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ゲーム開始時編
リムルとシルウェの骨董品店
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ゲームにログインするとメールが届いていた。
『カオルへ。大至急指定の場所にきてぇな。リムルより』
この前の新地域開放で知り会ったリムルからだ。ワープで急いで指定の場所までいくとそこは町外れの一軒屋だった。
「よう来てくれたなぁ」「この前はレアアイテムありがとうございます」
リムルだけではなくシルウェも一緒にいた。
「何か急ぎの用件なのでしょうか?」
「急ぎといえば急ぎやな」
「用件はこの店のことなんですよ」
なんでも二人で共同で経営しているそうだ。だが、店の中には品物らしきものが無い。
「商品が何もありませんね」
「そこなんよ。んで、ミカか聞いたんやけどえらい鑑定スキルが高いみたいやな」
「ええ」
「そこで、お願いがあるんよ」
この店で出す商品の入手を手伝って欲しいそうだ。
「いいですけど、あまり戦闘が得意ではない僕に手伝えるとは思えませんが」
大半の販売アイテムはモンスターから入手するのが常識のゲームだからだ。
「商品は大量に入手しておるんよ。だけどな」
「『未鑑定アイテム』しかないんです」
『未鑑定アイテム』とは全てのモンスターが落とす存在が不確定なアイテムの総称だ。素材から装備まで、等級と呼ばれる分類がありそれが高いほど良いアイテムにある可能性が高い・・・、のだが。あくまで可能性があるだけで実際に鑑定しないとその存在の中身が分からないようになっている。
攻略掲示板ではほぼ例外なく『ゴミ』同然のアイテムになってしまい人気は限りなく低い。
「未識別のアイテムを安値で青田買いしたんはええけど鑑定スキル持ちがおらへんのよ」
情報屋などにも聞いたそうだが鑑定スキルは不人気であり選ぶプレイヤーは殆ど居なかったそうだ。
「うちらがやるとゴミになるのは確定やからβ版のプレイヤーのツテを使ってな」
タケミカヅチから高ランク鑑定スキル持ちの僕の話を聞いたわけだ。
「僕に鑑定してほしいんですね」
「ほんまたのむわ!」「おねがしいます!」
二人揃って頭を下げてくる。
まずは未識別のアイテムを可能な限りトレードで渡してもらう。僕が鑑定した後でそれらを引き取ることにした。売り上げの四割とアイテムの優先購入権ということで合意する。
早速アイテムの鑑定を行う。
【?????】 七等級
鑑定に必要な装備も一応装備して、
「・・・」
「「・・・・・」」
じっ、と。アイテムに注意を払う。
たかが鑑定だがシステムによる注意点の補正があるのでそれをしっかりとしないとアイテムが劣化してしまう。細心の注意を払いアイテムを鑑定する。
【赤石の指輪】 防御力1 STR+20 VIT+10 20/20 装備者のSTR成長+1
アクセサリに変化した。これはかなりの代物だった。
早速二人に見せる
「すごいや!こんなレアアイテムどこにも存在しないや!」「本当です!まさかこんなすごいのに変化するなんて!」
大喜びの二人、早速次のアイテムの鑑定に移る。のだが、
「「じ~っ」」
そんな夢一杯の視線はむけないで欲しいな。
そうしてかなりのアイテムの鑑定が終わった。
「武器防具アクセサリーが大半だね。素材などの消耗品が少ないのが幸いやな」
「どれもこれも一線級ばかりで生産職では製作不可能な効果を数多く有してますからすぐにでも売れるでしょう」
「まずはカオルを紹介してくれたミカやライナのほうに回すか」
「そうですね」
残りのアイテムをトレードで渡してもらう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
どれぐらい時間が経っただろうか。ひたすらアイテムを鑑定していく時間だけが過ぎていく。
「や~っと、おわったぁ」
「「お疲れさまです!」」
数多くの未識別アイテムの鑑定が終わり一息つく。時間を見ると1時間以上経っていた。鑑定したアイテムをトレードで渡す
「どれもこれもいいアイテムばっかりだなぁ、いくつか確保しておきたいよ」
「私達が装備できるのは残しておいて他のは売ってしまいましょう」
鑑定したアイテムの中から好きなのを数点選んでいいそうだ。僕が選んだのはとあるアイテムだった。
【フェイクオブジェンダー】 外見的な性別や年齢を変える 効果時間制限 耐久度無限 ???
これを装備すると性別を変えられるという不思議なアイテムだ。どういうわけか女の子に見られるので元から女の子のようにしてしまうというのもゲームではありだと思うのでこれにした。
二人とはそうして別れた。
早速宿屋に戻り装備してみる。
「おおっ!これはなかなか」
姿見を見ると若干胸が膨らみ体が細くより女の子らしくなっている。服装が少女趣味的なこともあり殆ど女の子と変わらなかった。しばらくそれを楽しんだ後装備を外そうとして、
「?」
装備が何故か外れない。外そうとしても外れなかった。どうやら効果時間が過ぎるまで強制的に装備し続けなくてはならないみたいだ。
「あちゃ~」
ちょっとした呪いのアイテムのようだった。仕方が無い、しばらくこのままでいることにした。暇なので装備の効果を確かめている。
「ある程度までなら年齢も変えられるのか」
十四歳~二十歳の間まで変えられるみたいだ。早速二十歳前後まで変えてみる。
「なに、これ?」
そこにいたのは紫色の髪と瞳をもった壮麗な美女が居た。これはもう現実じゃないような気がするな、いやゲームだけど。胸も大きく膨らみ体の線が明確に出てしまう。服のサイズ補正が合って助かったがどうも似合わない。買いに行くことにした。
「ふ~む」
服屋を見て回る。時間制限があるので派手なのにしてみよう。僕が選んだのは濃紺の装備セットだった
【紫水晶のスタッフ】 攻撃力25 INT+45 MND+35 LUK+45 30/30 30/30
【紫の華のドレス】 防御力30 VIT+25 DEX+20 AGI+20 MND+20 LUK+20 20/20
【紫の華の下着】 防御力20 VIT+5 DEX+5 AGI+5 MND+5 LUK+10 20/20
【紫の華の髪飾り】 防御力15 VIT+15 DEX+15 AGI+25 MND+15 LUK+25 20/20
【紫の華の手袋】 防御力10 VIT+15 DEX+15 AGI+15 MND+15 LUK+15 20/20
【紫の華のブーツ】 防御力10 VIT+15 DEX+15 AGI+15 MND+15 LUK+15 20/20
ステータスの補正はさして高くなく外見を楽しむための装備だな。お値段はそこそこ高いがデザインはすごくいい。それで街中を歩いてみると、
「なにあれ?」「うそ?ありえない」「はへぇ~」「とんでもない美人だな」
他のプレイヤーの視線が釘付けになる。
「(そんなにジロジロ見られても困るんだけど)」
基本的にこのゲームは本人の顔形をそのまま再現する、多少弄れる要素はあるが基本的には本人そのままだ。なのでここまでの美女は早々お目にかかれない。
どうせ時間が経てば消えてしまう幻なのだが。
「は、放してください!」
「いいじゃないかよ。付き合えよ」
少し離れたところでイザコザがあるようだ。
「あなた達、その子に何をしているの?」
同じくらいの年齢の女の子プレイヤーが複数の男に囲まれていた。
「おっ、えらい美人さんじゃないか」「こっちも悪くないな」「へへっ」
「た、助けてください!」
この様子ではナンパだろうな。女の子プレイヤーを見ると初心者装備のままだった。こうしたゲームの中では手荒な行為が見受けられることが多々ある。
「いったいどうしたの?」
怯える女の子は。
「この人たちが無理矢理パーティに入れって迫ってきて」
その男らを見るとそこそこの装備をしていた。それなりにゲーム時間は長いのだろうが、マナーというものを感じ取れない。
「(年上みたいだからゲームマナーは守って欲しいんだけど)」
悪い人間はゲームの中にもいるようだ。NPCではなくプレイヤーとしているのだからタチが悪い。なら、こうするしかないか。
「待たせてごめんなさいね。いきましょか」
「へ?」
「私が装備を選ぶのに時間がかかったから悪いのに絡まれたのね。もう問題ないから」
女の子を「最初からパーティを組む予定」だったことにして逃げることにする。これなら問題ないだろう。女の子の手を引いて逃げようとして、
『待ちな!』
そいつらが進路を遮る。
「まだ、何か?」
「パーティを組む予定なら好都合だ!しばらく付き合えよ!」
いやらしい笑い顔だった。この手合いは叩きのめされないと己を分からない相手だとミカさんらは注意していたな。仕方が無い、痛い目に合ってもらおう。僕はシステムを操作する。
『PVPだと?』
「ええ」
「本気かよ。そっちは見たとこと魔術師みたいだが」
「受けますか?受けませんか?」
勝てばいくらでも付き合うが負ければ二度と顔を見せるな、と。
『いいぜいいいぜ。こっちは五人だがかまわねぇよな?」
ええ、とそいつらの喜びようはまるで漫画のようだ。
そうしてPVPフィールドに入る。
『ヒヒヒ』
相手はこちらが一人なのを見て「勝利は当然」という顔だった。さて、それは本当なのか確かめてもらうことにする。
「『ヒーローズ』カモン!」
僕はモンスター召喚で仲間にした種子のモンスター五体を召喚する。
「なんだぁ!ザコの中の雑魚、調教師かよ!こりゃ楽勝だぜ!」
そいつらは気楽そうな雰囲気をするが、
「【ファイアーシャワー】」
シードマジシャンが魔術を唱えると空から無数の火の玉が降ってくる。
『な、ななな、何だこれは!?』
相手全員が驚愕する。
このゲームでは調教師は最底辺でありモンスターの能力もプレイヤーと比べて圧倒的に低い、そう認識されている。だが、僕が所持しているモンスターは熟練プレイヤーですら手に負えないぐらいに強くなれるのだ。
相手に向かって火の雨が降り注ぐ。
「「ギャァアァ!」」
回避し損ねた二人のプレイヤーがすぐさま戦闘不能になる。そこにアーチゃーの弓矢が飛んできた。ドスッ、という音でさらに一人がデスペナルティを貰う。
残り二人が接近しようとするがヒーローとファイターが立ちはだかる。
「くそっ!なんでモンスターがこんなに強いんだよ!」「お、押し負ける!」
一対一にもかかわらず完全に力負けをするプレイヤー二人、そこに駄目押しでヒーラーからステータスダウン魔術を貰う。それをまともに受けて二人は押し負けてしまう。
YOU WIN
システム音声が聞こえて僕が勝利したことを伝える。すぐさまPVPフィールドから出る。
『あ、あわ、あわわわわ』
相手全員が驚愕の表情をしていた。相手は最底辺の最底辺のジョブの調教師、それなのに圧倒的な実力差で何も出来ずに負けさせられた。PVPは周囲に見えていたので、
「あいつら最悪」「ゲームをする人間の恥だ」「自慢なのは口先だけだな」
大量のプレイヤーから軽蔑の視線を向けられる。それほどまでにマナーが悪い、その上人数が多いにもかかわらず一方的に負けた。こんなのが噂になればゲームを続けることは相当に困難なはずだ。
僕をスタッフを向けて、
「PVPで納得できないというのならフィールドに出てもかまいませんよ?いくらでもお付き合いいたします。そう、二度とゲームが出来ないぐらいに」
少しばかり威圧する。
こいつらのネームはグリーンなのでフィールドで襲えば僕がイエローになる。そうなると少々町に入るのが面倒になるがそんなものはすぐにでも元に戻せる。それよりもこいつらのほうを始末しないとならない。ここまで悪いマナーを振りまけば大半が嫌な顔をするだろう。
こいつらがゲームマナーを改めないとまた迷惑を被るプレイヤーが出てきてしまう。それを迅速に摘み取るのが良いプレイヤーだ。
『に、逃げるぞ!こんな化け物に追いかけられたらどうしようもない!』
恥も外聞も無くそいつらは逃げ去っていく。
「大丈夫かしら?」
あいつらに絡まれた女の子プレイヤーに微笑みかける。すると、
「お姉様!私の、私のお姉様!大好きです!!」
突進するかの勢い抱きついてきた。お姉様?いったいなんなのだろうか?何か災いの種になりそうな展開だった。
『カオルへ。大至急指定の場所にきてぇな。リムルより』
この前の新地域開放で知り会ったリムルからだ。ワープで急いで指定の場所までいくとそこは町外れの一軒屋だった。
「よう来てくれたなぁ」「この前はレアアイテムありがとうございます」
リムルだけではなくシルウェも一緒にいた。
「何か急ぎの用件なのでしょうか?」
「急ぎといえば急ぎやな」
「用件はこの店のことなんですよ」
なんでも二人で共同で経営しているそうだ。だが、店の中には品物らしきものが無い。
「商品が何もありませんね」
「そこなんよ。んで、ミカか聞いたんやけどえらい鑑定スキルが高いみたいやな」
「ええ」
「そこで、お願いがあるんよ」
この店で出す商品の入手を手伝って欲しいそうだ。
「いいですけど、あまり戦闘が得意ではない僕に手伝えるとは思えませんが」
大半の販売アイテムはモンスターから入手するのが常識のゲームだからだ。
「商品は大量に入手しておるんよ。だけどな」
「『未鑑定アイテム』しかないんです」
『未鑑定アイテム』とは全てのモンスターが落とす存在が不確定なアイテムの総称だ。素材から装備まで、等級と呼ばれる分類がありそれが高いほど良いアイテムにある可能性が高い・・・、のだが。あくまで可能性があるだけで実際に鑑定しないとその存在の中身が分からないようになっている。
攻略掲示板ではほぼ例外なく『ゴミ』同然のアイテムになってしまい人気は限りなく低い。
「未識別のアイテムを安値で青田買いしたんはええけど鑑定スキル持ちがおらへんのよ」
情報屋などにも聞いたそうだが鑑定スキルは不人気であり選ぶプレイヤーは殆ど居なかったそうだ。
「うちらがやるとゴミになるのは確定やからβ版のプレイヤーのツテを使ってな」
タケミカヅチから高ランク鑑定スキル持ちの僕の話を聞いたわけだ。
「僕に鑑定してほしいんですね」
「ほんまたのむわ!」「おねがしいます!」
二人揃って頭を下げてくる。
まずは未識別のアイテムを可能な限りトレードで渡してもらう。僕が鑑定した後でそれらを引き取ることにした。売り上げの四割とアイテムの優先購入権ということで合意する。
早速アイテムの鑑定を行う。
【?????】 七等級
鑑定に必要な装備も一応装備して、
「・・・」
「「・・・・・」」
じっ、と。アイテムに注意を払う。
たかが鑑定だがシステムによる注意点の補正があるのでそれをしっかりとしないとアイテムが劣化してしまう。細心の注意を払いアイテムを鑑定する。
【赤石の指輪】 防御力1 STR+20 VIT+10 20/20 装備者のSTR成長+1
アクセサリに変化した。これはかなりの代物だった。
早速二人に見せる
「すごいや!こんなレアアイテムどこにも存在しないや!」「本当です!まさかこんなすごいのに変化するなんて!」
大喜びの二人、早速次のアイテムの鑑定に移る。のだが、
「「じ~っ」」
そんな夢一杯の視線はむけないで欲しいな。
そうしてかなりのアイテムの鑑定が終わった。
「武器防具アクセサリーが大半だね。素材などの消耗品が少ないのが幸いやな」
「どれもこれも一線級ばかりで生産職では製作不可能な効果を数多く有してますからすぐにでも売れるでしょう」
「まずはカオルを紹介してくれたミカやライナのほうに回すか」
「そうですね」
残りのアイテムをトレードで渡してもらう。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・
どれぐらい時間が経っただろうか。ひたすらアイテムを鑑定していく時間だけが過ぎていく。
「や~っと、おわったぁ」
「「お疲れさまです!」」
数多くの未識別アイテムの鑑定が終わり一息つく。時間を見ると1時間以上経っていた。鑑定したアイテムをトレードで渡す
「どれもこれもいいアイテムばっかりだなぁ、いくつか確保しておきたいよ」
「私達が装備できるのは残しておいて他のは売ってしまいましょう」
鑑定したアイテムの中から好きなのを数点選んでいいそうだ。僕が選んだのはとあるアイテムだった。
【フェイクオブジェンダー】 外見的な性別や年齢を変える 効果時間制限 耐久度無限 ???
これを装備すると性別を変えられるという不思議なアイテムだ。どういうわけか女の子に見られるので元から女の子のようにしてしまうというのもゲームではありだと思うのでこれにした。
二人とはそうして別れた。
早速宿屋に戻り装備してみる。
「おおっ!これはなかなか」
姿見を見ると若干胸が膨らみ体が細くより女の子らしくなっている。服装が少女趣味的なこともあり殆ど女の子と変わらなかった。しばらくそれを楽しんだ後装備を外そうとして、
「?」
装備が何故か外れない。外そうとしても外れなかった。どうやら効果時間が過ぎるまで強制的に装備し続けなくてはならないみたいだ。
「あちゃ~」
ちょっとした呪いのアイテムのようだった。仕方が無い、しばらくこのままでいることにした。暇なので装備の効果を確かめている。
「ある程度までなら年齢も変えられるのか」
十四歳~二十歳の間まで変えられるみたいだ。早速二十歳前後まで変えてみる。
「なに、これ?」
そこにいたのは紫色の髪と瞳をもった壮麗な美女が居た。これはもう現実じゃないような気がするな、いやゲームだけど。胸も大きく膨らみ体の線が明確に出てしまう。服のサイズ補正が合って助かったがどうも似合わない。買いに行くことにした。
「ふ~む」
服屋を見て回る。時間制限があるので派手なのにしてみよう。僕が選んだのは濃紺の装備セットだった
【紫水晶のスタッフ】 攻撃力25 INT+45 MND+35 LUK+45 30/30 30/30
【紫の華のドレス】 防御力30 VIT+25 DEX+20 AGI+20 MND+20 LUK+20 20/20
【紫の華の下着】 防御力20 VIT+5 DEX+5 AGI+5 MND+5 LUK+10 20/20
【紫の華の髪飾り】 防御力15 VIT+15 DEX+15 AGI+25 MND+15 LUK+25 20/20
【紫の華の手袋】 防御力10 VIT+15 DEX+15 AGI+15 MND+15 LUK+15 20/20
【紫の華のブーツ】 防御力10 VIT+15 DEX+15 AGI+15 MND+15 LUK+15 20/20
ステータスの補正はさして高くなく外見を楽しむための装備だな。お値段はそこそこ高いがデザインはすごくいい。それで街中を歩いてみると、
「なにあれ?」「うそ?ありえない」「はへぇ~」「とんでもない美人だな」
他のプレイヤーの視線が釘付けになる。
「(そんなにジロジロ見られても困るんだけど)」
基本的にこのゲームは本人の顔形をそのまま再現する、多少弄れる要素はあるが基本的には本人そのままだ。なのでここまでの美女は早々お目にかかれない。
どうせ時間が経てば消えてしまう幻なのだが。
「は、放してください!」
「いいじゃないかよ。付き合えよ」
少し離れたところでイザコザがあるようだ。
「あなた達、その子に何をしているの?」
同じくらいの年齢の女の子プレイヤーが複数の男に囲まれていた。
「おっ、えらい美人さんじゃないか」「こっちも悪くないな」「へへっ」
「た、助けてください!」
この様子ではナンパだろうな。女の子プレイヤーを見ると初心者装備のままだった。こうしたゲームの中では手荒な行為が見受けられることが多々ある。
「いったいどうしたの?」
怯える女の子は。
「この人たちが無理矢理パーティに入れって迫ってきて」
その男らを見るとそこそこの装備をしていた。それなりにゲーム時間は長いのだろうが、マナーというものを感じ取れない。
「(年上みたいだからゲームマナーは守って欲しいんだけど)」
悪い人間はゲームの中にもいるようだ。NPCではなくプレイヤーとしているのだからタチが悪い。なら、こうするしかないか。
「待たせてごめんなさいね。いきましょか」
「へ?」
「私が装備を選ぶのに時間がかかったから悪いのに絡まれたのね。もう問題ないから」
女の子を「最初からパーティを組む予定」だったことにして逃げることにする。これなら問題ないだろう。女の子の手を引いて逃げようとして、
『待ちな!』
そいつらが進路を遮る。
「まだ、何か?」
「パーティを組む予定なら好都合だ!しばらく付き合えよ!」
いやらしい笑い顔だった。この手合いは叩きのめされないと己を分からない相手だとミカさんらは注意していたな。仕方が無い、痛い目に合ってもらおう。僕はシステムを操作する。
『PVPだと?』
「ええ」
「本気かよ。そっちは見たとこと魔術師みたいだが」
「受けますか?受けませんか?」
勝てばいくらでも付き合うが負ければ二度と顔を見せるな、と。
『いいぜいいいぜ。こっちは五人だがかまわねぇよな?」
ええ、とそいつらの喜びようはまるで漫画のようだ。
そうしてPVPフィールドに入る。
『ヒヒヒ』
相手はこちらが一人なのを見て「勝利は当然」という顔だった。さて、それは本当なのか確かめてもらうことにする。
「『ヒーローズ』カモン!」
僕はモンスター召喚で仲間にした種子のモンスター五体を召喚する。
「なんだぁ!ザコの中の雑魚、調教師かよ!こりゃ楽勝だぜ!」
そいつらは気楽そうな雰囲気をするが、
「【ファイアーシャワー】」
シードマジシャンが魔術を唱えると空から無数の火の玉が降ってくる。
『な、ななな、何だこれは!?』
相手全員が驚愕する。
このゲームでは調教師は最底辺でありモンスターの能力もプレイヤーと比べて圧倒的に低い、そう認識されている。だが、僕が所持しているモンスターは熟練プレイヤーですら手に負えないぐらいに強くなれるのだ。
相手に向かって火の雨が降り注ぐ。
「「ギャァアァ!」」
回避し損ねた二人のプレイヤーがすぐさま戦闘不能になる。そこにアーチゃーの弓矢が飛んできた。ドスッ、という音でさらに一人がデスペナルティを貰う。
残り二人が接近しようとするがヒーローとファイターが立ちはだかる。
「くそっ!なんでモンスターがこんなに強いんだよ!」「お、押し負ける!」
一対一にもかかわらず完全に力負けをするプレイヤー二人、そこに駄目押しでヒーラーからステータスダウン魔術を貰う。それをまともに受けて二人は押し負けてしまう。
YOU WIN
システム音声が聞こえて僕が勝利したことを伝える。すぐさまPVPフィールドから出る。
『あ、あわ、あわわわわ』
相手全員が驚愕の表情をしていた。相手は最底辺の最底辺のジョブの調教師、それなのに圧倒的な実力差で何も出来ずに負けさせられた。PVPは周囲に見えていたので、
「あいつら最悪」「ゲームをする人間の恥だ」「自慢なのは口先だけだな」
大量のプレイヤーから軽蔑の視線を向けられる。それほどまでにマナーが悪い、その上人数が多いにもかかわらず一方的に負けた。こんなのが噂になればゲームを続けることは相当に困難なはずだ。
僕をスタッフを向けて、
「PVPで納得できないというのならフィールドに出てもかまいませんよ?いくらでもお付き合いいたします。そう、二度とゲームが出来ないぐらいに」
少しばかり威圧する。
こいつらのネームはグリーンなのでフィールドで襲えば僕がイエローになる。そうなると少々町に入るのが面倒になるがそんなものはすぐにでも元に戻せる。それよりもこいつらのほうを始末しないとならない。ここまで悪いマナーを振りまけば大半が嫌な顔をするだろう。
こいつらがゲームマナーを改めないとまた迷惑を被るプレイヤーが出てきてしまう。それを迅速に摘み取るのが良いプレイヤーだ。
『に、逃げるぞ!こんな化け物に追いかけられたらどうしようもない!』
恥も外聞も無くそいつらは逃げ去っていく。
「大丈夫かしら?」
あいつらに絡まれた女の子プレイヤーに微笑みかける。すると、
「お姉様!私の、私のお姉様!大好きです!!」
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