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ゲーム開始時編
新地域の開放2
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僕が用意した野営用ポッドの会議場でタケミカヅチとライナのグループが中心となってフィールドボスの攻略作戦を練っていた。
二人はβ版の時にこの場所を攻略した経験があるため他のプレイヤーからも頼りにされている。
「フィールドボスとの戦闘はあたしとライナの二グループに分かれて行う、生産職は後方でバックアップだ。場合によっては前に出てきて回復薬を前衛に使用する作業をしてもらう。それ以外はこの拠点で待機して消耗した装備の修理や回復薬の補充作業を行ってもらう」
二人はよどみの無い説明を他のプレイヤーに伝える。
今回は150人連れてきたがフィールドボス相手にそんな大人数で挑む事は出来ない。なのでパーティを小分けして順番を決めて挑む作戦のようだ。
三分の一以上が生産職なので戦闘職には負担が大きいがそれを見越して交代要員を連れて来ているしワープストーンを使えが町へすぐに戻れるためアイテムの補充や人数の補充も行えるようにしている。
どちらのグループに参加するかの段階で、
「俺はタケミカヅチのグループに入りたい」「私はライナのグループに入りたい」
外部のプレイヤーの参入で少しゴタゴタがあった。
二人はゲーム初期から名の知れているプレイヤーなので何がしかの縁を手に入れたいというプレイヤーは数多い。ミカさんは戦闘職のプレイヤーの中でも指折りの実力者でありライナさんは二番目の町では顔役と言えるほどの幅広い交流関係を持っている。
今回二人は利害の一致で手を組んでいるのだ。中々会えない有名プレイヤーに名前を覚えてもらいたいプレイヤーも参加していることだろう。
僕はというと、
「暇だね」
誰も寄ってこなかった。
周囲から感心の視線はあるが話しかけようとするのは一人もいない。こんな不遇ジョブとスキル山盛りの後方支援職などゲームでは冷ややかな視線であり戦力になるとは見られていないからだ。
一応参加メンバーの中にはいるが「お情けで入れられた」そういう立場のようだ。
野営用ポッドやワープストーンの所有者ということで一定の貢献はしているがそれ以上ではない、そんなところだ。
二人は忙しく作戦を練っているがそこに酸化する権利は僕には無い。はぁ、そんなに見下さなくてもいいと思うんだけど。
しばらくして作戦が終わったようなので各自準備に移る。
「カオル、すまないな。せっかく大金を出して準備してもらったのにその価値を分からない人間ばかりで」
「もうしわけありません」
二人は申し訳なさそうに声を掛けてきた。
「僕個人としては思うところは無いのですけど」
「ったく。この野営用ポッドやワープストーンがあれば拠点と移動が同時に確保できるってのにその価値をわかってないプレイヤーが多すぎる。どんなプレイヤーでも補給無しには戦い続けることは出来ないってわかんないのかね」
「そうですよね。カオルはこれ以外でも大荷物を大量に収容できる上にステータスを一定時間上昇させる高ランク料理スキルも持っていますから。長時間留まるのならばこれ以上ないぐらいパーティをサポートできるのですが」
二人は明確に僕のような後方支援型プレイヤーの重要性を認識していた。
弓や魔法などで後方から攻撃やサポートをしつつ装備の修理や回復アイテムの生産などを行える後方サポート方プレイヤーの存在。直接的な戦闘は他のプレイヤーと役割分担を決めればいいが消耗した耐久度や回復アイテムの現地生産などをその場で行える支援型プレイヤーの確保。
今現在ゲームに参加しているプレイヤーはβ版のゲームプレイのテンプレを踏襲したスキル構成をしており明確に分かれている。なので、僕のような両方をこなせるハイブリットタイプが殆ど居ないそうだ。
加えてLUKの数値が様々な場面で絶大な効果を上げることが攻略掲示板でも上がり始めておりその人材確保に動いている。しかしながらLUKが上がるスキルの大部分がゲーム開始時に選べるのばかりであり弱小スキルと認識されているため修得者は極めて少ない。さらにスキル熟練度も上がりづらいため余計に選択されないのだ。
僕のようなスキル構成など誰も選ばないわけだ。
「はぁ、攻略情報を見てきてそこそこ使えるスキルを有してるはありがたいけどよ。カオルの変わりにはならねぇな」
「ですねぇ。うちも探してますがテンプレの構成ばかりで」
二人は僕のようなプレイヤーが入ってこないことに愚痴を漏らす。
アイテムの入手から製作までLUKがここまで絶大な影響が出ることを理解している二人からすると僕以外のプレイヤーも欲しいのだろう。ギルドを結成したら入ってくれないか、とも誘いを受けている。でも、今はまだ一人でやっていきたいのだ。
「今は新しいエリアの開放に目を向けようぜ。今は今の問題を解決しないとな」
「そうですね。布装備の素材も値上がりしてますし。ここを開放して少しでも在庫を確保しておかないと」
しばらくして他のプレイヤーの準備が整ったそうで攻略を開始する
ここで、僕は野営用ポッドの中でお留守番をしている。
何しろ野営用ポットは所有者が死ぬと強制的に消えてしまうからだ。大半が戦闘能力の低い生産職なのでモンスターが動いている場所に放置できない。安全な野営用ポッドの中に居てもらう必要がある。
フィールドボスを順番で倒す作業を繰り返すために装備の修理や回復アイテムの補充などは生産職が引き受けることになっていた。
「俺の装備の修理を頼む」「回復アイテムの補充をお願い」「ステータス回復のために料理を頼む」
僕は調理場で料理を大急ぎで製作していた。今のスキルレベルで三十分は持続するのでボス攻略の時間に十分間に合う。
そうして出入りする大量のプレイヤーに大忙しだった。
討伐パーティに参加してエリア開放が終わったプレイヤーは近場で素材採取を行うようにしている。
「薬草が足りない」「素材が足りない」
生産職は事前に準備していたのが多いのだが実際はかなりギリギリだった。仕方なく僕が確保していた素材を渡す。
『あ、ありがとう!』
そうして徐々にエリア解放した人数が増えていく。目的を達成したプレイヤーは各自自由に行動し始める。
「カオル、待たせたな!」「ようやく全員終わりました」
ミカさんとライナさんが戻ってきた。ようやく最後の僕の番になったみたいだ。残っていたプレイヤーをワープストーンで町に戻らせて僕のエリア開放をする。
「六人だけ?」
普通であれば数十人で挑むはずだが僕を含めて六人しかいない。ほかの三人の紹介をされる
「俺はバーンハルト、剣と大盾で戦うタンクだ、よろしくな」
「うちはリムルや、以後見知りおいてや」
「私はシルウェといいます。後方支援の治癒術使いです」
各自簡単な紹介をされる。
「何で六人だけなんですか?」
「実はな」
ここのフィールドボスのレアアイテムが全員欲しいそうだ。
片手剣、大盾、軽鎧、外套、靴、アクセサリーの六つの装備がレアアイテム枠に存在している、しかしこの入手には難しい条件があり最大で六人までのパーティでしかドロップ判定が無いそうだ。
ただでさえ低い確率なうえに人数まで大幅に制限されるとなると熟練プレイヤーで組まなくてはならない、しかしドロップ判定が狭すぎて入手確率は絶望的に低い。なので、僕が必要なわけだ。
「最後に残したのはこれが理由ですか」
「まぁな、カオルの能力を最後まで生かしつつ他人に知られないようにするために、な」
「どうしても欲しいんですよ」
やはり熟練プレイヤーはレアアイテムに目が無いようだ。
「勝算はあるのですか?」
「何度か戦ったからこの六人なら十分いける範囲だ。カオルはステータスのアップダウン系スキルを使えるから難しくないだろう」
そうして、六人でフィールドボスが出る場所まで向かう。
『カカカカカ』
突然骨を鳴らすような笑い声が聞こえる。
「来るぞ!戦闘準備」
現れたのは六本の腕を持つ大きな骨のモンスターだった。すぐさまスキルを発動する。
「《火と風の龍啓》」
僕は後方に陣取りスキルを使う。このスキルは発動すると移動できなくなるがフィールド全体に効果が及ぶ。
「前に出る!」「うちは側面からや!」
バーンハルトが最前線に出て敵の攻撃を集中して受け止める、タケミカヅチとリムルが側面に回りライナとシルウェがそれを援護する。
六本の腕のうち四本に武器を持ち二本に盾を持つためかなりタフな相手だ。ステータス上昇効果を出来る限り切らさないようにしないとならない
「くうっ!」
バーンハルトは大盾と重装備で固めているタンクだが彼一人では攻撃に耐えられない。僕は新しく覚えていたスキルを使う。
「《アイテムスロー》」
回復ポーションを離れたバーンハルトに向かって放り投げる。アイテムの使用範囲拡大スキルだ。さらに《アイテム効果範囲拡大》も装備して本人とその周囲にも一度で効果が出るようにしている。
「カオル!助かる!」「たすかるにゃ!」
バーンハルトだけではなく周囲にいたタケミカヅチやリムルにも回復効果が現れる。回復アイテムは豊富に用意しているので合間合間を見て投げればいい。
「もうちょいだ!」
相手のHPバーは残り少ない。このままいけるか?そう思ったが、
『ガガガガガ!』
さらに攻撃が苛烈になった。しかも遠距離にまで攻撃が届くようになる。
「ちっ!追い詰められた時の思考パターンか!」
ミカさんが悩む。
こうなると後方に陣取って援護するというわけにはいけない。各自散開して様子を窺う。戦局は膠着状態になる。
「仕方がないか。カオル、モンスターを召喚してくれ」
迂闊に手を出すのは危険だがこのままでは戦闘は終わらない、仕方なく僕のモンスターを使うことにしたようだ。
「【ホワイトスター】【ブラックスター】出てきて!」
僕は白黒の猫の姿をしたモンスターを召喚した。
「全員下がれ、後はカオルに任せるんだ」
ミカさんの指示で僕以外は下がる。
「頼むよ!」
白と黒の猫型モンスターは敵を認識すると襲い掛かる。
「「ニャァァ~」」
ホワイトスターと呼ばれた白い猫は無数の光り輝く槍を生みだし敵に投げつける、ブラックスターは接近して手足を振るうとそこに漆黒の刃を生み出す。
遠近両方からの攻撃によりフィールドボスのHPがすごい勢いで減っていき、
『ガァァァア!』
ついにフィールドボスは光の粒子となった。
『やったぜ!』
これで討伐は完了だ。
僕は白黒の二頭の猫をなでなでする。
「よくがんばったね」
「「ニャンニャン♪」」
2頭はとてもご機嫌なようだ。
「早速ドロップアイテムを確認しようぜ」
そうしてアイテム欄を開くが、
『・・・・・・・』
皆無言になる。目的のアイテムが出なかったようた。
「くそぅ、いつもより格段にいいアイテムばかりだけどなぁ」
「ですねぇ」
「あちゃ~」
「運とはこういうものだ」
「しょんぼりです」
五人とも相当期待していたようだ。そうして僕もアイテム欄を確認する。
「?」
どういうわけかアイテムの数が多い、リストを見てみると何か装備品が複数個入っているようだ。
「ねぇ、これなんだけど」
僕は入手したアイテムのリストを他の五人に見せる。しょぼくれている五人は、
『狙っていたアイテムが全部揃っているだと!?』
全員が驚きの表情になる。
『そのアイテム、是非とも譲って欲しい。頼む!』
「あ、うん。わかったから」
圧力に負けて譲ることにした。どうせ僕では装備不可能な代物だしね。各自アイテムをトレードする。
バーンハルトは大盾を、タケミカヅチは軽鎧を、ライナは片手剣を、リムルは靴を、シルウェは外套を、僕は最後に残ったアクセサリを手に入れる。
【死霊兵の宝石】 MP自動回復・微 一撃死無効 魔術攻撃緩和・微 耐久度∞
中々の性能だ。これならレアアイテムといえるだろう。さて、目的を果たしたがフレンド登録をお願いされたのでそれで今日は終わりだ。
二人はβ版の時にこの場所を攻略した経験があるため他のプレイヤーからも頼りにされている。
「フィールドボスとの戦闘はあたしとライナの二グループに分かれて行う、生産職は後方でバックアップだ。場合によっては前に出てきて回復薬を前衛に使用する作業をしてもらう。それ以外はこの拠点で待機して消耗した装備の修理や回復薬の補充作業を行ってもらう」
二人はよどみの無い説明を他のプレイヤーに伝える。
今回は150人連れてきたがフィールドボス相手にそんな大人数で挑む事は出来ない。なのでパーティを小分けして順番を決めて挑む作戦のようだ。
三分の一以上が生産職なので戦闘職には負担が大きいがそれを見越して交代要員を連れて来ているしワープストーンを使えが町へすぐに戻れるためアイテムの補充や人数の補充も行えるようにしている。
どちらのグループに参加するかの段階で、
「俺はタケミカヅチのグループに入りたい」「私はライナのグループに入りたい」
外部のプレイヤーの参入で少しゴタゴタがあった。
二人はゲーム初期から名の知れているプレイヤーなので何がしかの縁を手に入れたいというプレイヤーは数多い。ミカさんは戦闘職のプレイヤーの中でも指折りの実力者でありライナさんは二番目の町では顔役と言えるほどの幅広い交流関係を持っている。
今回二人は利害の一致で手を組んでいるのだ。中々会えない有名プレイヤーに名前を覚えてもらいたいプレイヤーも参加していることだろう。
僕はというと、
「暇だね」
誰も寄ってこなかった。
周囲から感心の視線はあるが話しかけようとするのは一人もいない。こんな不遇ジョブとスキル山盛りの後方支援職などゲームでは冷ややかな視線であり戦力になるとは見られていないからだ。
一応参加メンバーの中にはいるが「お情けで入れられた」そういう立場のようだ。
野営用ポッドやワープストーンの所有者ということで一定の貢献はしているがそれ以上ではない、そんなところだ。
二人は忙しく作戦を練っているがそこに酸化する権利は僕には無い。はぁ、そんなに見下さなくてもいいと思うんだけど。
しばらくして作戦が終わったようなので各自準備に移る。
「カオル、すまないな。せっかく大金を出して準備してもらったのにその価値を分からない人間ばかりで」
「もうしわけありません」
二人は申し訳なさそうに声を掛けてきた。
「僕個人としては思うところは無いのですけど」
「ったく。この野営用ポッドやワープストーンがあれば拠点と移動が同時に確保できるってのにその価値をわかってないプレイヤーが多すぎる。どんなプレイヤーでも補給無しには戦い続けることは出来ないってわかんないのかね」
「そうですよね。カオルはこれ以外でも大荷物を大量に収容できる上にステータスを一定時間上昇させる高ランク料理スキルも持っていますから。長時間留まるのならばこれ以上ないぐらいパーティをサポートできるのですが」
二人は明確に僕のような後方支援型プレイヤーの重要性を認識していた。
弓や魔法などで後方から攻撃やサポートをしつつ装備の修理や回復アイテムの生産などを行える後方サポート方プレイヤーの存在。直接的な戦闘は他のプレイヤーと役割分担を決めればいいが消耗した耐久度や回復アイテムの現地生産などをその場で行える支援型プレイヤーの確保。
今現在ゲームに参加しているプレイヤーはβ版のゲームプレイのテンプレを踏襲したスキル構成をしており明確に分かれている。なので、僕のような両方をこなせるハイブリットタイプが殆ど居ないそうだ。
加えてLUKの数値が様々な場面で絶大な効果を上げることが攻略掲示板でも上がり始めておりその人材確保に動いている。しかしながらLUKが上がるスキルの大部分がゲーム開始時に選べるのばかりであり弱小スキルと認識されているため修得者は極めて少ない。さらにスキル熟練度も上がりづらいため余計に選択されないのだ。
僕のようなスキル構成など誰も選ばないわけだ。
「はぁ、攻略情報を見てきてそこそこ使えるスキルを有してるはありがたいけどよ。カオルの変わりにはならねぇな」
「ですねぇ。うちも探してますがテンプレの構成ばかりで」
二人は僕のようなプレイヤーが入ってこないことに愚痴を漏らす。
アイテムの入手から製作までLUKがここまで絶大な影響が出ることを理解している二人からすると僕以外のプレイヤーも欲しいのだろう。ギルドを結成したら入ってくれないか、とも誘いを受けている。でも、今はまだ一人でやっていきたいのだ。
「今は新しいエリアの開放に目を向けようぜ。今は今の問題を解決しないとな」
「そうですね。布装備の素材も値上がりしてますし。ここを開放して少しでも在庫を確保しておかないと」
しばらくして他のプレイヤーの準備が整ったそうで攻略を開始する
ここで、僕は野営用ポッドの中でお留守番をしている。
何しろ野営用ポットは所有者が死ぬと強制的に消えてしまうからだ。大半が戦闘能力の低い生産職なのでモンスターが動いている場所に放置できない。安全な野営用ポッドの中に居てもらう必要がある。
フィールドボスを順番で倒す作業を繰り返すために装備の修理や回復アイテムの補充などは生産職が引き受けることになっていた。
「俺の装備の修理を頼む」「回復アイテムの補充をお願い」「ステータス回復のために料理を頼む」
僕は調理場で料理を大急ぎで製作していた。今のスキルレベルで三十分は持続するのでボス攻略の時間に十分間に合う。
そうして出入りする大量のプレイヤーに大忙しだった。
討伐パーティに参加してエリア開放が終わったプレイヤーは近場で素材採取を行うようにしている。
「薬草が足りない」「素材が足りない」
生産職は事前に準備していたのが多いのだが実際はかなりギリギリだった。仕方なく僕が確保していた素材を渡す。
『あ、ありがとう!』
そうして徐々にエリア解放した人数が増えていく。目的を達成したプレイヤーは各自自由に行動し始める。
「カオル、待たせたな!」「ようやく全員終わりました」
ミカさんとライナさんが戻ってきた。ようやく最後の僕の番になったみたいだ。残っていたプレイヤーをワープストーンで町に戻らせて僕のエリア開放をする。
「六人だけ?」
普通であれば数十人で挑むはずだが僕を含めて六人しかいない。ほかの三人の紹介をされる
「俺はバーンハルト、剣と大盾で戦うタンクだ、よろしくな」
「うちはリムルや、以後見知りおいてや」
「私はシルウェといいます。後方支援の治癒術使いです」
各自簡単な紹介をされる。
「何で六人だけなんですか?」
「実はな」
ここのフィールドボスのレアアイテムが全員欲しいそうだ。
片手剣、大盾、軽鎧、外套、靴、アクセサリーの六つの装備がレアアイテム枠に存在している、しかしこの入手には難しい条件があり最大で六人までのパーティでしかドロップ判定が無いそうだ。
ただでさえ低い確率なうえに人数まで大幅に制限されるとなると熟練プレイヤーで組まなくてはならない、しかしドロップ判定が狭すぎて入手確率は絶望的に低い。なので、僕が必要なわけだ。
「最後に残したのはこれが理由ですか」
「まぁな、カオルの能力を最後まで生かしつつ他人に知られないようにするために、な」
「どうしても欲しいんですよ」
やはり熟練プレイヤーはレアアイテムに目が無いようだ。
「勝算はあるのですか?」
「何度か戦ったからこの六人なら十分いける範囲だ。カオルはステータスのアップダウン系スキルを使えるから難しくないだろう」
そうして、六人でフィールドボスが出る場所まで向かう。
『カカカカカ』
突然骨を鳴らすような笑い声が聞こえる。
「来るぞ!戦闘準備」
現れたのは六本の腕を持つ大きな骨のモンスターだった。すぐさまスキルを発動する。
「《火と風の龍啓》」
僕は後方に陣取りスキルを使う。このスキルは発動すると移動できなくなるがフィールド全体に効果が及ぶ。
「前に出る!」「うちは側面からや!」
バーンハルトが最前線に出て敵の攻撃を集中して受け止める、タケミカヅチとリムルが側面に回りライナとシルウェがそれを援護する。
六本の腕のうち四本に武器を持ち二本に盾を持つためかなりタフな相手だ。ステータス上昇効果を出来る限り切らさないようにしないとならない
「くうっ!」
バーンハルトは大盾と重装備で固めているタンクだが彼一人では攻撃に耐えられない。僕は新しく覚えていたスキルを使う。
「《アイテムスロー》」
回復ポーションを離れたバーンハルトに向かって放り投げる。アイテムの使用範囲拡大スキルだ。さらに《アイテム効果範囲拡大》も装備して本人とその周囲にも一度で効果が出るようにしている。
「カオル!助かる!」「たすかるにゃ!」
バーンハルトだけではなく周囲にいたタケミカヅチやリムルにも回復効果が現れる。回復アイテムは豊富に用意しているので合間合間を見て投げればいい。
「もうちょいだ!」
相手のHPバーは残り少ない。このままいけるか?そう思ったが、
『ガガガガガ!』
さらに攻撃が苛烈になった。しかも遠距離にまで攻撃が届くようになる。
「ちっ!追い詰められた時の思考パターンか!」
ミカさんが悩む。
こうなると後方に陣取って援護するというわけにはいけない。各自散開して様子を窺う。戦局は膠着状態になる。
「仕方がないか。カオル、モンスターを召喚してくれ」
迂闊に手を出すのは危険だがこのままでは戦闘は終わらない、仕方なく僕のモンスターを使うことにしたようだ。
「【ホワイトスター】【ブラックスター】出てきて!」
僕は白黒の猫の姿をしたモンスターを召喚した。
「全員下がれ、後はカオルに任せるんだ」
ミカさんの指示で僕以外は下がる。
「頼むよ!」
白と黒の猫型モンスターは敵を認識すると襲い掛かる。
「「ニャァァ~」」
ホワイトスターと呼ばれた白い猫は無数の光り輝く槍を生みだし敵に投げつける、ブラックスターは接近して手足を振るうとそこに漆黒の刃を生み出す。
遠近両方からの攻撃によりフィールドボスのHPがすごい勢いで減っていき、
『ガァァァア!』
ついにフィールドボスは光の粒子となった。
『やったぜ!』
これで討伐は完了だ。
僕は白黒の二頭の猫をなでなでする。
「よくがんばったね」
「「ニャンニャン♪」」
2頭はとてもご機嫌なようだ。
「早速ドロップアイテムを確認しようぜ」
そうしてアイテム欄を開くが、
『・・・・・・・』
皆無言になる。目的のアイテムが出なかったようた。
「くそぅ、いつもより格段にいいアイテムばかりだけどなぁ」
「ですねぇ」
「あちゃ~」
「運とはこういうものだ」
「しょんぼりです」
五人とも相当期待していたようだ。そうして僕もアイテム欄を確認する。
「?」
どういうわけかアイテムの数が多い、リストを見てみると何か装備品が複数個入っているようだ。
「ねぇ、これなんだけど」
僕は入手したアイテムのリストを他の五人に見せる。しょぼくれている五人は、
『狙っていたアイテムが全部揃っているだと!?』
全員が驚きの表情になる。
『そのアイテム、是非とも譲って欲しい。頼む!』
「あ、うん。わかったから」
圧力に負けて譲ることにした。どうせ僕では装備不可能な代物だしね。各自アイテムをトレードする。
バーンハルトは大盾を、タケミカヅチは軽鎧を、ライナは片手剣を、リムルは靴を、シルウェは外套を、僕は最後に残ったアクセサリを手に入れる。
【死霊兵の宝石】 MP自動回復・微 一撃死無効 魔術攻撃緩和・微 耐久度∞
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