勇者育成機関で育てられた僕よりも異世界から呼ぶ勇者のほうが楽で簡単で強いそうなので無用となりました

無謀突撃娘

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その後どうなったのか

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勝手にダンジョンに突入しようとした赤護騎士団を止めた後、その始末を冒険者ギルドに任せ僕らはその後始末に奔走した。

様々な場所で悪さをしていたので火種がそこかしこに飛び散り上手く処理しないと大火事なることも考えられた。それに優先順位を付けて確実に鎮火させていく。

罪状は数えるのが面倒なほどだった。当然現地住民の評判は最悪である。彼らには未開拓地の開墾という罪の償いが課せられてもなお嫌われたほどだ。彼らの身の安全のため隔離しなくてはならない。

彼らが手も足も出なかったモンスターどもは防衛態勢を整えさらに勢いを増していたのだ。もう僕ら以外手に負えない。連日危険度の高い依頼ばかりが舞い込んでくる。

だが、僕らにとっては待ち望んだ好機だった。冒険者ギルドは「貢献度を上乗せするから受けて欲しい」頭を下げて来てまで好条件を出してきた。向こうから譲歩を引き出した僕らは予定通り依頼の迅速な達成を行う。

仲間達全員が一刻も早く確固たる自分自身が欲しいため手柄信用名声はあればあるほど欲しい。もう二度と誰か都合で操られる自分自身にならないために、一層気合を入れて戦いに臨む

『一族部族氏族の傲慢や横暴に従う気は一切ない、他人は他人自分は自分だ。お前らの都合の良い操り人形なんかは御免だ。もうこれ以上無残に死ぬ同胞たちを見るなんて耐えられない』

全員が怒りの表情を浮かべ黙々とモンスターに立ち向かう。

お国の都合とやらで死んでいった銀の精鋭や黒翼騎士団や赤護騎士団の姿を見てこんな悲惨な運命など断固拒否する、そんな強い姿勢でいた。

まー、あんな悲惨な死地に送り込まれたら誰だって憎悪するよね。下手をしたら自分らが同じ運命に送り込まれてたかもしれないから。

もう彼らは自立していた。

もう故郷には愛想を尽かしていた。存亡の危機になれば戦うがそれ以外で干渉してくるな。未だにコントロールが効くと思い込んでいてあれやこれやと指図してくる。現実を知らない一族部族氏族のことなど無視する。

そして、自分達には強く優秀で頼れるリーダーが絶対に必要不可欠だと再認識する。僕が上に行けば行くほど権限が強くなりその保護下に置かれれば容易に手出し出来なくなるからだ。

仲間の目的は自分の確立と同時に僕に高みに行ってもらいたい願いも含まれるようになった。それがお望みならそうなるように振舞うけどね。

次から次へと危険な依頼を引き受け味方に経験を積ませながら順調に達成していく。

「依頼を達成しました」

「ありがとうございます。これが報酬です」

ドンっ、ユクール通貨の詰まった大袋をいくつもカウンターに積んでくる受付嬢。平民が余裕で暮らせる金額を見て周りから羨望の眼差しが集まる。大多数が下位にとどまっている冒険者達だ。蒼光玉級だとこんなにもらえるのか、色彩石級から中々上がれない連中は金額の上限が設定されているが僕らは特例扱いで金額が通常より上乗せされていた。

馬鹿な連中が次々と依頼失敗してしまいモンスターが警戒態勢を取ったからだ。ただでさえ危険度の高い依頼がさらに難易度が上がり処理できなくなってしまう。黒鉄色級や鉄色級でさえも「これはちょっと受けられない」そう言われたからだ。

黒鉄色級以上ののパーティは僕らを除いて二組しかいないため彼らも必死に頑張っているがやはり時間がかかってしまう事態だ。

僕らのパーティなら同じ期間で最低2件、時間の都合を付ければ3件こなせるため大車輪で回されていた。

セシルもその間に蒼光玉級に上がり名実ともにここで最上位になった。あとは紅光玉級まで上がればここでやることはお終いだ。

あ、その間にもダンジョンに何度か行ったよ。前回のように特殊個体は現れなかったけどやはり予想より難易度は上がっていると見えると報告した。マナストーンも2個手に入れた。

仲間に休息を取らせている間に僕は冒険者ギルドの建物に呼ばれ支部長らと会う、前回接触してきた特使殿らも同席する。

「外国へ招待、したいですか?」

「うむ。君らはもうここで最優秀だ。紅光玉級まで上がるのさほど時間はかからないだろう。というか、これまでしてきたことを考えればほぼ当確同然だ。そこまで上がるともう出せる依頼では明らかに下になってしまう。君達は金目当てで依頼を引き受けてないことは承知している。あるのはただただ高みに上るためなのだと」

「そうですね。紅光玉級まで上がるともう依頼の難易度は低すぎることになりますから。自分達の目的は誰よりも早く上に行くことが目標です。下手に居座り後進の活躍の場を奪うことは本意ではありません」

そこで特使殿が意見を述べてくる。

「そこだよ。諸外国からの要望で優秀な冒険者を斡旋して欲しい、そんな報告が来ている。今現在優秀な冒険者が世界中で足りないんだ。契約をしている連中が軒並み不正改造に手を染めていて灰色級にまで下げられた。在野の冒険者達は揃って『そちらの都合ばかり押し付けて俺らの命綱を切るつもりか』大反発を食らった。もう国側の都合を聞いてくれる在野はいないと判断したんだ。でも、国の防衛上冒険者は必要不可欠、何とか正当な条件は見積もらなければならない」

「それが僕達とどういう関係があるのでしょうか」

「君たちはここで最優秀な上誰からも信頼が厚い。ここに在籍している冒険者は君が全権を担うのなら不満はないし従うと言っている状態だ。それぐらいの冒険者が基準なら後はすり合わせが出来ると判断した。君達が今後目標とされる冒険者らの代表者として」

なるほどね。もうすでに自分達はそれぐらいの立場で周囲から見られているという事か。

「どうかね。君達にとっても悪い話ではないし都合の付くなら出来る限り条件を聞こう」

「大まかな条件であれば」

まず在野という立場について一切干渉しないこと、権力者達の政治争いに干渉はしない、暴力を売り物にしているがそれを民衆に向かって使わせない、依頼は必ず冒険者ギルドを通すこと、国の都合のいい依頼への拒否権、勝手にパーティの中身を弄ったり干渉しないこと、過度な戦利品の要求、等々。ほぼ冒険者ギルドの前例を踏襲しつつ自分らの意見を言う。

大雑把に言えばそれぐらいだ。後は現場で調整すればいい。ただ、現時点の制度では足りない部分も補足を加える。

「中立的な立場からパーティの状況を審査したり補給物資の調達や各交渉を担当する事務員なりが欲しいです。もちろんすべてのパーティに必要というわけではないですけど。一定以上の等級では必須と考えてください。現場の状況が酷くなりその場で依頼の発行受注が必要不可欠な状況も今後出てくると思いますので」

「なるほど。パーティが現場で動いている間は何も出来なくなり事態の進展を確認するために必要なのだね」

「ええ。自分達も補給物資の調達や現地で在庫あまりの状況を見てここで買っておいて不足している場所で売れば利益が出るし民衆も助かるという場面が何度かありましたから。実際依頼が長くなるとそうした後方支援の調達部隊が欲しいと思ってます。それを採用するかどうかはリーダー次第ですけどね」

実際装備の材料や矢などの補充材料で自分があちこち動き回る手間を減らしたかったのは本音だ。自分らが戦っている間それが不可能になるためその方面に通じた裏方がいれば大分助かる。

「とはいえ。予算を着服したり馬鹿げた取引を行って帳簿の計算が合わなくなったり現地住民を敵に回すような人材では駄目です。あくまで予算内で必要な品々を揃えるのが仕事です。ちゃんと厳正な審査を通り信頼できる人物を斡旋してください」

「ふむぅ、確かに。実際モンスターの討伐が即座に行われるとは限らん。補給物資の調達を現地で行える人材は必要だろうな」

馬鹿なパーティが季節の巡りも考えず持久戦を選び現地住民から食料などを買い漁り困窮した事例は数多くある。

実際自分らのパーティの装備品の消耗は激しく材料販売店で買い込むと経済が回らなくなる危険性がある。戦利品や不用品を再利用したりしてるがそろそろキツクなって来ていた。その分だけでも時間削減が出来れば大分助かる。

「給金や権限はリーダーのよって異なるかと思いますが。自分らが戦っている間後方で資源を確保できる人材がいれば大分助かります」

「君らがそういうのならば人材を斡旋しよう。こちらで選んでよいか」

「はい。ただし、パーティの経済事情を口外しないことは念押ししてください」

「わかった」

「それではこちらはどこに招待するかを選ばせてもらうよ。久々にやりがいのある仕事になるね」

「特使殿。ようやく育ちつつある果実の木を切り倒す真似は許しませんぞ」

「わかってますよ。これで大分他国に恩が売れる」

話し合いが終わり僕はコテージ戻り話の内容を大まかに仲間に説明する。

「外国への招待ですか。いいですねぇ。ここもそろそろ飽きてましたし」

「招待されるという事はそれ相応の事情があるという事ですね。外国の同族共は羨むでしょう」

「いよいよもって我らもそういう立場になってきたと。いやぁ、実に良い気分ですな」

「この地の同族達が皆言うんですよ。恵まれすぎてるって。実際の苦労を知らないんですよ」

「これも天のお導きなのでしょう。さらに精進しなければ」

「あれだよねー。やっぱ君という大きな運命の近くにいると周りが変わるって証拠だよー」

「どこに招待されるかはまだわかりませんが僕の騎士道は変わりません」

「あとはもう少し依頼をこなせば昇級できるけど気を抜かずに行こう」

『おー、です』

仲間達も賛同し各自旅立ちの準備を開始する。
その後数回依頼を達成し仲間全員紅光玉級になりこの地でやることは終わった。提案していた事務方は向こうで合流するように手配されているそうだ。

さて、さて外の国はどんな風なのだろうか。
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