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闘技場の王者との戦い
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この地でやるべきことを終えて新天地へ旅立つことになる。仲間らは準備を終えており後は案内役の特使様達の護衛らと合流するために外で待つ。
「意外と少人数なのですね」
「ハハハっ。特使とはいっても所詮国の使いっぱしりだからね。無駄な予算が出ないんだよ」
人数は予想より少ないので僕のコテージに入れよう。野戦病院的なベッドだが安全だし環境もいいはずだ。
その後出発する。
途中放浪中のモンスターを倒したりしながら目的地まで進む。暗闇が訪れる前にコテージを建てる。
「簡素な場所ですが。ゆっくりしてください」
「いやぁー、実に快適な旅を提供してもらい感謝するよ。安全だし料理も美味いし環境もいいし」
皆、そうだろう。連れの護衛達も同意する。
料理は共同のモノだが明らかに美味しいし湯浴びだって出来る環境だ。
「君らはいつもこの環境が使えるんだよね。羨ましくて仕方がないよ」
「まぁ、恵まれた環境を用意するのがリーダーの責任なので」
「これぐらい用意するのが当然と思っている時点で普通じゃないと思うのだがね」
そうなのか。仲間達も普通じゃないですよ、常々口にするけど。僕にとっては別にさして変わらないと思うんだけど。
その後も森の自然や風景を楽しみつつ目的地《アーゲンハウル》の外壁が見える近さまで近づく。
『大きいですねぇ。明らかに防備が充実しているのが分かります。中も相当なのでしょう』
「ここは色々なものが充実してるが何といっても『闘技場』があることが理由だよ。力が正義だと主張する野蛮人の集まる土地だ。そうした催しがあるのが最大の娯楽になっているのさ」
「それぐらいモンスターの脅威が激しいわけですね」
「そういうことさ。ここを本拠地とするためにはそれ相応の実力がないと生き残れない。だから君達を連れてきたんだよ」
銅級以上の冒険者が数組いるし色光玉級も質量共に揃っているそうだ。なるほど、ここで生き延びれるかどうかが最初の試練なわけだ。
「さて、こちらはまず有力者に挨拶に向かうが君達はどうするかね」
「闘技場とやらに行ってみようと思います。思わぬ掘り出し物があるかもしれないので」
「強者は強者に惹かれる、という言葉通りだね」
挨拶など後回しにするあたりはさすが実戦経験豊富だと判断したようだ。特使様と別れて闘技場の場所を聞いて仲間とともに向かう。
外からでも喧騒が聞こえてくる。中に入ると観客の熱気に圧倒される。
「うへぇ。どいつもこいつも命知らずばかりですよ」
「本当ですわね。暴力を使わなければどうしようもありませんわ」
「我が同族らも多数参加しておりますな。力を信奉する者らにとっては楽園ですぞ」
「力こそが正義という主張がここでは当然なんですね」
「野蛮極まりますが混沌に対してはそれしか通りませんから」
「いやぁー、実に見ごたえがあるよね。にししっ、実に単純明快だよ」
「参加者は騎士から魔術師までいます。方法手段など問わないという事なのでしょう」
仲間たちはこんな野蛮な催しなど初めて見た。そこでは己の力のみで勝つことが条件なだけ、その手段や方法など問われないことに。相手を倒せば喝采、負ければ罵声が飛んでくる。中にはどちらが勝つのか予想屋や食事を売る売り子などがせわしなく動き回っていた。
しばらく試合を観察すると。
「おっ、いつものヤツが現れるぜ」
いつもの?近くの観客に聞くとここで負け知らずの王者が出てくるそうだ。遥か東からやってきたそうで独特の剣技を使い格好も異文化丸出しだそうだ。もう相手がいないそうで半ば見世物になっているそうだ。
その人物の登場を待つ。
現れたのは女性だった。かなり若いな。あれ、東国に伝わる『キモノ』というやつだろう。袴を履き武器はカタナという細身で切れ味鋭い武器だが容易に扱える曲刀とは大きく違う。雰囲気からして異質だった。
「この私を倒そうとする者はおらぬか!」
どうやら、もう自分の相手がいないことが不満なようだ。まるで周囲を臆病者扱いと見ている。まぁ、ここで負け知らずならその自信も納得だ。中にいる審判はどうにもならないようだ。参加者は誰でもいいらしい。
なら、僕が参加しても問題ないよね。観衆を飛び越えて中に入る。
「! こんな、幼い子供、だと…」
相手は僕の外見を見て一瞬だが驚いていた。まさか観客席を飛び越えて参加してくるなんて。
審判が聞いてくる
「さ、参加料を、払えるのか」
僕は審判の前に金や銀の塊を数個吐き出す。それで審判は所定の位置まで下がった。試合が了承される。
「君は勇気と無謀を勘違いしてはおらぬのか?私が求めるのは強者のみだ」
そうか、外見だけならそうとしか見えないだろう。なら、久しぶりに獰猛な本性を見せることにしようか。僕は深淵の殺意を彼女に向けて解き放つ。
「っ!そういうことなら、不足はない。私の秘術の剣技、存分に見せようぞ!」
彼女はすぐ様こちらに反応する。加減は出来ない、そんなことをしたら自分が殺されてしまうと。敵の首を討ち取る覚悟で挑まねば戦いが終わらないことを瞬時に理解したようだ。
僕を剣を抜き片身で構える。それを開始の合図と見なし相手は瞬時に距離を詰め抜刀する。俊足の踏み込みと居合抜きだ。僕はそれを軽く弾く、キィンと金属音が鳴り響く。
「やはり奇襲は効かないか」
「そっちも」
彼女は不意打ちは失敗したと判断しカタナを構える。盾の使用を前提としたモノではなく東国に伝わる独特の構え方だ。
真正面からの打ち込みを逸らし横薙ぎを受け止め切り返しを受け流し突きを身を捻る。息も付かせぬ連続攻撃は見事としか言いようがなく華麗な舞を見ているかのようだ。だが、それすらも僕には届かない。
「ここまで私の剣に軽々対処するとはお見事だ」
「それはどうも。さ、様子見はもういいよね」
まだこれは相手の出方を探るための牽制、その時彼女はポツリと「……この人なら私の願いを成就させてくれるかもしれない」小さな声で呟いた。一体それは何なのかは僕には分からなかった。
その後、彼女は本気となる。
一撃一撃が急所狙いかつ必殺の威力を込め緩急をつけて苛烈な攻めを敢行する。もはやそれは人に確認できるものではなかった。確認できるのは自分が死んだことだけだろう。
だが、僕はそれすらも容易く対処してしまう。
彼女の瞳には驚きと同時に喜びだけがあった。ここまで本気になったのにもかかわらずそれすらも容易くいなしてしまう相手に対して。このままでは決着がつけられないと判断したのか彼女はここで初めて特徴のある構えを取った。
「我が一族の秘宝にして絶対必殺の剣技《流星》を耐えられるか!」
そのスキルは複数回同時連続攻撃、しかも5発も!しかもすべての攻撃が必殺の威力を持っていた。さすがにこんなものを出されてしまっては誰であろうと生き延びれるはずがなかった、そう生き延びれるはずがない。僕を除いて。
(まだ地上世界にこんなものが残ってたなんで。それを継承し体得した彼女の天分はとんでもないものだ)
さすがにこれを初見で出されては僕もその気にならざるをえなかった。まったく同じ攻撃をしてすべて叩き潰す。
「ぐうっ!そ、そんな。これを、ま正面から、打ち破られるなんて?!」
さすがの彼女もこれには動揺を隠せないようだ。
「貴方も、これの継承者なのか?」
今のを分かるだけでも驚嘆に値すると。なるほど、同じ祖先から学んだのでは、そう思えるのも無理はないか。
「違うよ」
「えっ?でも」
「君が使ったスキルなんて使ってない」
単純に肉体の力だけで同じことを再現しただけだと。それで相手には意味が伝わったようだ。
「そ、そんな…信じられない」
彼女は少しばかり現実が受け入れられないようだ。
「そこまで体得できたのは素晴らしいの一言。でも、君はまだ先があることは知らないようだね」
「さ、先!ですって!」
この時点で極めたはずだ。僕はそれを否定した。その先なんてあるはずがない。なら、見せてあげよう。先ほどの彼女と同じ構えをあえて取る。それが自分の必殺技であるように。
「まぁ、即死はしないように手加減するよ。ちゃーんと、治療してあげるから。君ほどの存在は殺せない」
さすがにただ事ならぬと判断した彼女は絶対防御の構えを取る。その後彼女は一時的に冥府へと行かされることになった。
私は暗闇の中をしばらく彷徨い続けていた。延々と終わりの見えない道、その先には川があった。そこには小舟があり船頭がそれに乗るよう促す。それに乗ろうとした瞬間。
「うっ、く、はぁ」
「お目覚めご苦労様。気分はどう?」
「わ、わたしは、どうなって」
傍にいたのは先ほど乱入してきた対戦相手だった。あ、あれ、ここはどこだ?見知らぬ天井に部屋に違和感を持つ。
「ここは闘技場の治療室だよ。緊急事態だから個室だけどね」
「ど、どうなって…」
「君は倒された、それだけ」
え、それだけ。私が倒された?たしか、奥義を繰り出してそれを相手に止められて、それからの記憶がスッポリ抜けていた。負かされた、こんな幼い子供に。
負けたという事実より、確認したいことがある。
「私の奥義と同じ継承者…では、ないのだな。さらに先を行っていると君は言った」
なら、それがどんなものであるのか、教えてもらいたい。
「それはいいけど」
その格好で外を歩き回れないでしょ、私はここで自分は裸であることに気づいた。
「!?」
さすがに私は羞恥心に勝てず体を隠す。
「緊急治療が必要だったからね」
「……」
「安心してよ。不埒なことは何もしてないから」
私は隣に用意された服に着替えてついてくるように言われ彼は出て行った。それは私が来ていた服と全く同じ東国風の着物だった。それを確認しつつ着替える。外ではその子が待っていた。
その子についていく。
都市の外に出るとコテージに案内される。
『おかえりなさーい』
様々な種族の男女が出迎える。冒険者のパーティだと説明される。中の階段を上がり訓練場に案内された。とんでもない品物だなと思う。
「さて、まずは君自身《流星》についてどこまで知っているの」
「5回の多方向からの複数回同時連続攻撃、としか」
「それで大体のことは説明できるよね。でも、少しばかり解釈の誤解がある」
「誤解?」
「この時点で必殺剣技なんだけどこれはまだ下位互換もしくは下地固めに過ぎない。まだ本物には至ってない」
これでもまだ本物ではないことに驚愕するしかない。では、本物とはどれほどのモノなんだ。私の関心はそれだけだった。
「意外と少人数なのですね」
「ハハハっ。特使とはいっても所詮国の使いっぱしりだからね。無駄な予算が出ないんだよ」
人数は予想より少ないので僕のコテージに入れよう。野戦病院的なベッドだが安全だし環境もいいはずだ。
その後出発する。
途中放浪中のモンスターを倒したりしながら目的地まで進む。暗闇が訪れる前にコテージを建てる。
「簡素な場所ですが。ゆっくりしてください」
「いやぁー、実に快適な旅を提供してもらい感謝するよ。安全だし料理も美味いし環境もいいし」
皆、そうだろう。連れの護衛達も同意する。
料理は共同のモノだが明らかに美味しいし湯浴びだって出来る環境だ。
「君らはいつもこの環境が使えるんだよね。羨ましくて仕方がないよ」
「まぁ、恵まれた環境を用意するのがリーダーの責任なので」
「これぐらい用意するのが当然と思っている時点で普通じゃないと思うのだがね」
そうなのか。仲間達も普通じゃないですよ、常々口にするけど。僕にとっては別にさして変わらないと思うんだけど。
その後も森の自然や風景を楽しみつつ目的地《アーゲンハウル》の外壁が見える近さまで近づく。
『大きいですねぇ。明らかに防備が充実しているのが分かります。中も相当なのでしょう』
「ここは色々なものが充実してるが何といっても『闘技場』があることが理由だよ。力が正義だと主張する野蛮人の集まる土地だ。そうした催しがあるのが最大の娯楽になっているのさ」
「それぐらいモンスターの脅威が激しいわけですね」
「そういうことさ。ここを本拠地とするためにはそれ相応の実力がないと生き残れない。だから君達を連れてきたんだよ」
銅級以上の冒険者が数組いるし色光玉級も質量共に揃っているそうだ。なるほど、ここで生き延びれるかどうかが最初の試練なわけだ。
「さて、こちらはまず有力者に挨拶に向かうが君達はどうするかね」
「闘技場とやらに行ってみようと思います。思わぬ掘り出し物があるかもしれないので」
「強者は強者に惹かれる、という言葉通りだね」
挨拶など後回しにするあたりはさすが実戦経験豊富だと判断したようだ。特使様と別れて闘技場の場所を聞いて仲間とともに向かう。
外からでも喧騒が聞こえてくる。中に入ると観客の熱気に圧倒される。
「うへぇ。どいつもこいつも命知らずばかりですよ」
「本当ですわね。暴力を使わなければどうしようもありませんわ」
「我が同族らも多数参加しておりますな。力を信奉する者らにとっては楽園ですぞ」
「力こそが正義という主張がここでは当然なんですね」
「野蛮極まりますが混沌に対してはそれしか通りませんから」
「いやぁー、実に見ごたえがあるよね。にししっ、実に単純明快だよ」
「参加者は騎士から魔術師までいます。方法手段など問わないという事なのでしょう」
仲間たちはこんな野蛮な催しなど初めて見た。そこでは己の力のみで勝つことが条件なだけ、その手段や方法など問われないことに。相手を倒せば喝采、負ければ罵声が飛んでくる。中にはどちらが勝つのか予想屋や食事を売る売り子などがせわしなく動き回っていた。
しばらく試合を観察すると。
「おっ、いつものヤツが現れるぜ」
いつもの?近くの観客に聞くとここで負け知らずの王者が出てくるそうだ。遥か東からやってきたそうで独特の剣技を使い格好も異文化丸出しだそうだ。もう相手がいないそうで半ば見世物になっているそうだ。
その人物の登場を待つ。
現れたのは女性だった。かなり若いな。あれ、東国に伝わる『キモノ』というやつだろう。袴を履き武器はカタナという細身で切れ味鋭い武器だが容易に扱える曲刀とは大きく違う。雰囲気からして異質だった。
「この私を倒そうとする者はおらぬか!」
どうやら、もう自分の相手がいないことが不満なようだ。まるで周囲を臆病者扱いと見ている。まぁ、ここで負け知らずならその自信も納得だ。中にいる審判はどうにもならないようだ。参加者は誰でもいいらしい。
なら、僕が参加しても問題ないよね。観衆を飛び越えて中に入る。
「! こんな、幼い子供、だと…」
相手は僕の外見を見て一瞬だが驚いていた。まさか観客席を飛び越えて参加してくるなんて。
審判が聞いてくる
「さ、参加料を、払えるのか」
僕は審判の前に金や銀の塊を数個吐き出す。それで審判は所定の位置まで下がった。試合が了承される。
「君は勇気と無謀を勘違いしてはおらぬのか?私が求めるのは強者のみだ」
そうか、外見だけならそうとしか見えないだろう。なら、久しぶりに獰猛な本性を見せることにしようか。僕は深淵の殺意を彼女に向けて解き放つ。
「っ!そういうことなら、不足はない。私の秘術の剣技、存分に見せようぞ!」
彼女はすぐ様こちらに反応する。加減は出来ない、そんなことをしたら自分が殺されてしまうと。敵の首を討ち取る覚悟で挑まねば戦いが終わらないことを瞬時に理解したようだ。
僕を剣を抜き片身で構える。それを開始の合図と見なし相手は瞬時に距離を詰め抜刀する。俊足の踏み込みと居合抜きだ。僕はそれを軽く弾く、キィンと金属音が鳴り響く。
「やはり奇襲は効かないか」
「そっちも」
彼女は不意打ちは失敗したと判断しカタナを構える。盾の使用を前提としたモノではなく東国に伝わる独特の構え方だ。
真正面からの打ち込みを逸らし横薙ぎを受け止め切り返しを受け流し突きを身を捻る。息も付かせぬ連続攻撃は見事としか言いようがなく華麗な舞を見ているかのようだ。だが、それすらも僕には届かない。
「ここまで私の剣に軽々対処するとはお見事だ」
「それはどうも。さ、様子見はもういいよね」
まだこれは相手の出方を探るための牽制、その時彼女はポツリと「……この人なら私の願いを成就させてくれるかもしれない」小さな声で呟いた。一体それは何なのかは僕には分からなかった。
その後、彼女は本気となる。
一撃一撃が急所狙いかつ必殺の威力を込め緩急をつけて苛烈な攻めを敢行する。もはやそれは人に確認できるものではなかった。確認できるのは自分が死んだことだけだろう。
だが、僕はそれすらも容易く対処してしまう。
彼女の瞳には驚きと同時に喜びだけがあった。ここまで本気になったのにもかかわらずそれすらも容易くいなしてしまう相手に対して。このままでは決着がつけられないと判断したのか彼女はここで初めて特徴のある構えを取った。
「我が一族の秘宝にして絶対必殺の剣技《流星》を耐えられるか!」
そのスキルは複数回同時連続攻撃、しかも5発も!しかもすべての攻撃が必殺の威力を持っていた。さすがにこんなものを出されてしまっては誰であろうと生き延びれるはずがなかった、そう生き延びれるはずがない。僕を除いて。
(まだ地上世界にこんなものが残ってたなんで。それを継承し体得した彼女の天分はとんでもないものだ)
さすがにこれを初見で出されては僕もその気にならざるをえなかった。まったく同じ攻撃をしてすべて叩き潰す。
「ぐうっ!そ、そんな。これを、ま正面から、打ち破られるなんて?!」
さすがの彼女もこれには動揺を隠せないようだ。
「貴方も、これの継承者なのか?」
今のを分かるだけでも驚嘆に値すると。なるほど、同じ祖先から学んだのでは、そう思えるのも無理はないか。
「違うよ」
「えっ?でも」
「君が使ったスキルなんて使ってない」
単純に肉体の力だけで同じことを再現しただけだと。それで相手には意味が伝わったようだ。
「そ、そんな…信じられない」
彼女は少しばかり現実が受け入れられないようだ。
「そこまで体得できたのは素晴らしいの一言。でも、君はまだ先があることは知らないようだね」
「さ、先!ですって!」
この時点で極めたはずだ。僕はそれを否定した。その先なんてあるはずがない。なら、見せてあげよう。先ほどの彼女と同じ構えをあえて取る。それが自分の必殺技であるように。
「まぁ、即死はしないように手加減するよ。ちゃーんと、治療してあげるから。君ほどの存在は殺せない」
さすがにただ事ならぬと判断した彼女は絶対防御の構えを取る。その後彼女は一時的に冥府へと行かされることになった。
私は暗闇の中をしばらく彷徨い続けていた。延々と終わりの見えない道、その先には川があった。そこには小舟があり船頭がそれに乗るよう促す。それに乗ろうとした瞬間。
「うっ、く、はぁ」
「お目覚めご苦労様。気分はどう?」
「わ、わたしは、どうなって」
傍にいたのは先ほど乱入してきた対戦相手だった。あ、あれ、ここはどこだ?見知らぬ天井に部屋に違和感を持つ。
「ここは闘技場の治療室だよ。緊急事態だから個室だけどね」
「ど、どうなって…」
「君は倒された、それだけ」
え、それだけ。私が倒された?たしか、奥義を繰り出してそれを相手に止められて、それからの記憶がスッポリ抜けていた。負かされた、こんな幼い子供に。
負けたという事実より、確認したいことがある。
「私の奥義と同じ継承者…では、ないのだな。さらに先を行っていると君は言った」
なら、それがどんなものであるのか、教えてもらいたい。
「それはいいけど」
その格好で外を歩き回れないでしょ、私はここで自分は裸であることに気づいた。
「!?」
さすがに私は羞恥心に勝てず体を隠す。
「緊急治療が必要だったからね」
「……」
「安心してよ。不埒なことは何もしてないから」
私は隣に用意された服に着替えてついてくるように言われ彼は出て行った。それは私が来ていた服と全く同じ東国風の着物だった。それを確認しつつ着替える。外ではその子が待っていた。
その子についていく。
都市の外に出るとコテージに案内される。
『おかえりなさーい』
様々な種族の男女が出迎える。冒険者のパーティだと説明される。中の階段を上がり訓練場に案内された。とんでもない品物だなと思う。
「さて、まずは君自身《流星》についてどこまで知っているの」
「5回の多方向からの複数回同時連続攻撃、としか」
「それで大体のことは説明できるよね。でも、少しばかり解釈の誤解がある」
「誤解?」
「この時点で必殺剣技なんだけどこれはまだ下位互換もしくは下地固めに過ぎない。まだ本物には至ってない」
これでもまだ本物ではないことに驚愕するしかない。では、本物とはどれほどのモノなんだ。私の関心はそれだけだった。
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