元大相撲小結翔龍道は紫のハーフパンツで入場するが、こちらは雷豪と違って去年まで現役、トレーニングも続けているようで現役時代とあまり変わらない肉体をしている。
計量では 173.2cm 108.4kg
巨漢雷豪とは対照的に小兵力士で鳴らしたが身体の分厚さはさすが元力士。


(実況)

「さあ、試合が始まります。こうしてリングで向かい合っていると、体重差40kg近くありますが、身長は逆にシルヴィア選手が3cm高い。そんなに身体が違うように感じません。自信満々に不敵な笑みを浮かべるシルヴィアに対して翔龍道は表情が固いぞ!」


試合は雷豪戦と同じ3分3R。
ゴングは鳴った。

雷豪戦は初めての格闘技戦で、相手は男性であり元幕内力士。しかも、超巨漢を目の前にして怖さもあった。
しかし、そんな雷豪は3年間殆どトレーニングもせず酒ばかり飲んで弛んだ身体でリングに上がってきた。結果的にシルヴィアは雷豪を人間サンドバッグのように膝を破壊し最後は顔面への一撃で鼻を潰してしまった。

あの時は雷豪の周囲をぴょんぴょん飛び跳ねながら戦ったが、今日は相手の真正面に立ち、いきなり膝にローキックを放った。嫌な顔をして後退する翔龍道の膝に、続けて2発目、3発目のローキックが襲いかかる。
そのまま1ダース程も下段回し蹴りを浴びた翔龍道の表情が泣き顔のようになった。足を引きずっている。

もうダメなのか?

翔龍道は試合前に角界関係者から「絶対にあの少女を倒してこい!」と、至上命令を受けている。
それに、自分は元小結なのだ。幕内三役も努めた自分が空手家とはいえ女子高生に負けるわけにはいかない。

想像を絶するプレッシャーの中で翔龍道は今日という日を迎えたのだ。


一度格闘技戦を経験した自信と、あれから半年、NOZOMIとトレーニングも積んできた。雷豪戦の時より格段にシルヴィアの実力は進歩している。
翔龍道はシルヴィアの蹴りを浴び続け弱気になりかけていた。
膝を気にしてガードが下がりかけると今度は顔面にシルヴィアの鉄拳が飛んでくる。顎を下げ必死に両腕でガードすると、また下腿部にローキックが飛んでくる。一方的になった。
レフェリーが何も反撃出来ない翔龍道の様子を窺っている。
このままではストップされてしまう。

膝と顔面を守りながら、翔龍道が前傾姿勢になった時だ。シルヴィアがニヤッと不敵な笑みを浮かべた。

シルヴィアの膝が翔龍道の顔面、下顎のあたりに炸裂した。前のめりに膝と手をつく翔龍道、ダウンである。

シルヴィアは追撃のマウントになることなく、勝利を確信したのか? 両手を高々と上げガッツポーズ。

レフェリーが翔龍道の表情を見ながらそっとカウントをとった。

ワン、ツー、スリー


シルヴィアは相手の手応えのなさにちょっとガッカリしていた。
(元小結といっても、腰と膝を悪くして十両に陥落してそこでも負け越し引退したんでしょ。膝、大丈夫かしら?)

カウントを聞きながら翔龍道は、相手は女の子といっても身体能力の高い黒人の血が混じっていて、この褐色のケンカ空手少女は大きくて強くて速い。
自分は女の子に負けてしまう...。
翔龍道は心が折れてしまいそうだ。

もう、一か八かだ!
幾分鼻血を出しながら最後の力をふり絞って用心深く立ち上がった。


(あら、まだやろうっていうの? じゃもう少し遊んであげるわね...)

格闘技における油断は禁物。
まだ18と若いシルヴィアのそれが甘さなのだ。自信過剰で力士の本当の恐ろしさを知らないのだろう。

立ち上がった翔龍道の前に不用意に立ち下段回し蹴りをしようとした瞬間。
翔龍道の手が伸びると、シルヴィアの
道着の裾を掴まえた。すると、シルヴィアは物凄い剛力で引き寄せられた。

目の前に翔龍道の顔があった。

??? まずい!

 次の瞬間であった。

バチィーーン!!

シルヴィアの左顔面に元小結力士の張り手がまともに炸裂した。

シルヴィアは一瞬で意識を失い、その場にまるで操り人形が崩れ落ちるように倒れた。


○ 翔龍道 (1R2分47秒 KO) 
     ☓ シルヴィア・滝田。


勝ち名乗りを受けた翔龍道も、鼻血を流しながら膝を散々蹴られ歩くこともままならず関係者の肩に支えられながらリングをあとにした。

シルヴィアが意識を取り戻すのは15分後の控室であった。


NOZOMIは控室で、この試合をモニターでジッと見ていた。

(シルヴィアの気の強さが仇になったようね。ダウンを奪ったところでマウントからのパンチでとどめを刺さないとだめ。相手を甘く見た彼女の驕り高ぶりがもたらした結果。でもこれは、今後の彼女にいい経験になった...)

大晦日格闘技男女大戦争。

ここまで男子の2戦2勝。

次はいよいよNOZOMIの出番。
相手は名実共に日本キック界最強のスーパースター、ダン嶋原である。


(リングアナ)

「さて! いよいよ大晦日格闘技男女大戦争、最終戦になります。ダン嶋原に挑むNOZOMI選手の入場です」


場内が暗くなると、クラシック音楽が鳴り響いた。
花道にスポットライトが照らされようとしていた。

そこへNOZOMIらしき長身美女のシルエットが浮かび上がってきた。

観客は息を飲んだ。


(実況)

「おおっと! こ、これは...)


日本全国の格闘技ファンはNOZOMIの衣装に度肝を抜かされることになる。


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