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ゲーム開始時編
お姉様、協力して下さい
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「ふむ、MPSTともに約三分の一ぐらいの消費ですか。こんなものかしらね」
最大の火力を短時間に連発したのにスキルのおかげで消費したステータスは許容範囲内だった。今までは援護支援に徹底していたためこれだけ火力を出しながらステータスに大分自由があるという意味は大きい。
精霊の瞳で確認するともう後方から追って来るモンスターは存在しなかった。これで大量の初心者プレイヤーが死に戻りする危険性は無くなった。
ライブラに声を掛ける。
「もし、もし?」
「・・・」
彼女はどうもゲーム画面から逃げ出しているようだ。普通に考えたら初心者フィールドでもあんな一方的に勝つ様子を見れば少しばかり気がおかしくなるかもしれない。
しばらく、側にいることにした。
「ハッ!」
ようやく夢の世界からご帰還したようでライブラはしきりに周囲を確認する。
「あっ!もう終わっちゃってますね」
もう終わっている?どことなく彼女の言葉がプレイヤーのようではないような感じがした。何かを観察していたような言葉遣いである。
「?」
「あ、いえ。こちらの話です、はい」
そうして初心者らしくレクチャーの続きを開始する。
「ここは、こうで。こうして、こうする」
「は、はい!」
ライブラのスキルが全体的に上がってきたので強めのモンスターが出る場所に移動する。まだまだ彼女の動きは緩慢であり不意の一撃を貰っていた。
仕方なく僕が手ほどきをする。
接近戦スキルはまったく持っていないが【陰陽術】にはスタッフ等に属性を付与して戦闘能力を底上げするものがある。スタッフに金剛石の刃を纏わせて短めの槍のように使い戦う。いつもミカさんの槍の動きを研究してたのが助かった。
「はい、ラビット討伐おめでとう」
「はへぇ~、疲れました」
スキルは少しずつ上がっているが気を抜ける段階ではない。合間合間に休憩を挟んで狩りを続けるがそろそろステータスの自然回復では追いつけない状況にあった。
僕はアイテム一覧から野営用ポッドを取り出す。瞬時にそれを展開する。
「うわっ!なんて立派な!」
野営用ポッドの中にはモンスターは入り込まないので安心して時間が取れる。ライブラはしきりに中の様子を確認する。
「これっていくらぐらいするんですか?」
「お金かぁ」
転移用のワープストーン複数にマザーストーン、このポッドの代金。それを合計してみると、
「二千五百万ってところかしら」
「に!にせんごひゃく!」
あまりの金額に口から魂が出てるようだった。
たとえ最前線で稼いでいるプレイヤーが複数集まったとしてもこの金額には届かないだろう。
『うちも欲しいんだけど金額が金額過ぎて手が出せねぇよ』
『これがあれば格段に攻略が捗るんですけどねえ』
タケミカヅチやライナさんも「こんな金額、メンバー全員が合意したとしても届かない」そう言っていたくらいだし。これは個人が所有できるがギルドでは購入不可能だそうだ。そのため圧倒的多数が短時間しか効果が発揮されない安い値段の野営用ポッドを使用してるそうだ。
『これだけ効果がすごけりゃギルドベースでも欲しいけどよ。いかんせん金が無いし個人が所有するのだから持ち逃げなんてされたら目も当てられない』
『うちもいくつか野営用ポッドは購入してますけどこんな多機能で効果が高いのは手が出せません。プレイヤー個人に所有させてはリスクが大きすぎます』
この野営用ポッドは転売が可能なので持ち逃げされて売られたら取り戻すのは事実上不可能になる。買い戻しはシステム上では何回でも可能だがいかんせん金額が高すぎて最新の装備が何十個も買えてしまう。今後ギルドの設置や装備品などに多額の金を投資しなければならない状況なのでこれに出せる金額は無いそうだ。
普通に考えても他の装備や道具などに支払ったほうがいいと。そう思うのが大半だろう。
だけども、僕はそれを購入したわけだ。
『カオルがパーティにいる間は頼らせてもらうよ。何しろ補給地点まで時間を掛けて戻る必要が無いからな』
『フィールドボスやダンジョンボス攻略の合間には色々と敵が多くてアイテムの補充なんて出来ないも同然ですからね』
僕自身が【ワープ】や【リターン】を使用できるので一度行った場所ならば瞬時に飛べる。なので、運び屋も出来るのだ。
カジノを所有していなければここまで資金に余裕は出来なかったであろうが。
「すごい!こんなにあっという間にステータスが回復していくなんて」
ライブラ大喜びである。何しろこの野営用ポッドの回復速度は二万五千%だ。これだけあれば数十分かかるステータスでも1分未満で満タンになる。
そうして、ステータスを回復した直後。
「フィールドボスに挑んでみませんか?」
ライブラから、そう呟かれた。
「えっ?」
今、なんと言いましたか?
「もう一度言ってくれないかしら?」
「ああ、そうですね。一度では聞き間違いと思うかもしれないので」
改めて言われる。
『フィールドボスに挑んでみませんか?』
それは聞き間違いではなかった。フィールドボスに二人だけで挑む?これは冗談でもなんでもなかった。
「それが、どういう意味か分かってて言っているのかしら」
「ええ」
どんな熟練プレイヤーでもフィールドボスに挑む時は他に協力者がいて当然。それぐらい強いのだ。それを今日始めたばかりの初心者と二人で突破など、どう考えても無理の極みだった。
通常であれば他の参加者を集めてから、スキルを上げてから、準備してから、それからだろう。
「これにどんな理由があるのかしら」
すると、
「これ、です」
何かこのゲームの案内書のようだ。そういえば何か項目が追加されている。
『このゲームの中でプレイヤーの活躍を広く募集している。動画投稿者求む。運営より』
つまるところプレイヤーが華々しく活躍する動画を取りたい、そういうことのようだ。そこでライブラが何者なのかを知ることになる。
『アカウント名はライブラです。ですが、ゲームの動画投稿者としても活動しています』
彼女がライブラという名前で間違いないそうだがゲーム実況者でもあるそうだ。いくつかのゲームで動画を投稿していたらしい。実況者としての名前は教えられないそうだ。
そこそこ人気があるそうだが似たような動画が多く出てきて中々視聴数が伸びない。思い切って最新版のVRMMOに手を出したそうだ。しかし、色々調べたが実際ゲームに入るとあまりのリアルさに混乱、右往左往していたところをあの悪いプレイヤーに目を付けられたわけだ。それで今に至ると。
「動画ねぇ」
僕もゲーム動画を見たことがあるが大半は熟練プレイヤーでパーティを組んでやっているのが殆どであった。こんな開始して間もない初心者がやる動画とは思えない。
実際、ライブラがほぼ一人でゲームの内容を書いた日記のようなもので熟練プレイヤーのようなゲームシステムを深く熟知したようなものではない。平凡で平和な動画だそうだ。
だが、このゲームの動画は非常に人気があることは間違いなかった。それぐらい人気のゲームなのである。
ライブラはそこから突き抜けるには生半可な動画では駄目だ、そのような判断を初めからもっていたようだ。
「じゃあ、どうしたいの?」
「えっ?」
逆に質問して見る。
「私は攻略掲示板の正反対を行くようなスキルビルドよ。それで人気が出るような動画に仕上げられるの?」
「それなら逆に好都合です!不遇スキルでありながら熟練プレイヤーでも手に負えないようなフィールドボスを単独で倒す!これ、いけますよ!」
「先に言うけど熟練プレイヤーのような高度な立ち回りは期待できないからね」
「もちろんです!」
僕は彼女にスキルビルドを見せる。
「うそ?こんな不遇スキルばかり・・・」
まぁ、今さらだよね。さて、さっそくフィールドボスの場所まで行くことにした。
「もうすぐ出現地点だから撮り損ねないようにね」
「はい!」
ライブラは動画を撮影するために戦闘には一切参加しない。戦うのは僕だけだ。
前回と同じく山から巨大な熊型モンスターが現れる。
「木火土金水!我に力を貸したまえ《五行の加護》」
自分自身にステータスアップを掛ける。さらに【呪術】でステータスを大幅に変化させる。
「金よ!刃となりて敵を討て!」
黄金の槍を数本飛ばして突き刺すがさしてダメージがない。モンスターが近づくが寸前で回避する。
「木よ!蔓となりて敵を止めろ!」
すると足元から蔦が生えてきて敵の動きを封じる。
「土よ!勢いなして敵を討て!」
足元の土が弾丸となって襲うがそれでもまだ半分以上ある。足の蔦の拘束から抜けたモンスターが迫る。
「水よ!深き眠りから解き放て!」
地面から間欠泉のように水が噴出す。それに飲み込まれて動きが止まる。
「火よ!柱となりて敵を焼き尽くせ!」
火柱が敵を襲う。これでようやく半分ぐらいか。けっこうしぶとい。
MPが少なくなったので自然回復させないと辛くなる。僕は装備しているスタッフに力を入れて金剛石の穂先を持った槍にする。
「やぁっ!」
「ガグゥゥ!」
接近戦のスキルを一切持っていないため動きが遅くてお世辞にも上手いとはいえないが地道にダメージを稼げる。
「《呪印》!」
バッドステータスを付与する。効果は盲目と裂傷か。地味ではあるが時間は稼げる。相手は視界が見えないので腕を振り回してくる。
その間に最大の技を放つ準備を整える。
「”土は巡りて金と成り水へと流れて木を豊かにしやがてそれは火に飲まれる”」
最近覚えたばかりの陰陽術最大の技、どれを出発点にするかで効果が変化する。僕は最も威力が高くなる火を選んだ。相手はいまだに盲目状態で僕を視認できない。その間に術を完成させる。
「――――」
どんな魔術スキルよりも長い詠唱、間に合うか!ここで状態異常が切れたので僕に狙いを定める。遠くからライブラの声が聞こえたような気がするがここで止めたら取り返しが出来ない。
モンスターが徐々に接近する、その攻撃が届く直前で、
「《炎清雀華》!」
術が完成して瞬時に周りが赤一色で染まる。とてつもない火の一閃が敵に多段ヒットしてそれだけで敵のHPがゼロになる。
「(な、なんとかなったぁ)」
内心はかなりヒヤヒヤだった。ほんの少しタイミングが悪ければ死に戻りさせられていただろう。っと、今は動画撮影中だったっけ。近くにはライブラがいたが動画の撮影で動けないのだろう。
僕は優雅に一礼した。
最大の火力を短時間に連発したのにスキルのおかげで消費したステータスは許容範囲内だった。今までは援護支援に徹底していたためこれだけ火力を出しながらステータスに大分自由があるという意味は大きい。
精霊の瞳で確認するともう後方から追って来るモンスターは存在しなかった。これで大量の初心者プレイヤーが死に戻りする危険性は無くなった。
ライブラに声を掛ける。
「もし、もし?」
「・・・」
彼女はどうもゲーム画面から逃げ出しているようだ。普通に考えたら初心者フィールドでもあんな一方的に勝つ様子を見れば少しばかり気がおかしくなるかもしれない。
しばらく、側にいることにした。
「ハッ!」
ようやく夢の世界からご帰還したようでライブラはしきりに周囲を確認する。
「あっ!もう終わっちゃってますね」
もう終わっている?どことなく彼女の言葉がプレイヤーのようではないような感じがした。何かを観察していたような言葉遣いである。
「?」
「あ、いえ。こちらの話です、はい」
そうして初心者らしくレクチャーの続きを開始する。
「ここは、こうで。こうして、こうする」
「は、はい!」
ライブラのスキルが全体的に上がってきたので強めのモンスターが出る場所に移動する。まだまだ彼女の動きは緩慢であり不意の一撃を貰っていた。
仕方なく僕が手ほどきをする。
接近戦スキルはまったく持っていないが【陰陽術】にはスタッフ等に属性を付与して戦闘能力を底上げするものがある。スタッフに金剛石の刃を纏わせて短めの槍のように使い戦う。いつもミカさんの槍の動きを研究してたのが助かった。
「はい、ラビット討伐おめでとう」
「はへぇ~、疲れました」
スキルは少しずつ上がっているが気を抜ける段階ではない。合間合間に休憩を挟んで狩りを続けるがそろそろステータスの自然回復では追いつけない状況にあった。
僕はアイテム一覧から野営用ポッドを取り出す。瞬時にそれを展開する。
「うわっ!なんて立派な!」
野営用ポッドの中にはモンスターは入り込まないので安心して時間が取れる。ライブラはしきりに中の様子を確認する。
「これっていくらぐらいするんですか?」
「お金かぁ」
転移用のワープストーン複数にマザーストーン、このポッドの代金。それを合計してみると、
「二千五百万ってところかしら」
「に!にせんごひゃく!」
あまりの金額に口から魂が出てるようだった。
たとえ最前線で稼いでいるプレイヤーが複数集まったとしてもこの金額には届かないだろう。
『うちも欲しいんだけど金額が金額過ぎて手が出せねぇよ』
『これがあれば格段に攻略が捗るんですけどねえ』
タケミカヅチやライナさんも「こんな金額、メンバー全員が合意したとしても届かない」そう言っていたくらいだし。これは個人が所有できるがギルドでは購入不可能だそうだ。そのため圧倒的多数が短時間しか効果が発揮されない安い値段の野営用ポッドを使用してるそうだ。
『これだけ効果がすごけりゃギルドベースでも欲しいけどよ。いかんせん金が無いし個人が所有するのだから持ち逃げなんてされたら目も当てられない』
『うちもいくつか野営用ポッドは購入してますけどこんな多機能で効果が高いのは手が出せません。プレイヤー個人に所有させてはリスクが大きすぎます』
この野営用ポッドは転売が可能なので持ち逃げされて売られたら取り戻すのは事実上不可能になる。買い戻しはシステム上では何回でも可能だがいかんせん金額が高すぎて最新の装備が何十個も買えてしまう。今後ギルドの設置や装備品などに多額の金を投資しなければならない状況なのでこれに出せる金額は無いそうだ。
普通に考えても他の装備や道具などに支払ったほうがいいと。そう思うのが大半だろう。
だけども、僕はそれを購入したわけだ。
『カオルがパーティにいる間は頼らせてもらうよ。何しろ補給地点まで時間を掛けて戻る必要が無いからな』
『フィールドボスやダンジョンボス攻略の合間には色々と敵が多くてアイテムの補充なんて出来ないも同然ですからね』
僕自身が【ワープ】や【リターン】を使用できるので一度行った場所ならば瞬時に飛べる。なので、運び屋も出来るのだ。
カジノを所有していなければここまで資金に余裕は出来なかったであろうが。
「すごい!こんなにあっという間にステータスが回復していくなんて」
ライブラ大喜びである。何しろこの野営用ポッドの回復速度は二万五千%だ。これだけあれば数十分かかるステータスでも1分未満で満タンになる。
そうして、ステータスを回復した直後。
「フィールドボスに挑んでみませんか?」
ライブラから、そう呟かれた。
「えっ?」
今、なんと言いましたか?
「もう一度言ってくれないかしら?」
「ああ、そうですね。一度では聞き間違いと思うかもしれないので」
改めて言われる。
『フィールドボスに挑んでみませんか?』
それは聞き間違いではなかった。フィールドボスに二人だけで挑む?これは冗談でもなんでもなかった。
「それが、どういう意味か分かってて言っているのかしら」
「ええ」
どんな熟練プレイヤーでもフィールドボスに挑む時は他に協力者がいて当然。それぐらい強いのだ。それを今日始めたばかりの初心者と二人で突破など、どう考えても無理の極みだった。
通常であれば他の参加者を集めてから、スキルを上げてから、準備してから、それからだろう。
「これにどんな理由があるのかしら」
すると、
「これ、です」
何かこのゲームの案内書のようだ。そういえば何か項目が追加されている。
『このゲームの中でプレイヤーの活躍を広く募集している。動画投稿者求む。運営より』
つまるところプレイヤーが華々しく活躍する動画を取りたい、そういうことのようだ。そこでライブラが何者なのかを知ることになる。
『アカウント名はライブラです。ですが、ゲームの動画投稿者としても活動しています』
彼女がライブラという名前で間違いないそうだがゲーム実況者でもあるそうだ。いくつかのゲームで動画を投稿していたらしい。実況者としての名前は教えられないそうだ。
そこそこ人気があるそうだが似たような動画が多く出てきて中々視聴数が伸びない。思い切って最新版のVRMMOに手を出したそうだ。しかし、色々調べたが実際ゲームに入るとあまりのリアルさに混乱、右往左往していたところをあの悪いプレイヤーに目を付けられたわけだ。それで今に至ると。
「動画ねぇ」
僕もゲーム動画を見たことがあるが大半は熟練プレイヤーでパーティを組んでやっているのが殆どであった。こんな開始して間もない初心者がやる動画とは思えない。
実際、ライブラがほぼ一人でゲームの内容を書いた日記のようなもので熟練プレイヤーのようなゲームシステムを深く熟知したようなものではない。平凡で平和な動画だそうだ。
だが、このゲームの動画は非常に人気があることは間違いなかった。それぐらい人気のゲームなのである。
ライブラはそこから突き抜けるには生半可な動画では駄目だ、そのような判断を初めからもっていたようだ。
「じゃあ、どうしたいの?」
「えっ?」
逆に質問して見る。
「私は攻略掲示板の正反対を行くようなスキルビルドよ。それで人気が出るような動画に仕上げられるの?」
「それなら逆に好都合です!不遇スキルでありながら熟練プレイヤーでも手に負えないようなフィールドボスを単独で倒す!これ、いけますよ!」
「先に言うけど熟練プレイヤーのような高度な立ち回りは期待できないからね」
「もちろんです!」
僕は彼女にスキルビルドを見せる。
「うそ?こんな不遇スキルばかり・・・」
まぁ、今さらだよね。さて、さっそくフィールドボスの場所まで行くことにした。
「もうすぐ出現地点だから撮り損ねないようにね」
「はい!」
ライブラは動画を撮影するために戦闘には一切参加しない。戦うのは僕だけだ。
前回と同じく山から巨大な熊型モンスターが現れる。
「木火土金水!我に力を貸したまえ《五行の加護》」
自分自身にステータスアップを掛ける。さらに【呪術】でステータスを大幅に変化させる。
「金よ!刃となりて敵を討て!」
黄金の槍を数本飛ばして突き刺すがさしてダメージがない。モンスターが近づくが寸前で回避する。
「木よ!蔓となりて敵を止めろ!」
すると足元から蔦が生えてきて敵の動きを封じる。
「土よ!勢いなして敵を討て!」
足元の土が弾丸となって襲うがそれでもまだ半分以上ある。足の蔦の拘束から抜けたモンスターが迫る。
「水よ!深き眠りから解き放て!」
地面から間欠泉のように水が噴出す。それに飲み込まれて動きが止まる。
「火よ!柱となりて敵を焼き尽くせ!」
火柱が敵を襲う。これでようやく半分ぐらいか。けっこうしぶとい。
MPが少なくなったので自然回復させないと辛くなる。僕は装備しているスタッフに力を入れて金剛石の穂先を持った槍にする。
「やぁっ!」
「ガグゥゥ!」
接近戦のスキルを一切持っていないため動きが遅くてお世辞にも上手いとはいえないが地道にダメージを稼げる。
「《呪印》!」
バッドステータスを付与する。効果は盲目と裂傷か。地味ではあるが時間は稼げる。相手は視界が見えないので腕を振り回してくる。
その間に最大の技を放つ準備を整える。
「”土は巡りて金と成り水へと流れて木を豊かにしやがてそれは火に飲まれる”」
最近覚えたばかりの陰陽術最大の技、どれを出発点にするかで効果が変化する。僕は最も威力が高くなる火を選んだ。相手はいまだに盲目状態で僕を視認できない。その間に術を完成させる。
「――――」
どんな魔術スキルよりも長い詠唱、間に合うか!ここで状態異常が切れたので僕に狙いを定める。遠くからライブラの声が聞こえたような気がするがここで止めたら取り返しが出来ない。
モンスターが徐々に接近する、その攻撃が届く直前で、
「《炎清雀華》!」
術が完成して瞬時に周りが赤一色で染まる。とてつもない火の一閃が敵に多段ヒットしてそれだけで敵のHPがゼロになる。
「(な、なんとかなったぁ)」
内心はかなりヒヤヒヤだった。ほんの少しタイミングが悪ければ死に戻りさせられていただろう。っと、今は動画撮影中だったっけ。近くにはライブラがいたが動画の撮影で動けないのだろう。
僕は優雅に一礼した。
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