54 / 87
短編 同じはずなのに違う存在に戸惑う
しおりを挟む
決闘が終わりピュアブリングが勝者となる。その後仲間達は一目散に彼の傍に駆け寄る。
『ピュアブリング!あれはいったい何なの。あれは貴方じゃない。あんな残虐な行為を楽しむなんて心がないの!そもそももっと楽で簡単に戦いを終わらせてしまうことだって出来たはずでしょう!』
皆が皆あまりの変化に驚いていた。困惑、仰天、恐怖、色々な感情が混ぜられておりとても理解が追い付いてない。
「なによ、わたしに口答えする気?」
『えっ』
まず驚いたのはわたしという一人呼称の変化だった。別にそれだけなら対して問題ないように感じるがいつも穏やかで大人しい彼とはまるで中身が違うように感じてしまう。
「ふんっ。文句を言いたかったらあいてにいうことね。どうやっても勝てないのはわかりきっていたはずなのに降伏をみとめなかった代表がむのうなのよ」
次に驚いたのはその言葉遣いだった。真面目で冷静な彼とは明らかに違う、まるで我儘大好き娘のように傲慢尊大な振る舞いとそれを許容してしまうほどの雰囲気を纏っていたからだ。
「さっさとこてーじにもどるわよ。わたしきぶんが晴れないの。上をもてなすのは下のつとめよね?」
『……はい』
全員が沈黙するが逆らえば自分らだってどうなるのか分からない恐怖を覚え従順になることにした。
「さっさとお茶とくだものきってきなさい」
「ねぇ、ちょっと。どうしたの」
「わたしはピュアブリングよ。リーダーをもてなすのは当然のつとめでしょ」
「あの、あまりにも態度が変わりすぎでは。あなたはもっと」
「なによ。わたしが誰だと思っているのかしら」
「リーダー、これまで我らが至らぬところが多かったですが。どうか温情を」
「だったらおちゃとおいしい食べ物もってきなさい。それで我慢してあげるわ」
「なんだがようやく外見と中身が一致したような感じですねー」
「あら。ほめことばありがとう」
「だとしてもここまで別人のようになるのでしょうか」
「わたしは僕、僕はわたしよ。ただコインのおもてとうらがちがうだけ」
「きみぃ、豹変しすぎだよー」
「それについてはどうしようもないのよ」
仲間全員が疑問を浮かべつつこれまで丁寧に対応していた彼とは全く異なる魂が入り込んでいるのか、そう思わざるを得ないほどの変わりようだった。
わたしが言うようにお茶と果物を切って持っていくと満面の笑みを浮かべながらそれを楽しんでいる。
「うまうまよね」
ひとしきり楽しむと満足したのか柔和な笑みを浮かべる彼というわたし。
「あなたは、誰なの。彼の肉体に別の心があるような感じ」
「そうよ。わたしと僕はコインのおもてとうらの関係。ただ、見るほうこうによってちがうだけなのよ。男性的と女性的と些細な違いだけだけどいみはおおきくことなるわ」
「複数の心って、持てるものなの」
「だれだって耐え難いおもいはしてるものでしょう。べつの自分がいればかわってもらいたいと思わない訳はないわ。だれだってきずつきたくないからね」
ミーアとエメリアの質問にピュアブリングという存在が一己だという疑問は消し飛んだ。
「あなたは何者なのですか。どうも我らが知る彼とは同一人物でないことは確かなようですが」
「僕という肉体がピュアブリングというのならわたしもまたピュアブリングなのよ。赤のたにんからもらった名前だけどね」
「肉体という個に二人の人格がコインのようになっているという訳ですか」
「そうよ。もっとも、わたしの出番はあんまりないほうがつごうがいいの。ゆうとうせいだからね僕は」
バーゼルとシェリルは彼が何か深い闇を抱えている事情があることを察しそこを聞いておくことにした。
「どちらが本物なのですか」
「どっちもほんものよ。まぁ、わたしはこの通りだし僕もまたこの通りだけど」
「頭がおかしいんじゃないのー」
「ふふっ。人はね、条件さえ整えればかんたんにくるえるのよ。いっせんをこえるのに自己意識はじゃまだからね」
ラグリンネとエトナはその豹変ぶりに驚くばかりだ。
「あんしんしなさい。しばらくすればいつもの僕に戻るわよ。ま、その間はわたしのよくぼうはっさんに付き合ってもらうけどね」
これまで僕が甘やかしていた分だけ尽くすのは当然でしょ。わたしはそう言っていた。
「さっさとそとにくりだすわよ。服とか下着とかたりないし、なにより楽しみがたりないのよ」
仲間ら全員を引き連れて外に繰り出し服やら下着やらを買い込む、やっぱり女子用のフリフリヒラヒラ服ばっかり選ぶ。あと、本屋にも立ち寄って洗いざらいの本、特に歴史に関する本ばかりを選ぶ。
「なぜ買うのですか」
「わたしは隔離されたせかいしかしらないの。常識けつじょはだいもんだいだわ。あなた達だってらくさの激しすぎる僕にはなやんでるでしょ。それをわたしが補佐するためにまなぶのよ」
たしかに、ピュアブリングの価値感の高低差は激しすぎて手に負えないのは周知のとおりだ。それがわずかでもマシになるというのなら問題はない。
コテージに戻りすごい速さで本を読破していくわたしという存在。
「ふんっ。世の営みとやらはここまでゆがんでるのね。じつにこうつごうだわ」
「都合がいいとは?」
「ときとばあいと条件によっては略奪とじゅうりんと殲滅がゆるされるということよ。たいはんの部族氏族がじゃくたいかしてるのはこうつごう、もっとも未だに同盟関係があるみたいだけどね」
わたしが言うことがいかに恐ろしいことなのかを全員が理解した。
「やっぱりせかいはくるっているのが素晴らしいわ。こんとんとやらにはしっかりお礼をいわないとね。これでわたしというそんざいが必要であるのかがよくわかるというものよ」
先の決闘で見せた残虐性が当然のようにまかり通るこの世界がわたしにとっていかに都合よくできているのかを再確認している。あれについては降伏を受け入れなかった相手に全部の責任があるとしてピュアブリングについては何も罪がないことがすぐに伝えられていた。
『ピュアブリング!あれはいったい何なの。あれは貴方じゃない。あんな残虐な行為を楽しむなんて心がないの!そもそももっと楽で簡単に戦いを終わらせてしまうことだって出来たはずでしょう!』
皆が皆あまりの変化に驚いていた。困惑、仰天、恐怖、色々な感情が混ぜられておりとても理解が追い付いてない。
「なによ、わたしに口答えする気?」
『えっ』
まず驚いたのはわたしという一人呼称の変化だった。別にそれだけなら対して問題ないように感じるがいつも穏やかで大人しい彼とはまるで中身が違うように感じてしまう。
「ふんっ。文句を言いたかったらあいてにいうことね。どうやっても勝てないのはわかりきっていたはずなのに降伏をみとめなかった代表がむのうなのよ」
次に驚いたのはその言葉遣いだった。真面目で冷静な彼とは明らかに違う、まるで我儘大好き娘のように傲慢尊大な振る舞いとそれを許容してしまうほどの雰囲気を纏っていたからだ。
「さっさとこてーじにもどるわよ。わたしきぶんが晴れないの。上をもてなすのは下のつとめよね?」
『……はい』
全員が沈黙するが逆らえば自分らだってどうなるのか分からない恐怖を覚え従順になることにした。
「さっさとお茶とくだものきってきなさい」
「ねぇ、ちょっと。どうしたの」
「わたしはピュアブリングよ。リーダーをもてなすのは当然のつとめでしょ」
「あの、あまりにも態度が変わりすぎでは。あなたはもっと」
「なによ。わたしが誰だと思っているのかしら」
「リーダー、これまで我らが至らぬところが多かったですが。どうか温情を」
「だったらおちゃとおいしい食べ物もってきなさい。それで我慢してあげるわ」
「なんだがようやく外見と中身が一致したような感じですねー」
「あら。ほめことばありがとう」
「だとしてもここまで別人のようになるのでしょうか」
「わたしは僕、僕はわたしよ。ただコインのおもてとうらがちがうだけ」
「きみぃ、豹変しすぎだよー」
「それについてはどうしようもないのよ」
仲間全員が疑問を浮かべつつこれまで丁寧に対応していた彼とは全く異なる魂が入り込んでいるのか、そう思わざるを得ないほどの変わりようだった。
わたしが言うようにお茶と果物を切って持っていくと満面の笑みを浮かべながらそれを楽しんでいる。
「うまうまよね」
ひとしきり楽しむと満足したのか柔和な笑みを浮かべる彼というわたし。
「あなたは、誰なの。彼の肉体に別の心があるような感じ」
「そうよ。わたしと僕はコインのおもてとうらの関係。ただ、見るほうこうによってちがうだけなのよ。男性的と女性的と些細な違いだけだけどいみはおおきくことなるわ」
「複数の心って、持てるものなの」
「だれだって耐え難いおもいはしてるものでしょう。べつの自分がいればかわってもらいたいと思わない訳はないわ。だれだってきずつきたくないからね」
ミーアとエメリアの質問にピュアブリングという存在が一己だという疑問は消し飛んだ。
「あなたは何者なのですか。どうも我らが知る彼とは同一人物でないことは確かなようですが」
「僕という肉体がピュアブリングというのならわたしもまたピュアブリングなのよ。赤のたにんからもらった名前だけどね」
「肉体という個に二人の人格がコインのようになっているという訳ですか」
「そうよ。もっとも、わたしの出番はあんまりないほうがつごうがいいの。ゆうとうせいだからね僕は」
バーゼルとシェリルは彼が何か深い闇を抱えている事情があることを察しそこを聞いておくことにした。
「どちらが本物なのですか」
「どっちもほんものよ。まぁ、わたしはこの通りだし僕もまたこの通りだけど」
「頭がおかしいんじゃないのー」
「ふふっ。人はね、条件さえ整えればかんたんにくるえるのよ。いっせんをこえるのに自己意識はじゃまだからね」
ラグリンネとエトナはその豹変ぶりに驚くばかりだ。
「あんしんしなさい。しばらくすればいつもの僕に戻るわよ。ま、その間はわたしのよくぼうはっさんに付き合ってもらうけどね」
これまで僕が甘やかしていた分だけ尽くすのは当然でしょ。わたしはそう言っていた。
「さっさとそとにくりだすわよ。服とか下着とかたりないし、なにより楽しみがたりないのよ」
仲間ら全員を引き連れて外に繰り出し服やら下着やらを買い込む、やっぱり女子用のフリフリヒラヒラ服ばっかり選ぶ。あと、本屋にも立ち寄って洗いざらいの本、特に歴史に関する本ばかりを選ぶ。
「なぜ買うのですか」
「わたしは隔離されたせかいしかしらないの。常識けつじょはだいもんだいだわ。あなた達だってらくさの激しすぎる僕にはなやんでるでしょ。それをわたしが補佐するためにまなぶのよ」
たしかに、ピュアブリングの価値感の高低差は激しすぎて手に負えないのは周知のとおりだ。それがわずかでもマシになるというのなら問題はない。
コテージに戻りすごい速さで本を読破していくわたしという存在。
「ふんっ。世の営みとやらはここまでゆがんでるのね。じつにこうつごうだわ」
「都合がいいとは?」
「ときとばあいと条件によっては略奪とじゅうりんと殲滅がゆるされるということよ。たいはんの部族氏族がじゃくたいかしてるのはこうつごう、もっとも未だに同盟関係があるみたいだけどね」
わたしが言うことがいかに恐ろしいことなのかを全員が理解した。
「やっぱりせかいはくるっているのが素晴らしいわ。こんとんとやらにはしっかりお礼をいわないとね。これでわたしというそんざいが必要であるのかがよくわかるというものよ」
先の決闘で見せた残虐性が当然のようにまかり通るこの世界がわたしにとっていかに都合よくできているのかを再確認している。あれについては降伏を受け入れなかった相手に全部の責任があるとしてピュアブリングについては何も罪がないことがすぐに伝えられていた。
0
お気に入りに追加
59
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

ハイエルフの幼女は異世界をまったりと過ごしていく ~それを助ける過保護な転移者~
まぁ
ファンタジー
事故で亡くなった日本人、黒野大河はクロノとして異世界転移するはめに。
よし、神様からチートの力をもらって、無双だ!!!
ではなく、神様の世界で厳しい修行の末に力を手に入れやっとのことで異世界転移。
目的もない異世界生活だがすぐにハイエルフの幼女とであう。
なぜか、その子が気になり世話をすることに。
神様と修行した力でこっそり無双、もらった力で快適生活を。
邪神あり勇者あり冒険者あり迷宮もありの世界を幼女とポチ(犬?)で駆け抜けます。
PS
2/12 1章を書き上げました。あとは手直しをして終わりです。
とりあえず、この1章でメインストーリーはほぼ8割終わる予定です。
伸ばそうと思えば、5割程度終了といったとこでしょうか。
2章からはまったりと?、自由に異世界を生活していきます。
以前書いたことのある話で戦闘が面白かったと感想をもらいましたので、
1章最後は戦闘を長めに書いてみました。

前代未聞のダンジョンメーカー
黛 ちまた
ファンタジー
七歳になったアシュリーが神から授けられたスキルは"テイマー"、"魔法"、"料理"、"ダンジョンメーカー"。
けれどどれも魔力が少ない為、イマイチ。
というか、"ダンジョンメーカー"って何ですか?え?亜空間を作り出せる能力?でも弱くて使えない?
そんなアシュリーがかろうじて使える料理で自立しようとする、のんびりお料理話です。
小説家になろうでも掲載しております。
解体の勇者の成り上がり冒険譚
無謀突撃娘
ファンタジー
旧題:異世界から呼ばれた勇者はパーティから追放される
とあるところに勇者6人のパーティがいました
剛剣の勇者
静寂の勇者
城砦の勇者
火炎の勇者
御門の勇者
解体の勇者
最後の解体の勇者は訳の分からない神様に呼ばれてこの世界へと来た者であり取り立てて特徴らしき特徴などありません。ただひたすら倒したモンスターを解体するだけしかしません。料理などをするのも彼だけです。
ある日パーティ全員からパーティへの永久追放を受けてしまい勇者の称号も失い一人ギルドに戻り最初からの出直しをします
本人はまったく気づいていませんでしたが他の勇者などちょっとばかり煽てられている頭馬鹿なだけの非常に残念な類なだけでした
そして彼を追い出したことがいかに愚かであるのかを後になって気が付くことになります
そしてユウキと呼ばれるこの人物はまったく自覚がありませんが様々な方面の超重要人物が自らが頭を下げてまでも、いくら大金を支払っても、いくらでも高待遇を約束してまでも傍におきたいと断言するほどの人物なのです。
そうして彼は自分の力で前を歩きだす。
祝!書籍化!
感無量です。今後とも応援よろしくお願いします。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

異世界転生したら何でも出来る天才だった。
桂木 鏡夜
ファンタジー
高校入学早々に大型トラックに跳ねられ死ぬが気がつけば自分は3歳の可愛いらしい幼児に転生していた。
だが等本人は前世で特に興味がある事もなく、それは異世界に来ても同じだった。
そんな主人公アルスが何故俺が異世界?と自分の存在意義を見いだせずにいるが、10歳になり必ず受けなければならない学校の入学テストで思わぬ自分の才能に気づくのであった。
===========================
始めから強い設定ですが、徐々に強くなっていく感じになっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる