解体の勇者の成り上がり冒険譚

無謀突撃娘

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第1章

156話 ユウキとその中にいる???の会話

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宿屋に戻ってきた僕は早速『もう一人の自分』との相談を始めることにした。座禅を組んで瞑想する。

「(???、??? 相談したいことがあるんだけど?)」

己の中に埋没し呼びかける。

「(久しぶりだね、ユウキ。君の視界と記憶を通してあらましの出来事は入ってくるよ)」

???と呼ばれる意識体は僕の呼びかけに答えてくれた。僕は「???」と呼ぶ。僕がこの世界に来る原因を生み出した相手だ。

肉体は無く意識精神体なので誰かに憑りついてエネルギーを確保しないとあっという間に消えてしまう。ま、亡霊のような存在だ。

「(エネルギーの回復はどう?)」

「(ユウキの体が非常に頑強で生命力溢れているから初めに会ったときよりはいいよ。あの時はほぼ完全に消滅しかかっていたから)」

「(じゃ、単刀直入に問題を言うね)」

初級官吏の資格試験が十日後に行われるからその試験に出そうな問題を洗いざらい教えてもらいたいと頼む。

「(それだけかい?)」

「(あとは、そうだなぁ。この辺りの歴史などぐらいかな)」

「(お安い御用さ)」

「(それはそうと、???。君は本当にこのままでいいのかい?)」

「(……)」

「(君の願いを聞き届けてこの異世界に飛んできたけどドロドロとした権力抗争と無意味な殺し合いばかり、覚悟していたことだけど。いつまで君は”僕の影”であるつもり?)」

「(それについてはもう結論が出ているじゃないか!家を継ぐのも旗を立てるのもユウキだけだ!僕は何も後悔していないよ)」

「(…でも、本来であれば???が引き継ぐべきはず。望むのならばこの体を)」

「(しつこい!巨人に認められたのも選定の武具を継承したのもユウキだ。僕はただ願いを頼んだだけ。それ以上のものはいらない)」

「(……)」

???はこの問題に関しては一歩も譲らない。あくまでも認められているのはユウキであって自分ではないと徹底的に拒否する。

「(当主様や奥方様は僕をとても大切にしてくれるから恩義を返す。けど、君自身の未来への道はまだ残されているんだよ?)」

「(気遣いありがとう。でも、僕には君の影として憑りついてなければあっという間に世界の中に消えてしまう存在。父上や母上、家臣や民らには申し訳ないけど)」

このまま死んだ存在として消えていく方が望ましいと。

「(たとえ僕が蘇ったとしても試練を通過できるかも選定の武具を継承できるかも不明、それならば)」

より強い方が生き残るべきだと。

「(すべては自分の甘さから出てたんだ)」

その責任は取るべきだと。

「(ユウキはユウキが考え行動するままに振舞うだけでいいんだよ)」

それが僕の願いだから、と。この話題は二度とするなと。

「(さて、知りうる歴史知識技術を教えるよ)」

???から膨大な量の情報が体の中に流れ込んでくる。一人の人間としては処理不可能なことを僕は処理できるのだ。

そうして、もう一人の自分との意見交換をした。



『後書き』

この???という存在はユウキをこの世界に連れてきた張本人でありユウキの異世界にいるもう一人の自分ともいえる存在です。彼本人は国の計画の最中に危険分子と見なされました。その無念を願いとして異世界にいたユウキに伝え彼の影となります。

ユウキが他の勇者らと旅をするのは???の願いを聞き届けこの異世界に来た後になります。ユウキがなぜ勇者らにこき使われながらも見放さなかった元凶でありそれが勇者の間での隠し事でもあります。
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