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闘技場の王者が仲間に加わる
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我らが秘宝である《流星》それを継承体得するだけで天与の才と激しい鍛錬が要求される。それだけでも飛び抜けた逸材だとされていた。
だけども、この子はそれでもまだ本物には至ってないと明言する。これを打ち破るには相手も同じ伝承者以外存在しえないはずだ。この子はさらに先を知っていると。
訓練場の案山子を相手にする。
「これはあくまで『5回の隙間が少ない連続攻撃』で止まっているんだよ。たとえどれだけ小さくても隙間は隙間、相手がそれを摺り抜けてこないとは限らない。ここまでは理解できるよね」
「はい」
「では、これを消すにはどうするのか。それには『実体を持った虚像』を生み出すことだ。縦方向から出た攻撃を虚像化し横方向からの攻撃を虚像化しさらに斜め方向からの攻撃を虚像化する。実体を持った虚像を次々生みだす,
これを5つ同時に生み出すこと。これが本物の《流星》だと僕は考えている」
「そ、そんなこと、が、本当に」
出来うるものなのか。順序立てて説明されたが理解が追い付かない。
「論より証拠だよね。やってみせようか」
案山子を相手に構えを取るその子は正眼に構えを取る。私は見逃さまいと凝視する。
「《流星》」
それは流れ星のように輝きを放ち案山子を破壊した。
「見えたね」
「こ、これは、レアスキルとかユニークとかじゃありませんよ?文字通り戦いの神の業としか思えません。人類種が使えるとはとても信じられない。普通に考えたらペナルティが凄まじいことになるはずです。なんで貴方はそこまで平然としてられるんですか?これを再現するには修羅羅刹にならなければ、不可能です…」
「一応スキルという形で説明したけどその気になれば常時ペナルティ無しでも行使できるけど」
「そんな!私でさえ《流星》のペナルティを消し去れてないのに……」
《流星》は文字通り必殺剣技だ、だがその反動はすさまじくしばらく動きが遅くなるなど難点も必然。この子はそれを完全に無視して使うことが出来る、だって…。この子は何者なのだ、いや、そんなことはどうでもいい。私はこの子に負けたのだ、その対価を支払う必要がある。
「私はこれから貴方の物です。どうか私を導いてください」
「はい?」
その子は私を改めて見た。どうやら意味が分かってないようなので説明する。
「私に勝った時に支払う物を知らなかったんですか」
「まあ、闘技場なんだし、それぐらいあって当然だよね」
「私は私自身を勝利品として賭けてたんですよ」
「ええっ!君ぐらいだったら他にもあるでしょ」
「ええ。常識的に有り得ない勝利品です」
私達の一族の悲願を成就させるためには自分自身を賭ける必要があったことを説明する
「私は鬼人族出身なんです。それも上の方です」
先祖はオーガとかだったそうだが人と交わるうちに外見が人類種に近くなっていった種族。よく見ると頭部に角があった。身体能力は相当に高いだろうし固有能力も存在する。
「それがなんで闘技場に?」
「《天意の翼》を持つ者を探し当て子を成せと。長老らから予言が下りました」
《天意の翼》って、マジか。確かに僕は使えるが、それは。使えばもう人を越えてしまうから封印している。
「君は救世主でも孕む気なの?もうそれは地上にいてはならない存在だと、理解してるよね」
「さすがの私達の一族でも《天意の翼》を有していた存在など古代伝説のみです。予言ではここより西の西の先にある闘技場で勝ち続ければ出会える。そして、必ず負かされる運命が待っている。だから自分自身を賭けて繋ぎ止めておけと」
その者は天の意思の執行者にして世界の教えを全て受けし存在
正義と悪逆を同時に成す剣を有し
深淵の絶望より敵を皆殺しにするためだけに意思を有す
男にして女
善良にして残虐なるその心に届くは世界の願いだけ
「そのような予言が下されました」
「待って。それはただの予言止まりでしょ。僕がその本人とは」
「では、なぜその背中の大剣を抜かなかったのですか?」
予言が本当ならその背中の剣を抜けば私を確実に殺さなければならなかったはず。なのに、貴方は私の命を助けた。それが証拠だと。
彼女はこの剣のことを薄々感づいている。その主たる僕こそが求めていた人物だと。
「……確かに。その予言の内容も君の判断も間違いじゃない。僕は《天意の翼》を使えるよ。でもね、それはちょっと……」
「女の方から男に『子を孕ませろ』それだけで十分意味が通るはずですが。私の器量ではご不満があると」
えーと、そういうことじゃなんだよね。言ってる意味はちゃんと理解しているが、彼女はこちらを誘惑するように態度で示してくる、決断が早すぎるぞ。
「今の僕は冒険者パーティのリーダーをしている。下手に女に手を付けるわけには行けないから」
「では、その存在が嘘ではないと確認するまで傍近くに控えます。それでよろしいでしょうか」
彼女の冒険者プレートを見せてもらうと蒼光玉級だった、しかもマナストーンによるクラスチェンジすら行ってないそうだ。先祖は相当に優秀だったのだろう。こうなるとお手上げだった。
仕方なく仲間に一部ボカシて事情を話しパーティに加わることを承諾させるのだが、
『そういう事情なら仕方がないですね。まさか上鬼人族まで下に置くとは、さすがリーダーですな』
仲間からすると鬼人族は戦闘では他の上位種族を凌ぐほど強いそうだ。上となればまず間違いなく戦達者であろうと。あの闘技場で負け知らずの王者すらも支配下に入れてしまった。なんだか増々畏敬の念が強まる。僕は普通なはずなのにどうしてなんだ。
「シュリーナです。今後よろしくお願いしますね」
「よろしくね」
「今後ともよろしく願いしますわ」
「我らのパーティにまた一つ大きな星が増えましたな」
「今後ますます期待が高まりますね」
「やはりわが主は天に求められているのですね」
「あれだ。英傑の傍には同類が集まるんだねー」
「我が忠誠を誓う主は偉大なんですね」
仲間達は全員大歓迎ムードだ。これに割り込む気なんて僕には起きなかった。幸いにして位階の石像は予備があるしマナストーンもある。シュリーナのクラスチェンジを先に済ませておくか。
幸いこの規模になるとクラスチェンジが頻繁に起きるためお金さえ払えば手続きはすぐに済んだ『朱鬼剣将』となり新たに力を得るシュリーナ。
早速新たな仲間の装備を確認する。
「このカタナ、そろそろ寿命だよ。ワキザシもかなり使い込んでるね」
「ここの鍛冶屋にも言われました。作ってもいいが外見だけしか真似できないと」
ま、僕ならどうにでもなる。まずは全体のチェックをして狂いがないようにする。鍔や柄などは元と同じものでいいだろう。鞘も確認しピッタリ収まるように確認する。カタナという武器が鋭利ではあるが洋式の剣と比べて整備の手入れが大変なことを考慮しヘッドハンターを溶かした金属で作成することにした。
刀身には魔力を纏わせさらに切れ味と耐久力の底上げをしておく。これで大量の敵を切っても折れず曲がらず刃こぼれせずになる。刀身には不可視の刃を纏っているようなものだ。
丹念に一本の剣を思い描き《鍛造工房》で元と同じ形に作成した。元のカタナから目釘を抜いて外し新しい物へと取り換えて完成だ。ワキザシも同じように作成した。寸分の狂いもなく鞘に収まる。
シュリーナは早速試し切りをする。丸太が音も立てず滑るように落ちていく。
「感触はどう」
「大変素晴らしいです。前の物もかなりの鍛冶師の作でしたけどこちらの方が格段に上だと理解できます」
出来た品に大変満足したようだ。その後新たな仲間の参加を祝う宴を行った翌日に特使様がコテージにやってきた。
「有力者の挨拶が終わったよ。早速冒険者ギルドの建物に来てもらえるかね」
仲間ら全員を連れて建物に向かう。中にはいくつものカウンターがある。等級に応じて分けられているようだ。
「いらっしゃいませ。本日はど…え?なんで闘技場の王者が、パーティにいるんですか」
「ちょっと事情がありまして。あまり詮索はしないでください」
「すみませんがパーティの冒険者プレートをお見せください」
仲間らと共に冒険者プレートを渡す。すぐさま審査が始まる。
「なるほど。これほどの実績の持ち主ですか。シュリーナさんもパーティに入ったようなので彼女も紅光玉に上げてもいいでしょうね」
すぐさま手続きが取られ等級が上げられた。ずっと闘技場にいたため等級が上がらなかったようだ。
「あと、そちらが要望していた人材については別室にてお話しますね」
すぐさま別室に連れていかれる。お茶を出されてしばらく待つと一人の年若い男の子が連れてこられる
「紹介しますね」
「リューハイン・ミゼット・アゼラブルク、と言います。今回は自分を引き立てていただき、感謝しております」
ちょっと気弱そうだが大丈夫なのだろうか。
「この子、本当に仕事出来るのですか」
「その点については何も心配いりませんし背後には大きく多い繋がりを持ってますよ。その手のことに関しては指折りの逸材です」
では、いくらか試験させてもらうか。パーティ全体でどのような役割を果たしてそれに必要なものは何か。金額の範囲内で何を買うべきか。彼は素早く頭の中で計算し必要な品々を数字として出す。
「このぐらいでどうでしょうか」
「こちらの計算とほとんど狂いはないね。次は割り当てられた予算内であまりが出た場合は」
「その場所で余ってるものを買い不足している場所で売ります」
ここら辺の地図を出してどこでどれが余り不足してるのかざっと計算を出す。
「利益が出ればその分だけ予算が増えるけど常時予算の増加では切りがない。その場合はどうする」
「その場合は今後必要と思えるものを買うか繰り越し預金として扱い備えておくべきかと」
急に資金繰りが厳しくなる場合が多い場合もちゃんと考えているようだ。
「君が《収納》を使えてリーダーから資金を預かってる場合は」
「《収納》が使えるなら荷馬車は必要ありませんね。繋がりを使い上手く資金稼ぎをします」
その後も質問とやり取りを続けるが申し分のない答えを出してきた、これなら大丈夫だろう。
今日は顔見せだけでいいはずなのでコテージに彼を連れて戻る。彼の冒険者プレートを登録しておく。
「すごい品々が沢山ありますね。これなら思う存分仕事に打ち込めますよ」
早速《収納》を覚えてもらう。
「よろしいのですか。相当な金額の品ですが」
別に気にする必要はないと説明した。
「これ、国が制作販売してるのより明らかに容量が大きすぎるんですが」
気にするなと注意する。
「早速仕事を開始してもらうよ」
「はい」
まず彼に換金用の金銀の小さめのインゴットを数個渡す。これを換金したのち必要な品々を揃えて来てもらうのが仕事だ。換金後の予算が余らないようにすること。そうしないと次回分に繰り越されなければならないことを念押ししておく。ただし、その余りで商人のように取引を通じて利益を増やす権限などを与えておく。
冒険者稼業だけでは世の中上手くいかないからだ。資本金は多いに越したことはない。
また期日の指定もしておく。期間は長すぎても短すぎても意味がない。その期日までにやるべき仕事をやること。なるべく材料販売店や場合によれば木こりや鉱山などから直接仕入れてもいいと伝えておく。僕ならどうとでも使えるからだ。装備も自作できるし。
あと、女達に手は出さないことを警告しておく。最終的に購入した物資は僕が管理すること。
彼はすぐさま行動を開始した。
だけども、この子はそれでもまだ本物には至ってないと明言する。これを打ち破るには相手も同じ伝承者以外存在しえないはずだ。この子はさらに先を知っていると。
訓練場の案山子を相手にする。
「これはあくまで『5回の隙間が少ない連続攻撃』で止まっているんだよ。たとえどれだけ小さくても隙間は隙間、相手がそれを摺り抜けてこないとは限らない。ここまでは理解できるよね」
「はい」
「では、これを消すにはどうするのか。それには『実体を持った虚像』を生み出すことだ。縦方向から出た攻撃を虚像化し横方向からの攻撃を虚像化しさらに斜め方向からの攻撃を虚像化する。実体を持った虚像を次々生みだす,
これを5つ同時に生み出すこと。これが本物の《流星》だと僕は考えている」
「そ、そんなこと、が、本当に」
出来うるものなのか。順序立てて説明されたが理解が追い付かない。
「論より証拠だよね。やってみせようか」
案山子を相手に構えを取るその子は正眼に構えを取る。私は見逃さまいと凝視する。
「《流星》」
それは流れ星のように輝きを放ち案山子を破壊した。
「見えたね」
「こ、これは、レアスキルとかユニークとかじゃありませんよ?文字通り戦いの神の業としか思えません。人類種が使えるとはとても信じられない。普通に考えたらペナルティが凄まじいことになるはずです。なんで貴方はそこまで平然としてられるんですか?これを再現するには修羅羅刹にならなければ、不可能です…」
「一応スキルという形で説明したけどその気になれば常時ペナルティ無しでも行使できるけど」
「そんな!私でさえ《流星》のペナルティを消し去れてないのに……」
《流星》は文字通り必殺剣技だ、だがその反動はすさまじくしばらく動きが遅くなるなど難点も必然。この子はそれを完全に無視して使うことが出来る、だって…。この子は何者なのだ、いや、そんなことはどうでもいい。私はこの子に負けたのだ、その対価を支払う必要がある。
「私はこれから貴方の物です。どうか私を導いてください」
「はい?」
その子は私を改めて見た。どうやら意味が分かってないようなので説明する。
「私に勝った時に支払う物を知らなかったんですか」
「まあ、闘技場なんだし、それぐらいあって当然だよね」
「私は私自身を勝利品として賭けてたんですよ」
「ええっ!君ぐらいだったら他にもあるでしょ」
「ええ。常識的に有り得ない勝利品です」
私達の一族の悲願を成就させるためには自分自身を賭ける必要があったことを説明する
「私は鬼人族出身なんです。それも上の方です」
先祖はオーガとかだったそうだが人と交わるうちに外見が人類種に近くなっていった種族。よく見ると頭部に角があった。身体能力は相当に高いだろうし固有能力も存在する。
「それがなんで闘技場に?」
「《天意の翼》を持つ者を探し当て子を成せと。長老らから予言が下りました」
《天意の翼》って、マジか。確かに僕は使えるが、それは。使えばもう人を越えてしまうから封印している。
「君は救世主でも孕む気なの?もうそれは地上にいてはならない存在だと、理解してるよね」
「さすがの私達の一族でも《天意の翼》を有していた存在など古代伝説のみです。予言ではここより西の西の先にある闘技場で勝ち続ければ出会える。そして、必ず負かされる運命が待っている。だから自分自身を賭けて繋ぎ止めておけと」
その者は天の意思の執行者にして世界の教えを全て受けし存在
正義と悪逆を同時に成す剣を有し
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男にして女
善良にして残虐なるその心に届くは世界の願いだけ
「そのような予言が下されました」
「待って。それはただの予言止まりでしょ。僕がその本人とは」
「では、なぜその背中の大剣を抜かなかったのですか?」
予言が本当ならその背中の剣を抜けば私を確実に殺さなければならなかったはず。なのに、貴方は私の命を助けた。それが証拠だと。
彼女はこの剣のことを薄々感づいている。その主たる僕こそが求めていた人物だと。
「……確かに。その予言の内容も君の判断も間違いじゃない。僕は《天意の翼》を使えるよ。でもね、それはちょっと……」
「女の方から男に『子を孕ませろ』それだけで十分意味が通るはずですが。私の器量ではご不満があると」
えーと、そういうことじゃなんだよね。言ってる意味はちゃんと理解しているが、彼女はこちらを誘惑するように態度で示してくる、決断が早すぎるぞ。
「今の僕は冒険者パーティのリーダーをしている。下手に女に手を付けるわけには行けないから」
「では、その存在が嘘ではないと確認するまで傍近くに控えます。それでよろしいでしょうか」
彼女の冒険者プレートを見せてもらうと蒼光玉級だった、しかもマナストーンによるクラスチェンジすら行ってないそうだ。先祖は相当に優秀だったのだろう。こうなるとお手上げだった。
仕方なく仲間に一部ボカシて事情を話しパーティに加わることを承諾させるのだが、
『そういう事情なら仕方がないですね。まさか上鬼人族まで下に置くとは、さすがリーダーですな』
仲間からすると鬼人族は戦闘では他の上位種族を凌ぐほど強いそうだ。上となればまず間違いなく戦達者であろうと。あの闘技場で負け知らずの王者すらも支配下に入れてしまった。なんだか増々畏敬の念が強まる。僕は普通なはずなのにどうしてなんだ。
「シュリーナです。今後よろしくお願いしますね」
「よろしくね」
「今後ともよろしく願いしますわ」
「我らのパーティにまた一つ大きな星が増えましたな」
「今後ますます期待が高まりますね」
「やはりわが主は天に求められているのですね」
「あれだ。英傑の傍には同類が集まるんだねー」
「我が忠誠を誓う主は偉大なんですね」
仲間達は全員大歓迎ムードだ。これに割り込む気なんて僕には起きなかった。幸いにして位階の石像は予備があるしマナストーンもある。シュリーナのクラスチェンジを先に済ませておくか。
幸いこの規模になるとクラスチェンジが頻繁に起きるためお金さえ払えば手続きはすぐに済んだ『朱鬼剣将』となり新たに力を得るシュリーナ。
早速新たな仲間の装備を確認する。
「このカタナ、そろそろ寿命だよ。ワキザシもかなり使い込んでるね」
「ここの鍛冶屋にも言われました。作ってもいいが外見だけしか真似できないと」
ま、僕ならどうにでもなる。まずは全体のチェックをして狂いがないようにする。鍔や柄などは元と同じものでいいだろう。鞘も確認しピッタリ収まるように確認する。カタナという武器が鋭利ではあるが洋式の剣と比べて整備の手入れが大変なことを考慮しヘッドハンターを溶かした金属で作成することにした。
刀身には魔力を纏わせさらに切れ味と耐久力の底上げをしておく。これで大量の敵を切っても折れず曲がらず刃こぼれせずになる。刀身には不可視の刃を纏っているようなものだ。
丹念に一本の剣を思い描き《鍛造工房》で元と同じ形に作成した。元のカタナから目釘を抜いて外し新しい物へと取り換えて完成だ。ワキザシも同じように作成した。寸分の狂いもなく鞘に収まる。
シュリーナは早速試し切りをする。丸太が音も立てず滑るように落ちていく。
「感触はどう」
「大変素晴らしいです。前の物もかなりの鍛冶師の作でしたけどこちらの方が格段に上だと理解できます」
出来た品に大変満足したようだ。その後新たな仲間の参加を祝う宴を行った翌日に特使様がコテージにやってきた。
「有力者の挨拶が終わったよ。早速冒険者ギルドの建物に来てもらえるかね」
仲間ら全員を連れて建物に向かう。中にはいくつものカウンターがある。等級に応じて分けられているようだ。
「いらっしゃいませ。本日はど…え?なんで闘技場の王者が、パーティにいるんですか」
「ちょっと事情がありまして。あまり詮索はしないでください」
「すみませんがパーティの冒険者プレートをお見せください」
仲間らと共に冒険者プレートを渡す。すぐさま審査が始まる。
「なるほど。これほどの実績の持ち主ですか。シュリーナさんもパーティに入ったようなので彼女も紅光玉に上げてもいいでしょうね」
すぐさま手続きが取られ等級が上げられた。ずっと闘技場にいたため等級が上がらなかったようだ。
「あと、そちらが要望していた人材については別室にてお話しますね」
すぐさま別室に連れていかれる。お茶を出されてしばらく待つと一人の年若い男の子が連れてこられる
「紹介しますね」
「リューハイン・ミゼット・アゼラブルク、と言います。今回は自分を引き立てていただき、感謝しております」
ちょっと気弱そうだが大丈夫なのだろうか。
「この子、本当に仕事出来るのですか」
「その点については何も心配いりませんし背後には大きく多い繋がりを持ってますよ。その手のことに関しては指折りの逸材です」
では、いくらか試験させてもらうか。パーティ全体でどのような役割を果たしてそれに必要なものは何か。金額の範囲内で何を買うべきか。彼は素早く頭の中で計算し必要な品々を数字として出す。
「このぐらいでどうでしょうか」
「こちらの計算とほとんど狂いはないね。次は割り当てられた予算内であまりが出た場合は」
「その場所で余ってるものを買い不足している場所で売ります」
ここら辺の地図を出してどこでどれが余り不足してるのかざっと計算を出す。
「利益が出ればその分だけ予算が増えるけど常時予算の増加では切りがない。その場合はどうする」
「その場合は今後必要と思えるものを買うか繰り越し預金として扱い備えておくべきかと」
急に資金繰りが厳しくなる場合が多い場合もちゃんと考えているようだ。
「君が《収納》を使えてリーダーから資金を預かってる場合は」
「《収納》が使えるなら荷馬車は必要ありませんね。繋がりを使い上手く資金稼ぎをします」
その後も質問とやり取りを続けるが申し分のない答えを出してきた、これなら大丈夫だろう。
今日は顔見せだけでいいはずなのでコテージに彼を連れて戻る。彼の冒険者プレートを登録しておく。
「すごい品々が沢山ありますね。これなら思う存分仕事に打ち込めますよ」
早速《収納》を覚えてもらう。
「よろしいのですか。相当な金額の品ですが」
別に気にする必要はないと説明した。
「これ、国が制作販売してるのより明らかに容量が大きすぎるんですが」
気にするなと注意する。
「早速仕事を開始してもらうよ」
「はい」
まず彼に換金用の金銀の小さめのインゴットを数個渡す。これを換金したのち必要な品々を揃えて来てもらうのが仕事だ。換金後の予算が余らないようにすること。そうしないと次回分に繰り越されなければならないことを念押ししておく。ただし、その余りで商人のように取引を通じて利益を増やす権限などを与えておく。
冒険者稼業だけでは世の中上手くいかないからだ。資本金は多いに越したことはない。
また期日の指定もしておく。期間は長すぎても短すぎても意味がない。その期日までにやるべき仕事をやること。なるべく材料販売店や場合によれば木こりや鉱山などから直接仕入れてもいいと伝えておく。僕ならどうとでも使えるからだ。装備も自作できるし。
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