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その5 陽子
しおりを挟む兄は失恋した。
傷心の日々、、陽介はそんな兄を見るのに忍びなかった。
兄と島村久子さんという女性が付き合っていたのは知っていた。兄から彼女とは結婚を考えている、、と聞かされた時は “頑張ってね!”とは言ったものの本音のところでは寂しかった。
頭が良くスポーツマンで頼りがいのある兄は、陽介にとって幼い頃からの憧れの的。そんな兄が結婚して家を出て行ってしまうことを考えるとジッとしていられない程だった。
それでも実際、兄がふられて落ち込んでいる姿を見ると島村久子という女性が憎らしくなる。
(僕が兄を慰めてやらないと...)
陽介は兄に「男同士だし血の繋がった兄弟。僕がお兄ちゃんを誘惑なんてするはずないよ」とは言ったが、そんな気持ちも多少はあった。
陽介は見てしまった。
兄にメールを送ったあと、トイレに向かおうとすると兄の部屋ドアが少し開いていた。そっと覗いてみると兄がパソコンを見ながらオナニーをしていたのだ。パソコンには陽介のセーラー服画像が拡大して映っていた。
(お兄ちゃんは僕の女装写真でオナニーしている。嬉しい...)
ゾクゾクっとした。
陽介は兄に「もうメールは送らないから安心して」と言ってから一度も送信していないが、兄だって本当は心待ちにしているかもしれない。
(僕が慰めてあげるからね...)
陽介はスマホに保存してある秘蔵の女装写真を兄に送った。
孝介は部屋で微睡んでいた。
しばしば夢の中に島村久子が出てくるのだが必死に忘れようとしていた。
メールが着信した。
送信者は陽介。
???
陽介からのメールは半年ぶりかな?
孝介は少し期待する。
『もうメールは送らないと言ったけどあまりにもお兄ちゃんが落ち込んでるので...。これがオナニーのおかずになってくれたら嬉しいな。もし本当に迷惑だと思ったら言ってね。(陽介)』
添付された画像を見て孝介は目がそれに釘付けとなり仰天した。
妖しくセクシーなランジェリー姿。
今までの写真は普通の女装姿だった。この写真は男を挑発する娼婦のようでもあり、光沢のある黒スリップの下には官能的なTバックのショーツにブラが透けて見える。網タイツがガーターベルトで吊るされている。メイクも娼婦を思わせセクシーだ。
孝介の男性器がムクムク起き上がる。
(オレは弟を見てこんなになってしまったのか? もう、男同士とか兄弟だとかそんな壁はぶち破って、一線を越えたって構うもんか!)
ようこ!
孝介は陽介のことを「陽子」と呟き画像を見ながらシコシコが始まった。
孝介は島村久子より陽子の方がずっと美しくセクシーだと思った。
翌日、陽介はメールを送ったことを兄に叱られるのではないか?と、その顔色を窺った。あんな挑発的な下着姿の陽介、、兄は陽介を淫らな女と感じたかもしれない。軽蔑される?
兄は何も言わなかった。
それどころかいつもより機嫌が良さそうに見える。黙認してくれたのかな?
それから毎週のように陽介は兄にメールを送った。女装画像はどんどん過激になり、それはまるでエロ画像のようにもなってきた。
兄はこれを見てオナニーをしてくれているのだろうか? 陽介はメールを送る度にそんなことを想像する。
気のせいかもしれないが、メール送信再開してから兄は表情が和らいできたように見える。
失恋の痛手で暗い顔ばかりだった兄が立ち直ってきたように感じる。
兄は照れ屋で何も言ってくれないが、その表情を見れば陽介には分かる。
その年も年末を迎えようとしていた。
孝介は24才、陽介は19才だ。
父と母が九州旅行するとのことで、孝介も陽介も誘われたがもう家族旅行を喜ぶ歳でもなく、兄弟ふたりで留守番することになった。
「一緒に行けばいいのにね...。ふたりして留守番お願いね」
両親は12/30の昼間に出掛けた。
帰って来るのは年明け1/4だそうだ。
大晦日の朝だった。
「おい陽介! 今夜はすき焼きでもやって、紅白でも観ような」
「そうだね、それじゃ、お兄ちゃんが具材の買い物してきて。お兄ちゃんはお肉好きだけど僕は椎茸が好きなので絶対忘れないでね」
「おお! 分かった」
陽介はあることを考えていた。
(お兄ちゃんはどんな反応するかな?ちょっぴりコワいいけど覚悟した)
孝介は午後3時過ぎにスーパーに買い物に行くと、すき焼きの具材やその他正月食材を買うのだった。弟は未成年でもありお酒は飲まないが孝介は大好きだ。酔った勢いで陽子(陽介)をなんて想像すると変な気持ちになった。
(今夜は弟の女装を褒めてやろう。照れくさいけどたまにはいいだろう)
買い物から帰ったのは午後五時半になろうとしていた。孝介は車を車庫に入れ買い物袋を抱えて家に入った。
「陽介! 今帰ったぞ。肉、買い過ぎかもしれないが、お前が好きな椎茸、豆腐、ネギ、しらたきもたっぷりな。男同士の鍋なんてこんなものさ」
「お疲れ様でした~!」
陽介はキッチンに立っているようで、野菜か何かを刻んでいるのか?
トントンという音が聞こえてきた。
陽介はドキドキしていた。
(兄はこの僕を見てどう思うだろうか?
怒られるか、それとも...)
孝介は買い物の荷物を抱えてキッチンに入った。そこには女子高生らしき後ろ姿が見えた。
女子高生は振り返り孝介と目が合うとぎごちない笑顔になった。明らかに女子高生の表情は緊張している。
吃驚した孝介は荷物をドサドサと床に落とし立ち尽くした。
この陽介の姿は、あの時警察に引き取りに行き、帰りにカラオケボックスに寄った時と同じ制服姿だ
「お兄ちゃん、嫌だったらすぐに着替えるから、、、」
「あ、いや、、嫌じゃない。ちょっと驚いただけだ。そのままでいい...」
メール送受信で画像で触れ合うことはあっても、直にこうして男と女として面と向き合うのはあのカラオケボックス以来だとふたりとも思った。
それからふたりしてすき焼きを突いたのだが、お互いに相手の本心が分からずその緊張感からか?ぎごちない会 話が続いた。何をどうやって話したらいいものか?パニックなのだ。
そんな緊張感から逃れるように、孝介はしこたま酒を飲んだ。飲めない?はずの陽介まで飲んでいる。
酔った勢いなのだろうか?
「ようこ~ 今からお前は陽子だ!」
そう叫んでしまった。
「ようこ(陽子)? 嬉しい。今日から僕はお兄ちゃんの前では陽子です」
しかし、飲み過ぎて酔った兄は除夜の鐘を聞く前にそのままソファーで眠ってしまった。陽介は眠る兄の横に座るとシャツをめくり軽く胸に触れた。
筋肉フェチの陽介は、兄の逞しい胸と割れた腹筋に頬ずりした。
今の陽介は女の子なのに、アソコが硬くなるのを感じていた。
(僕は陽子なのだ)
陽介は兄の胸に頬を埋め、その感触に恍惚としながら入眠した。兄の腕も無意識?に弟の肩にまわっている。
ふたりともかなり酔っていた。
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