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不真面目で肥大化した鳥は自然界では淘汰される
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その後後発組は前の組に無理矢理合流することになった。その立場は下の下、一番下っ端に置かれてしまう。汚れた服を洗ったり食事の準備をしたり、まるで従士のような扱いである。
逃げ出そうにももはや帰る場所がない。実家からも弾き出されてしまったからだ。逃げ出しても居場所がないのだ。国からの支援金は微々たるものでどぶ攫いやごみ掃除など汚れる前提の仕事だけしかできない。それでギリギリに回っている。
しばらくすると冒険者ギルドから職員らがやってきた。これで光明が見えるかと考えていた。
「そちらが作成した支援金の要請と黒曜石級への昇級、レクチャーを受ける準備についてですが」
審査が終わった。周りは良い返事を期待した
「まず支援金についてですが多く見積もりすぎです。出せるのはこれだけです」
職員はその数字を見て落胆する。
「まず利益を出すより損失を少なくする努力をしてください。こんな数いても迷惑です」
必要な人員整理をするべきだと。農夫とか別の道に進ませた方がいいのでは。その言葉だけだった。
「これについては国の方針なのでどうしようもなくて」
「それはそちらの事情ですけど。本気で彼らがモノになるとお考えなのですか?」
「本音を言えばもう解散して自由にしてほしいです。けど、彼らの実家は強引なので」
「中間管理職の苦労は私達も理解しておりますが」
次の問題に移る。
「黒曜石級への昇格は現時点では様子見ですね。何回も大被害を出した連中に与えるべきではありません」
「やはり、そうなりますか」
「まったくもって無駄死にですね。その分だけ相手に装備が渡りましたから」
「はい……」
自分らが出してしまった犠牲者を無駄死にさせあろうことかモンスターに装備を渡しただけでなく警戒態勢を取らせた問題が大きく等級上げは不可能だと。
「最後のレクチャー制度についてですが。もう先んじて聞いているはずですが」
「後回しにする、そうですね」
「それについて彼が冒険者ギルドの建物まで乗り込んできて『黒翼騎士団の担当者を呼べ』明らかに不機嫌でご機嫌取りが大変でしたよ。手を変え品を変えあの手この手を使い何とか話し合いになりました」
「レクチャーを受ける件についてはもう諦めてますので」
「『そんなにご機嫌取りのレクチャーを受けたいなら自分らの国王に言え』そっちの方が楽で愉快なことになるから、だそうです。家族一族にお願いしたら?それでモンスターを懐柔できればね。もうそれだけですよ」
やはり機嫌を損ねたのだ。これについてはもうどうしようもなかった。
「当分は地道に草の根活動をしてください。もうあなた方に交渉の余地はありません。死ぬなら巻き添えを出さずに死んで下さい。残酷かもしれませんが」
それが世界の現実だから、それだけを言い残して相手は帰る。
「隊長、その、自分達は、もう」
そこらの破落戸と変わりないのでは?それに誰も答えない、答えられない。彼らとて元は雛鳥だった。鳥籠の中で大事に育てすぎて肥大化し自力では餌を取れないほどに丸々と体だけが大きくなる。過剰なほど餌を要求し最後には飛べなくなってしまった。
地面を歩き回る太った鳥を狩ることなど容易いことだ。これについては親鳥だけの問題じゃなかった。
『ぐすっ。なんでこんなことになったの。こうなる前に別の道を見つけておけばよかった。その機会も時間も努力する余地もあったのに。今までが甘く優しく悪い夢だった。平和に生きるって無自覚に難しいんだ』
過去の自分達はそれを笑っていただろう。そんなことなどありえないと。
だが現実に今の自分達はその日暮らしの破落戸と大して変わりがない。そうなる前に自力で生き延びる手段を得られなかったことを心底悔やむがもう手遅れ。現実で生きなければならない。
「母国への帰還命令は?」
「きていない」
もうこんなに悲惨なのにまだお国は諦めていないようだ。数はまだまだ残っている。それらの中から出てくるはずだ。そんな泥の中から砂金をすくい上げるような行為をまだ続けるようだ。
それがまるで常識だと言わんばかりに。
その後も増援は続く。送られてくるのは身の程知らずばかりだ。
『ぎゃははは。どぶ攫いとかごみ掃除とかが仕事とかいかにも底辺だな。俺らはさっさと上に行くぜ』
強気な言動のそいつはわずか数時間後にパーティを壊滅させて行方不明になった。
『君たちは国の恥晒しだよ。やはり自分らこそが選ばれたのだ。ま、今後のことは安心したまえ』
頭が良いと自称するそいつは半日後ボロボロになった生き残りと共に病院送りになった。
『俺はキッチリ修行してきたからな。ま、お前らとは違うってところを見せてやるぜ』
熟練者を自称するそいつは簡単に敵の罠にかかり一網打尽にされた。
『敵地に乗り込む必要はねぇ。食料の補給を断てばすぐに壊滅させられるんだよ』
算段を立てたそいつはひたすら食糧攻めを強行し追い詰められたモンスターの反撃を食らい皆殺しになった
『ふんっ。数で押し勝てばいいだけだろ。昔から言ってるじゃないか』
単純明快だと言ったそいつはひたすら数押しをしていくが敵の陣地が安全なはずはなくボロボロに負かされた。
いくら増援を送り込んでも悲惨な運命が待っていた。
さすがにお国もこうなってくると事情を聞かずにはいられなかった。連絡役を送り込んでくる。
「これは一体どういうことなのでしょうか。現場にいる君達自身から答えを聞きたい。本音でよいから」
「送り込まれてい来た全員が軍隊のやり方しか知りませんでした。想定を超えた相手や局地で戦う術を知りませんでした。敵の陣地の乗り込むという事を甘く見て対策を怠りました。それだけです」
「え?たったそれだけ、ですか。上位個体が大量にいたとか、オーガとかが出てきたとか。そんなのではなく単純に実力が足りないと。それだけが答えなのですか」
「知恵知識経験予測対応、色々と要因は考えられますが全員に一致しているのは『想定を超えていた』ことだけです。努力する時間も学ぶ機会も与えられ環境にも恵まれた。それを過剰に要求し続けた彼らに全ての責任がありますがそれを強く諫めなかったこちらにも問題があるのです」
「えーっと、君は自分が言ってることを理解してるのかね。そんなことを口にしたら色々な方からお怒りを買うよ」
「もう自分は疲れました。さっさと馬鹿な連中とは手を切り田舎に引き籠りたいです。家の都合とか職責がどうとかなどもうウンザリなんです。国が本気であるというなら先達に謙虚に教えを乞うべきなんですよ」
「先達とは破落戸や流浪者の冒険者共かね。あれは半分くらい不穏分子だと思うのだが」
「その意識格差が現実モンスターのことを知る機会を失っているとは考えないのですか。モンスターなどただのやられ役、都合のいい悪役、だとでも。冗談じゃありませんよ。奴らだって生き残りを賭けて戦っているのです。誰かが行った戦法を学び利用してくるぐらい常識です」
「君は本当にそれが世界の真実だと」
「そうでないならどれだけの仲間が病院に担ぎ込まれたか分かりますか。死亡した仲間はどこにいるのか分かりますか。未だに墓に入ることが出来ず若い命は次々と冥府に旅立つ。これ以上悲惨な目に合う仲間や同胞を見続けろと言うのならば国に忠誠を誓えません。そっちで好きにしてください」
彼はもう心の限界に来ていた。さすがに無理が続いて心の傷が深すぎる、だけども撤収させられない事情があった。
送り込んだ連中の家族一族らが騒ぎ出したのだ。
先祖らが行った栄達への道を自分の子供らにも期待したが軒並み壊滅ではどうしようもない。口を滑らせたら彼らの大規模な反発が起きるだろう。そして、それを推奨した国に不満を持つ。それだけは避けなければならない。
だけども、モンスター討伐記録はすべて冒険者ギルドの管理下にある。いつの間にか秘密にしていた等級の強引な引き上げが不可能になっていたのだ。これは世界中の国が秘密にしていたのにいつどこで知ったのか。それを出来なくされていた。
そのルートは完全に削除され新たに書き込みが不可能な仕様に変えられていた。今後二度と冒険者プレートの中身を弄ることは不可能だ。
冒険者ギルドは諸国の管理下にあるがけっして国の操り人形ではない。自力で歩く必要があるならそうするだろう。
なら、こうすればいい
『優秀なパーティを引き抜いて国に所属させればいい』
冒険者ギルドの管理下にいては手が出せないが国に所属させてしまえばどうとでもなる。我ながら良い考えだと思う。しかし、現実にするにはとてつもない高く厚い壁が無数に立ちはだかった。
優秀な冒険者を引き抜いて国に所属させたら彼らは自分らに都合のいいように条件を言ってくるだろうし無謀を承知で突撃させたら反感を買う。何より貴族家からすれば無頼漢のほうが立場が上なんて冗談じゃない。そんなことを現実にしたら大反発が起きてしまう。
とりあえず、試しにここで最優秀のパーティと交渉してみるか。
自分達は冒険者ギルドを通じて彼らに接触した。
「ふーん。その手で来るのか」
相手はつまらなそうに答えてきた。相手は幼く非常に可愛いが世の中など知らない道楽者だろう。
「金額はこのぐらいでどうでしょうか?」
大まかに見積もり金額を見せる。所詮蒼光玉級だ、これで十分だろう。ほら、さっさとサインをしろ。その相手はペンとインクを使い金額を書き足す。一桁二桁3桁…え、4桁?5桁目も迷いなく書き足す。さらに何かを書き足そうとして止める。
「そ、それはちょっと、あんまりでは」
「何言ってるの。僕の常識とお前らの常識は違うんだよね」
「そんな理不尽な!甘くしてればつけあがって、これだから冒険者共は!」
「あっそう。じゃ交渉はご破算という事で」
相手はそうして席を立ち部屋から出ていく。ふん、お前の代わりなど世界中にいくらでもいるから何の問題もない……はずだった。
その後、
「君達、なんて馬鹿なことをしてくれたんだ」
外国の特使殿がやって来てこちらを非難した。
「奴らは暴力を売り物にしている無頼漢の組織に所属している連中ですよ。それが国のお抱えになれるだけで十分光栄なことでしょう」
「君たちは世界の常識を知らないどころか彼らがいかに貴重な存在なのかも理解できないんだね」
仲間達もそうだがリーダーの彼に注目し行動を見ている者達がどれほどの数になるのかさえ見えてないとは。呆れ顔の特使殿。
「蒼光玉級のパーティなら他にもいます。そちらと交渉すればすぐにサインしてくれるでしょう」
「『無能の蒼光玉級なら』だけだとしか考えられないね。フフフっ、それがもう通じないことはご理解しているはずだと思っていたのですが、ね。冒険者ギルドにさえ秘密にしていた方法。今後二度と使えないことが」
「な、なんのことでしょうか。我らにはさっぱり理解できませんが」
「そうそう、あなた方の国とは今後距離を取らせてもらいますから。泥船に乗る気はないんですよ」
そうして特使殿は含みを持たせてその場を後にした。
冒険者など世の中にいくらでもいるではないか。
逃げ出そうにももはや帰る場所がない。実家からも弾き出されてしまったからだ。逃げ出しても居場所がないのだ。国からの支援金は微々たるものでどぶ攫いやごみ掃除など汚れる前提の仕事だけしかできない。それでギリギリに回っている。
しばらくすると冒険者ギルドから職員らがやってきた。これで光明が見えるかと考えていた。
「そちらが作成した支援金の要請と黒曜石級への昇級、レクチャーを受ける準備についてですが」
審査が終わった。周りは良い返事を期待した
「まず支援金についてですが多く見積もりすぎです。出せるのはこれだけです」
職員はその数字を見て落胆する。
「まず利益を出すより損失を少なくする努力をしてください。こんな数いても迷惑です」
必要な人員整理をするべきだと。農夫とか別の道に進ませた方がいいのでは。その言葉だけだった。
「これについては国の方針なのでどうしようもなくて」
「それはそちらの事情ですけど。本気で彼らがモノになるとお考えなのですか?」
「本音を言えばもう解散して自由にしてほしいです。けど、彼らの実家は強引なので」
「中間管理職の苦労は私達も理解しておりますが」
次の問題に移る。
「黒曜石級への昇格は現時点では様子見ですね。何回も大被害を出した連中に与えるべきではありません」
「やはり、そうなりますか」
「まったくもって無駄死にですね。その分だけ相手に装備が渡りましたから」
「はい……」
自分らが出してしまった犠牲者を無駄死にさせあろうことかモンスターに装備を渡しただけでなく警戒態勢を取らせた問題が大きく等級上げは不可能だと。
「最後のレクチャー制度についてですが。もう先んじて聞いているはずですが」
「後回しにする、そうですね」
「それについて彼が冒険者ギルドの建物まで乗り込んできて『黒翼騎士団の担当者を呼べ』明らかに不機嫌でご機嫌取りが大変でしたよ。手を変え品を変えあの手この手を使い何とか話し合いになりました」
「レクチャーを受ける件についてはもう諦めてますので」
「『そんなにご機嫌取りのレクチャーを受けたいなら自分らの国王に言え』そっちの方が楽で愉快なことになるから、だそうです。家族一族にお願いしたら?それでモンスターを懐柔できればね。もうそれだけですよ」
やはり機嫌を損ねたのだ。これについてはもうどうしようもなかった。
「当分は地道に草の根活動をしてください。もうあなた方に交渉の余地はありません。死ぬなら巻き添えを出さずに死んで下さい。残酷かもしれませんが」
それが世界の現実だから、それだけを言い残して相手は帰る。
「隊長、その、自分達は、もう」
そこらの破落戸と変わりないのでは?それに誰も答えない、答えられない。彼らとて元は雛鳥だった。鳥籠の中で大事に育てすぎて肥大化し自力では餌を取れないほどに丸々と体だけが大きくなる。過剰なほど餌を要求し最後には飛べなくなってしまった。
地面を歩き回る太った鳥を狩ることなど容易いことだ。これについては親鳥だけの問題じゃなかった。
『ぐすっ。なんでこんなことになったの。こうなる前に別の道を見つけておけばよかった。その機会も時間も努力する余地もあったのに。今までが甘く優しく悪い夢だった。平和に生きるって無自覚に難しいんだ』
過去の自分達はそれを笑っていただろう。そんなことなどありえないと。
だが現実に今の自分達はその日暮らしの破落戸と大して変わりがない。そうなる前に自力で生き延びる手段を得られなかったことを心底悔やむがもう手遅れ。現実で生きなければならない。
「母国への帰還命令は?」
「きていない」
もうこんなに悲惨なのにまだお国は諦めていないようだ。数はまだまだ残っている。それらの中から出てくるはずだ。そんな泥の中から砂金をすくい上げるような行為をまだ続けるようだ。
それがまるで常識だと言わんばかりに。
その後も増援は続く。送られてくるのは身の程知らずばかりだ。
『ぎゃははは。どぶ攫いとかごみ掃除とかが仕事とかいかにも底辺だな。俺らはさっさと上に行くぜ』
強気な言動のそいつはわずか数時間後にパーティを壊滅させて行方不明になった。
『君たちは国の恥晒しだよ。やはり自分らこそが選ばれたのだ。ま、今後のことは安心したまえ』
頭が良いと自称するそいつは半日後ボロボロになった生き残りと共に病院送りになった。
『俺はキッチリ修行してきたからな。ま、お前らとは違うってところを見せてやるぜ』
熟練者を自称するそいつは簡単に敵の罠にかかり一網打尽にされた。
『敵地に乗り込む必要はねぇ。食料の補給を断てばすぐに壊滅させられるんだよ』
算段を立てたそいつはひたすら食糧攻めを強行し追い詰められたモンスターの反撃を食らい皆殺しになった
『ふんっ。数で押し勝てばいいだけだろ。昔から言ってるじゃないか』
単純明快だと言ったそいつはひたすら数押しをしていくが敵の陣地が安全なはずはなくボロボロに負かされた。
いくら増援を送り込んでも悲惨な運命が待っていた。
さすがにお国もこうなってくると事情を聞かずにはいられなかった。連絡役を送り込んでくる。
「これは一体どういうことなのでしょうか。現場にいる君達自身から答えを聞きたい。本音でよいから」
「送り込まれてい来た全員が軍隊のやり方しか知りませんでした。想定を超えた相手や局地で戦う術を知りませんでした。敵の陣地の乗り込むという事を甘く見て対策を怠りました。それだけです」
「え?たったそれだけ、ですか。上位個体が大量にいたとか、オーガとかが出てきたとか。そんなのではなく単純に実力が足りないと。それだけが答えなのですか」
「知恵知識経験予測対応、色々と要因は考えられますが全員に一致しているのは『想定を超えていた』ことだけです。努力する時間も学ぶ機会も与えられ環境にも恵まれた。それを過剰に要求し続けた彼らに全ての責任がありますがそれを強く諫めなかったこちらにも問題があるのです」
「えーっと、君は自分が言ってることを理解してるのかね。そんなことを口にしたら色々な方からお怒りを買うよ」
「もう自分は疲れました。さっさと馬鹿な連中とは手を切り田舎に引き籠りたいです。家の都合とか職責がどうとかなどもうウンザリなんです。国が本気であるというなら先達に謙虚に教えを乞うべきなんですよ」
「先達とは破落戸や流浪者の冒険者共かね。あれは半分くらい不穏分子だと思うのだが」
「その意識格差が現実モンスターのことを知る機会を失っているとは考えないのですか。モンスターなどただのやられ役、都合のいい悪役、だとでも。冗談じゃありませんよ。奴らだって生き残りを賭けて戦っているのです。誰かが行った戦法を学び利用してくるぐらい常識です」
「君は本当にそれが世界の真実だと」
「そうでないならどれだけの仲間が病院に担ぎ込まれたか分かりますか。死亡した仲間はどこにいるのか分かりますか。未だに墓に入ることが出来ず若い命は次々と冥府に旅立つ。これ以上悲惨な目に合う仲間や同胞を見続けろと言うのならば国に忠誠を誓えません。そっちで好きにしてください」
彼はもう心の限界に来ていた。さすがに無理が続いて心の傷が深すぎる、だけども撤収させられない事情があった。
送り込んだ連中の家族一族らが騒ぎ出したのだ。
先祖らが行った栄達への道を自分の子供らにも期待したが軒並み壊滅ではどうしようもない。口を滑らせたら彼らの大規模な反発が起きるだろう。そして、それを推奨した国に不満を持つ。それだけは避けなければならない。
だけども、モンスター討伐記録はすべて冒険者ギルドの管理下にある。いつの間にか秘密にしていた等級の強引な引き上げが不可能になっていたのだ。これは世界中の国が秘密にしていたのにいつどこで知ったのか。それを出来なくされていた。
そのルートは完全に削除され新たに書き込みが不可能な仕様に変えられていた。今後二度と冒険者プレートの中身を弄ることは不可能だ。
冒険者ギルドは諸国の管理下にあるがけっして国の操り人形ではない。自力で歩く必要があるならそうするだろう。
なら、こうすればいい
『優秀なパーティを引き抜いて国に所属させればいい』
冒険者ギルドの管理下にいては手が出せないが国に所属させてしまえばどうとでもなる。我ながら良い考えだと思う。しかし、現実にするにはとてつもない高く厚い壁が無数に立ちはだかった。
優秀な冒険者を引き抜いて国に所属させたら彼らは自分らに都合のいいように条件を言ってくるだろうし無謀を承知で突撃させたら反感を買う。何より貴族家からすれば無頼漢のほうが立場が上なんて冗談じゃない。そんなことを現実にしたら大反発が起きてしまう。
とりあえず、試しにここで最優秀のパーティと交渉してみるか。
自分達は冒険者ギルドを通じて彼らに接触した。
「ふーん。その手で来るのか」
相手はつまらなそうに答えてきた。相手は幼く非常に可愛いが世の中など知らない道楽者だろう。
「金額はこのぐらいでどうでしょうか?」
大まかに見積もり金額を見せる。所詮蒼光玉級だ、これで十分だろう。ほら、さっさとサインをしろ。その相手はペンとインクを使い金額を書き足す。一桁二桁3桁…え、4桁?5桁目も迷いなく書き足す。さらに何かを書き足そうとして止める。
「そ、それはちょっと、あんまりでは」
「何言ってるの。僕の常識とお前らの常識は違うんだよね」
「そんな理不尽な!甘くしてればつけあがって、これだから冒険者共は!」
「あっそう。じゃ交渉はご破算という事で」
相手はそうして席を立ち部屋から出ていく。ふん、お前の代わりなど世界中にいくらでもいるから何の問題もない……はずだった。
その後、
「君達、なんて馬鹿なことをしてくれたんだ」
外国の特使殿がやって来てこちらを非難した。
「奴らは暴力を売り物にしている無頼漢の組織に所属している連中ですよ。それが国のお抱えになれるだけで十分光栄なことでしょう」
「君たちは世界の常識を知らないどころか彼らがいかに貴重な存在なのかも理解できないんだね」
仲間達もそうだがリーダーの彼に注目し行動を見ている者達がどれほどの数になるのかさえ見えてないとは。呆れ顔の特使殿。
「蒼光玉級のパーティなら他にもいます。そちらと交渉すればすぐにサインしてくれるでしょう」
「『無能の蒼光玉級なら』だけだとしか考えられないね。フフフっ、それがもう通じないことはご理解しているはずだと思っていたのですが、ね。冒険者ギルドにさえ秘密にしていた方法。今後二度と使えないことが」
「な、なんのことでしょうか。我らにはさっぱり理解できませんが」
「そうそう、あなた方の国とは今後距離を取らせてもらいますから。泥船に乗る気はないんですよ」
そうして特使殿は含みを持たせてその場を後にした。
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