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その他
深夜徘徊する子供
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神棚のある座敷で私と弟は布団を並べて眠っていました。
弟は深夜三時を過ぎると起き出して、隣の座敷でこっそりテレビゲームを始めます。
だから私はそれより少し前、深夜二時には密かに家を抜け出して夜の散歩をするのです。
布団を剥ぐと弟の寝息を確認し、私は玄関に向かいます。
靴を取りに行くのです。
床がきしむといけないので、廊下を避け、隣の座敷に入ります。
畳の縁を踏み(そこは確かに硬いから絶対にきしまない)歩きます。
眠っている座敷には神棚が、隣の座敷には仏壇がありました。
私は悪魔の子なので、縁を踏んで歩いていいのです。
神の加護は私の外側にある。
だから神も仏も一人抜け出していこうとする私を咎めることはないのです。
玄関から、運動靴を持ち出すと私は、元のルートを辿って引き返します。
玄関の引き戸は開けるとキュルキュルと音を立てるので、そこからは出られないのです。
それにそちら側から出ると道を挟んだ隣の家の犬がうるさい。
靴を胸に元の座敷へ戻ると、掃き出し窓を静かに開け裏庭に出ました。
部屋のすぐ向かいに別棟があるので窓の脇にはつっかけが置いてあるのですが、大人用なので散歩には適しません。
私はうんと遠くまで行かなければならないのだから、しっかりとした運動靴を履く必要があるのです。
外の空気は汗ばんだ腕をくすぐるようです。
私はやっと羽根を伸ばすことができるのだ、と思います。
きっとそれは闇に似合う漆黒の羽根。
コウモリのように美しい曲線をしているはずだ。
一度も見たことはないけれど、私には、ある。
月が明かるければいいなと空を見上げます。
別棟の屋根やウバメガシの木が邪魔をして空はほんの少し覗くだけ。
北斗七星、カシオペア。
こんな小さな空には見つけられない。
演劇クラブで何度も演じた夏の大三角形と天の川のお話を思い浮かべます。
瓜を縦に切るか横に切るか指示をする、誰かの役。
私のセリフはたった一言。
「タテ」
これを3回繰り返す。
まるで呪文のように。
私は裏庭を突っ切ります。
ブロック塀の苔の色が、私の味方です。
裏庭には鉄製の扉があって、私はそれに足をかけ、静かに乗り越えます。
扉のオレンジのペンキは剥げていて、握ると手のひらに鉄錆がつきます。
私は触れるたび、必ず手を鼻に寄せて匂いを嗅ぎました。
裏庭から出ると周囲は畑ばかり。
自転車で上りきれないような急な坂道があって、その道沿いに腰の曲がったおばあさんが一人暮らしをしている家が一軒あるだけ。
街灯などありません。
田舎の山に突き当たるだけの道。
こんなところ誰も通らないからです。
田んぼの畦は草が深くて足を踏み入れるのは恐ろしかったのでアスファルトの真ん中を歩きました。
多分畦には蛇がいて、私はそれを踏んでしまうのだ。
私はそれをありありと思い浮かべることができました。
父は昔畑に出た蛇を唐鍬で真っ二つにしました。
その後頭蓋を唐鍬の根元で潰してしまいました。
覗き込もうとすると父はそれを山へ投げ込んでしまいました。
きっと蛇は悪魔の味方だから(でも神の使いとも言うよね)、私は蛇が好きでした。
けれど蛇は私が蛇を殺した男の娘だと知っているのです。
だから蛇は私を許さないと思うのです。
私は山に覆いかぶさられるようで恐ろしくなりました(山には神がいるのです)。
坂をズンズン下りていき、道なりに曲がりながら進み続けると何軒か家が立ち並ぶ通りに出ます。
坂の最後はT字路。
突き当たりに見える自販機の光。
ジュースの自販機の隣にはカロリーメイトの自販機がありました。
私はいつかそれを買って食べてみたいと思っていました。
私にはまだ自由になるお金なんてほとんどありませんでした。
私が歩いてきた静かな道は夢の延長でした。
私は眠っているのです。
ここから先は人の世界。
白々とした灯りの中へ私はいけませんでした。
いけば、私は光に溶けてなくなってしまうかもしれない。
闇の中で私はようやく世界と二人きり、輪郭をはっきりと感じることができたのだから。
息をすることができたのだから。
しばらく逡巡し憧れのように光を眺めて私は帰路につきました。
いつもここまで。
ここまでだ。
胸の前で腕を組み手のひらで両腕をさすり、私の境界をなぞります。
私と、私でないもの。
くっきりとした輪郭。
私は再び暗闇に目を慣らし、満天の星空を見上げました。
そこにあるのは当たり前の夜空でした。
遠く離れた今思うと、故郷の空は零れ落ちそうなほどの星をたたえていたのだけれど、その時の私にはそれが普通でした。
裏庭の扉の前まで戻ると、肺が空気を全く入れ替える!と思いながら深呼吸し、扉に足をかけました。
扉が揺れてブロック塀にあたるかすかな音に舌を打ちます。
窓から部屋に入り、きちんと靴を玄関に揃えてから布団に潜り込みました。
しばらくすると無音のテレビから発する、音ではないが押さえつけるような電波の気配を感じ、弟がゲームを始めたことを知りますが、それは弟の世界。
私はそのまま無に吸い込まれていくのです。
弟は深夜三時を過ぎると起き出して、隣の座敷でこっそりテレビゲームを始めます。
だから私はそれより少し前、深夜二時には密かに家を抜け出して夜の散歩をするのです。
布団を剥ぐと弟の寝息を確認し、私は玄関に向かいます。
靴を取りに行くのです。
床がきしむといけないので、廊下を避け、隣の座敷に入ります。
畳の縁を踏み(そこは確かに硬いから絶対にきしまない)歩きます。
眠っている座敷には神棚が、隣の座敷には仏壇がありました。
私は悪魔の子なので、縁を踏んで歩いていいのです。
神の加護は私の外側にある。
だから神も仏も一人抜け出していこうとする私を咎めることはないのです。
玄関から、運動靴を持ち出すと私は、元のルートを辿って引き返します。
玄関の引き戸は開けるとキュルキュルと音を立てるので、そこからは出られないのです。
それにそちら側から出ると道を挟んだ隣の家の犬がうるさい。
靴を胸に元の座敷へ戻ると、掃き出し窓を静かに開け裏庭に出ました。
部屋のすぐ向かいに別棟があるので窓の脇にはつっかけが置いてあるのですが、大人用なので散歩には適しません。
私はうんと遠くまで行かなければならないのだから、しっかりとした運動靴を履く必要があるのです。
外の空気は汗ばんだ腕をくすぐるようです。
私はやっと羽根を伸ばすことができるのだ、と思います。
きっとそれは闇に似合う漆黒の羽根。
コウモリのように美しい曲線をしているはずだ。
一度も見たことはないけれど、私には、ある。
月が明かるければいいなと空を見上げます。
別棟の屋根やウバメガシの木が邪魔をして空はほんの少し覗くだけ。
北斗七星、カシオペア。
こんな小さな空には見つけられない。
演劇クラブで何度も演じた夏の大三角形と天の川のお話を思い浮かべます。
瓜を縦に切るか横に切るか指示をする、誰かの役。
私のセリフはたった一言。
「タテ」
これを3回繰り返す。
まるで呪文のように。
私は裏庭を突っ切ります。
ブロック塀の苔の色が、私の味方です。
裏庭には鉄製の扉があって、私はそれに足をかけ、静かに乗り越えます。
扉のオレンジのペンキは剥げていて、握ると手のひらに鉄錆がつきます。
私は触れるたび、必ず手を鼻に寄せて匂いを嗅ぎました。
裏庭から出ると周囲は畑ばかり。
自転車で上りきれないような急な坂道があって、その道沿いに腰の曲がったおばあさんが一人暮らしをしている家が一軒あるだけ。
街灯などありません。
田舎の山に突き当たるだけの道。
こんなところ誰も通らないからです。
田んぼの畦は草が深くて足を踏み入れるのは恐ろしかったのでアスファルトの真ん中を歩きました。
多分畦には蛇がいて、私はそれを踏んでしまうのだ。
私はそれをありありと思い浮かべることができました。
父は昔畑に出た蛇を唐鍬で真っ二つにしました。
その後頭蓋を唐鍬の根元で潰してしまいました。
覗き込もうとすると父はそれを山へ投げ込んでしまいました。
きっと蛇は悪魔の味方だから(でも神の使いとも言うよね)、私は蛇が好きでした。
けれど蛇は私が蛇を殺した男の娘だと知っているのです。
だから蛇は私を許さないと思うのです。
私は山に覆いかぶさられるようで恐ろしくなりました(山には神がいるのです)。
坂をズンズン下りていき、道なりに曲がりながら進み続けると何軒か家が立ち並ぶ通りに出ます。
坂の最後はT字路。
突き当たりに見える自販機の光。
ジュースの自販機の隣にはカロリーメイトの自販機がありました。
私はいつかそれを買って食べてみたいと思っていました。
私にはまだ自由になるお金なんてほとんどありませんでした。
私が歩いてきた静かな道は夢の延長でした。
私は眠っているのです。
ここから先は人の世界。
白々とした灯りの中へ私はいけませんでした。
いけば、私は光に溶けてなくなってしまうかもしれない。
闇の中で私はようやく世界と二人きり、輪郭をはっきりと感じることができたのだから。
息をすることができたのだから。
しばらく逡巡し憧れのように光を眺めて私は帰路につきました。
いつもここまで。
ここまでだ。
胸の前で腕を組み手のひらで両腕をさすり、私の境界をなぞります。
私と、私でないもの。
くっきりとした輪郭。
私は再び暗闇に目を慣らし、満天の星空を見上げました。
そこにあるのは当たり前の夜空でした。
遠く離れた今思うと、故郷の空は零れ落ちそうなほどの星をたたえていたのだけれど、その時の私にはそれが普通でした。
裏庭の扉の前まで戻ると、肺が空気を全く入れ替える!と思いながら深呼吸し、扉に足をかけました。
扉が揺れてブロック塀にあたるかすかな音に舌を打ちます。
窓から部屋に入り、きちんと靴を玄関に揃えてから布団に潜り込みました。
しばらくすると無音のテレビから発する、音ではないが押さえつけるような電波の気配を感じ、弟がゲームを始めたことを知りますが、それは弟の世界。
私はそのまま無に吸い込まれていくのです。
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