勇者育成機関で育てられた僕よりも異世界から呼ぶ勇者のほうが楽で簡単で強いそうなので無用となりました

無謀突撃娘

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仲間らの装備を新調し万全に

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前回ヘッドハンターをたくさん倒したので溶かし浄化し強靭でしなやかな合金に変えてしまう。そろそろ仲間達の装備が実力に見合わない物になっていたからだ。

実際もうヘッドハンター相手では苦戦しかなり刃こぼれしている、今後戦いが激化することを考えれば装備をもっと充実させる必要があった。材料あるので武器も防具も思い切って新調することにした。

より強くしなやかに長持ちし魔力なども付与し威力はさらに上に。元のデザインは維持しつつ一新して複数の属性付与と特性付与、さらにメンテナンスの面でも扱いやすくする上魔術的な攻撃も一部可能にした。

命の安全に直結する防具も同じように新調する、彼らの防御力と生存力を高めるために《自己再生》《自己修復》《防御力強化》《属性防御強化》《身体能力強化》《状態異常軽減》などを付与し徹底的に強化。外見も仲間好みにする。

さらに+補正を何度もかけて基礎の向上も行う。僕に自覚はなかったけど伝説クラスの装備になってしまっていた。

全員分完成し早速訓練場で試してもらうことにする。

「うひゃー、これ。別世界の装備だよ。これなら楽々敵を切り刻める。うひひっ」

「本当ですわね。これ故郷に継承されている前時代の装備より確実に上ですわよ」

「これなら頑強な相手でも容易に破壊出来ますな。防具の方も実に素晴らしい」

「反則だと言われかねない装備品ですねー。今の時代これだけの品を作れる職人は皆無ですよ」

「神官はあまり防具の類は好まないのですけど鎖帷子一つだけでもこれほど違うんですね」

「いやぁー。装備一つでここまで世界が変わるなんて。やっぱり頼るべきはリーダーだよね」

「以前の装備も悪いものではありませんでしたがこれから戦闘が激化することを見込めば」

「どうしてあなたは東国だけに伝わる装備のこしらえ方を知っているのでしょうか」

各自装備品の性能を実感できたようだ。

「そうそう。何らかの事情で消失しないようにもしてるからね。ほら、こうして」

僕は武器をあえて遠くに放り投げるが念じると武器はすぐさま手元に戻ってきた。

「ほら、こんな風に」

『馬鹿じゃないですか?ここまでやるなんてまともじゃありませんよ。こちらは助かりますけど』

いや、普通でしょ。貴重な装備を失ったら死ぬかもしれないから。それ、普通じゃないですから。やはり言われる。なんでだよ。まぁ、これで予備の装備に切り替える手間が省けたともいえる。どれだけ血脂に汚れても切れ味は落ちないしすぐさま洗い流せる。その分だけ手入れが大変だが素材が上等なので手入れをちゃんとすれば一生使えるぐらい耐久力が高い。

各自に使い方を教えておく。

「武器ごとに付与したのは3属性まで、殺傷力と攻撃範囲に重点を置いて付与してるから。防具は5属性まで」

「反則な性能ですね。これを材料さえあればいくらでも作れるとか」

「こんな装備を常時作られたら武器屋は廃業ですよ。これ誰にも言えませんわね」

「まぁ、これもリーダーだからこそですな。今後を考えると装備の取り換えのタイミングでしたし」

「前回のヘッドハンター戦では明らかに威力不足で手間がかかりましたから」

「今後ますます戦闘は激化します。私が戦い続けるには良い装備が不可欠です」

「まったく。世界とやらは秩序と混沌のゲーム盤なんだね。勝つためには手駒はあればあるだけ都合がいいんだ」

「僕らがまだ成長途上ということを差し引いても生き延びるためには装備に頼らざるを得ません」

「まだまだ世界に混沌は手勢を送り込んでいますから。上位個体など未知の敵が控えてますし」

前回のヘッドハンター戦でもうこの装備では対応が追い付かない、それが実感できたのは幸いだったし材料もたくさん確保できたから見返りが大きい相手だった。

少しばかり時間を取り仲間達は新しい装備の使用感や特性を確認する。それが終わると依頼を受けに冒険者ギルドの建物へ向かう。早速受付カウンターへ向かう。

「前回はお疲れさまでした。あの依頼、難易度高めでしたよね」

「そうですね。ハッキリ言って手ごわい相手でした」

「その実績をこちらは高く評価しております。なので。よろしければ」

ヘッドハンターの討伐をもう一度お願いできないだろうか。

「他に冒険者は?」

「奴らは下手な武器では掠り傷も負いません。対抗するには相当な装備が必要です。討伐対象としては大変嫌われてるんですよ」

倒して溶かせば極上の装備が作れるが特殊な特性を持つ金属なのでかなりの工程を踏まないとならず装備にするまでには相当な鍛冶師が時間を取らないとならない。実際長蛇の列が出来ているそうだ。僕のようには出来ないらしい。

倒すのも苦労が多くて運ぶのも大変となれば嫌われるわけだ。それだったらオークとかの依頼のほうが楽でそちらの方を選ぶ連中が多いそうだ。

もう仲間は全員ヘッドハンターを材料にした装備に取り換えているためまともに攻撃が通るだろう。僕としても材料が欲しいので依頼を受ける意味がある。

「わかりました。それでお願いします」

「ありがとうございます」

コテージに戻り作戦会議を行う。

「前回と同じ相手なんだね。ひひっ、新しい装備の試し切りにちょうどいい」

「新装備の威力がどれほどの物か試すのに都合がいい相手ですわ」

「前回は手間取ったですが今回からは違うと見せ付けるのにちょうどいいですな」

「私の魔術がどれほど強化されたか実験台になってもらいますよ」

「今回も弱体化に専念することになりそうですね」

「暴れられないのは残念だけど神官ってそれが普通なんだよねー」

「強敵と相まみえるのは騎士の本分でしょう」

「今回も歯ごたえありそうな敵ですね」

前回はシュリーナの攻撃力が決定打になっていたけど今回からは全員が桁違いの装備に身を包んでいるので大分僕の出番を少なくできるだろう。

依頼の場所に向かうとやはりヘッドハンターがゾロゾロうろついていた。

混沌とやらはそんなにも世界を憎んでいるのか、そう思わざるを得ない。が、こちらも生き残るために必死なのだ。その過程でどれだけ愚かな存在が大量に製造されようとも。

奴らに何の感情も抱かないが生まれてきた命は平和に普通に長生きしてほしい。だから、刈らせてもらう。

すぐさま砂鉄の詰まった袋を取り出しそれを振り撒き雷魔術を纏わせて敵の動きを止める。体に付着した砂鉄から電流が流れ込みビリビリと動きが鈍化する。

「《全能力強化》《戦意高揚》《継続回復》各自戦闘開始」

『了解』

前回は火力不足で苦戦やむなしだったが今回からは装備を一新している。僕は受け持つ数を減らして仲間の様子を確認する。

「うらうらうら、ズバズバ切れるよ」

「敵の急所に軽々矢が貫きますわ」

「我が重斧槍も唸りをあげておりますぞ」

「魔術による攻撃が確実に通ります《石弾》」

「《悪霊の怨念》弱体化もお忘れなく」

「《腐酸の呪い》防御下がれー」

「これなら存分に戦える《聖烈剣》」

「私も後れを取る訳にはいきませんね」

各自一体担当としたようだ。僕は3体引き受けている。

熟練冒険者でも単独でヘッドハンターを倒すことは困難を極めるそうだが僕の装備による強化が功を奏し時間は少しかかったが全員見事単独での討伐を達成した。

依頼を達成し報告に戻ると。

「もう倒してしまったんですか。すみませんが全員冒険者プレートの内容審査を通させてもらいます」

余りにも討伐時間が短すぎるためさすがの受付嬢も慌てて内容の確認を行う。

「すみませんが、お時間を取らせてもらいます」

仲間全員別室へと案内される。

「内容の確認は済みました。ほぼ単独でヘッドハンターを倒してますね。実に素晴らしい実力です」

自分らには特例が適用されるそうだ。ここまで実力があるのにダラダラと依頼回数を稼ぐよりも早く上に行ってくれと。今現在高い等級の冒険者の慢性的な不足により実力があり明確な信頼と後ろ盾がある冒険者は一組でも早く欲しい。

国々からもそれを求められているため特例措置が意味を増していた。以前は馬鹿な連中ばかりで意味をなさなかったが今現在の状況では有力な冒険者の迅速な確保のためその権限が強くなっている状況だと。

「具体的な内容は」

「各地での貢献度やしかるべき方々の審査やクラスチェンジ済みかどうかなど、項目は色々ありますが。ピュアブリングのパーティは大部分の条件を満たしてますので、軽めの審査だけとなります」

それで通ればすぐさま銅級まで全員上げられるそうだ。

ここからは個人の審査となるため内容は秘匿にさせてもらう事が条件となる。

あと、各自の一族部族氏族のことなども念入りに審査が行われるそうだ。

一旦依頼の受注を中止し面接に備える時間を取るようにと言われてコテージに戻る。

「ようやくここまでこれたね」

「苦労が報われましたわ」

「ここからはもう我々個人の問題になりますな」

「ぶっちゃけ一族達が煩わしいです」

「私としては名が高まることに不安ですが」

「あたしらは孤児院出身だからねー」

「もう僕は家の道具じゃありません」

「異国の地での評価は不思議ですけど」

各々複雑な思いを抱いて審査の日を待つ。当然実家からの横槍が入ってきた。

『今すぐ故郷に帰ってこい。我々の後ろ盾と恩と支援を忘れたのか。お前達が活躍するのは結構だが同族達が皆困っているのだ。冒険者は故郷でも出来るだろうが。相手も用意しているし立場も保証する。これまでの身勝手は許してやる。これは族長としての命令だ』

そんな横暴な手紙が冒険者ギルドを通じて送られてきた。

『ふざけるな!身勝手なのはお前達の方だろうが。同族達が苦労してるから?それを許したのもそっちだろうが。その尻拭いを自分らだけでやれなんてお断りだ!』

仲間の多くが切れた。普通だったのはラグリンネとエトナとシュリーナだけで後は怒りの表情をしている。

「あいつら、ふざけるのもいい加減にしろ。無理矢理色彩石級から始めたくせにその不始末を全部こちらに押し付けようと考えてるなんて」

「まったくですわ。私がこれ以上先に進むと制御不可能になるから枷を付けようなど堪ったものじゃありません。生きたければ自分でどうにかしなさい」

「我らは生き延びるために先達に教えを乞う意識が強いのですが。銅級に上がるというだけでこの横槍はただ事ではないですな。かなりの同族がごり押しで失敗したと見える」

「こっちも似たようなものですよ。どうもまともに育ったのは私達ぐらいで他は軒並み刈り取られるか育ちが悪かったようです。いまここで取り戻さないと駄目だと判断したようです」

「家族はもう見切りをつけていたくせに。それが生き延びて頭角を現すと途端に態度を変えるんですね。同族だから頭なんて下げないし都合のいい言葉を吹き込んで使い潰す気です」

はぁーっ、もうここまで来ると同族の出世を喜ぶよりも成長し続ける木を制御するために枝を無理矢理切る気なのだ。せっかく実のなる枝を切ろうとは。で、どうするつもりなのか聞く。

『こんな内容の手紙など見なかったし来なかった、そういう事にして審査を受けます。もう自分達は都合のいい操り人形じゃない、自力で独り立ちしたのだからもうこれ以上干渉してくるな。さっさとお前らより高い場所の椅子に座ってやる。今後は命令する側じゃなくされる側だという事を心に刻み付けてやる』

それが揺るがない答えだった

で、リーダーの僕に願う。

『誰もが手の届かない高みに至って自分達を導いてください』

自分達でどうにもならなかったらリーダーである僕に縋り付く。どんなに情けない姿になろうとも乞う覚悟だ。僕はそれを約束した。
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