勇者育成機関で育てられた僕よりも異世界から呼ぶ勇者のほうが楽で簡単で強いそうなので無用となりました

無謀突撃娘

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ライザの離脱と北部の都と新たな出会い

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エルフ女達との絡みからコテージに戻りライザラグリンネエトナらに装備の使い具合を確かめさせる。エルフ女に容姿で負けているという気持ちをそれで吹き飛ばす。

「うわぁー、すごいですね」「うん、これなら防御が高い相手にも負けない」「これって戦士よりも強いよね」

軽く素振りをさせ使い方を教えたら木造の練習相手で軽く手合わせ、いままででの武器よりも格段に攻撃範囲と威力の違いに驚く。

これで大分戦闘能力が増したことだろう。皆ご機嫌のようだがライザだけはどこか寂しさを出していた。

「あのっ、みんなに伝えなきゃならなことがあるの」

それは、ライザのパーティ離脱のことだ。

「ついさっき正式な司祭として任命が決まったわ。今後は教会支部長として運営に携わらなきゃならなくなるから皆ともう冒険には出られなくなっちゃう」

「あっ、そうだよね。ライザの願いは最初からそれだったし」「うん、あたしたちとは違ってライザは教会兼孤児院を守るために神官になったんだから」

「それに付いては最初から既定路線だから」

「ごめんなさい」

それは最初からわかっていたことだ。育った教会兼孤児院はそのまま残し仮の教会の方をメインの職場にしてもうしばらく先になるけどちゃんとした教会を建てる方向に進むそうだ。

「ピュアブリングにはお世話になりっぱなしでまだ何も恩を返せてないのに」

「いいんだよ。それが君の進む道だと分かっていて受け入れたんだから」

ライザの目には涙が浮かんでいる。

僕の援助で教会の帳簿の大きな穴はほぼ塞がり自力で運営が可能にまでなっていた。後は大きなへまをしなければ徐々に大きく育つだろう。

それじゃ、最後に領主様のところに挨拶に向かうとしよう。

「そうか、旅に出るのか」

「はい」

領主様はとても寂しそうな顔をする。

「君たちにはずっとここで活動してもらいたかった。そうすれば私だけではなく子供たちも安心できただろうに」

それは偽りのない本心だ。でも、僕らの旅の目的としてゴルオング王国に向かう、まだいくつもの国や土地を渡らないとならない。

「ありがたいお誘いですが」

「いや、こちらこそ色々助けられたのに」

そうして、領主様とのお話も終わり。教会に挨拶に向かう。

『うぇーん。本当に出て行っちゃうんですかぁ。もうしばらくここにいてくださればいいのに』

神官たちは大泣きしていた。

「いや、旅の目的があるから」

「…グスッ。各種水薬の確保とか資金源とか色々と頼れたのに…」「討伐とか戦力として今後も頼りに…」

「いや、もうここまでやれば足りるでしょ」

ライザはここに残していくんだから何とかなるでしょ。彼女らは必死に引き留めようとしてくるがこればかりは旅の目的を果たすために絶対に譲れない問題だ。そもそも別の存在を信仰してるのだから無理だ。

「何かあったらいつでも帰ってきてくださいね」

名残惜しさいっぱいだがこれでやるべきことは終わったのでコテージを引き払い北部へ行く移動馬車に3人分のお金を払い乗る。

「ここより北部ってどんな感じなのかな」

「商街道が使えなくなる前の話ですけど」

ビーストエルフ竜人らが住民として多数おり規模もはるかに多いそうだ。当然モンスターも多くダンジョンも複数存在していて冒険者にとっては都のような場所らしい。結構期待が持てそうだ。

「そろそろ新しい仲間を迎えないとね」

「そうですねぇ」「異議なし」

僕らのパーティには明確な穴がありその役割を担える人物が必要だ、北部なら人材が豊富なので見つかる可能性は高いだろう。馬車に乗ってしばらくすると大きな壁が見えてきた。あれが北の都らしい《バーミット》だ。

幸いにして列に並ばなくて良く3人で30ユクール支払い中に入る。

「露店や商店、武器屋が多いね」

「あっちに売ってるお肉美味しそう」「果物が豊富だよ、ほら」

さすが北の都というだけあって人の賑わいは前とは比べ物にならない。この分なら期待できるだろう。町の人に聞いて冒険者ギルドの建物に向かうと明らかに前の場所より建物が大きい。それだけ需要があるということなのだろう。

中に入るとそれらしい風貌の男女が大勢いた。早速何か仲間の募集がないか受けようとするが受付のところで何かキャンキャン騒いでいる連中がいる。

「あれは?」「なんでしょうか?」「えらそうだね」

近くにいた人に聞いてみる。

「ああ、いつもの連中だよ」

どうも頻繁にあることらしい。いつものと言っていたから同じ奴らなのだろう。別に冒険者では珍しくないのかもしれない。興味を持ったので近づいてみる。

「あなた達の等級ではこの依頼は不可能です」

「だから!もっといい依頼を寄越しなさい」「そうですよぉ。私達なら上手くやれますから!」「おまえら、もういい加減にしてくれよ。これじゃ先に進めないだろ」「そもそも、私達ではちょっと」

ビースト女エルフ女竜人男ドワーフ女だった。でも、ちょっとばかり普通と違う。多分ハイ〇〇〇とかいう上位種族なのだろう。通常より種族の血が色濃く出た個体、それだけで羨望の眼差しらしいが僕らには関係ない。

「いや、あなた達はまだ赤彩石級ですよね。さすがにそのランクではちょっと出せる依頼が…」

「何よ。冒険者プレートの色がどうとか聞き飽きたわ」「さっさと依頼持ってきなさい」

受付嬢は大変に困っているようだ。後方の列も苛立っているだろう。割り込みは好きではないが。

「ねぇ」

「何よ!邪魔しないで。そもそもあ」

あんたは何なのよ。騒いでいた女は僕の瞳を見た途端恐怖の色を浮かべる。《威圧》で黙らせることにした。

「ギルドの受付で長話は後ろの人たちに迷惑、いいね」

「…っ!」

「長話したいなら後でやって」

それで騒いでいた4人は一旦列から外れる。これでようやく受付の列が前に進めるようになった。僕らも列に並ぶその後ろに先ほどの4人がいた。

「いらっしゃいませ冒険者様。本日のご用件はなんでしょうか」

都会らしく言葉遣いが上品だ。

「パーティメンバーを探してるのですが」

「はい、では本人とお仲間の冒険者プレートを提出してください」

僕らは冒険者プレートを出す。

「黒鉄色級のプレート!す、すみませんが少々お待ちください」

受付嬢は慌てて内容審査を行う。

「《ポークサイド》でオークを150体以上ヘッドハンター1体の討伐実績ですね。これで間違いありませんか」

「はい」

「すばらしいご実績をお持ちなのですね。用件はパーティメンバーを探していると。それでしたら何組か募集がありますが」

「先ほどこちらに来たばかりなのでそちらの都合で」

「なるほど。さらに実績を積むために北部に来たと。それでしたら相手も依頼もより取り見取りにありますよ」

『ちょーっと待ちなさい!』

話を進めようとすると後ろが騒いだ。

「私達と対応が違うじゃない。どういうこと」

「黒鉄色級ですから当然です。ここの地域では現時点で両手の指に入る実績ですよ」

後ろから口出ししてきた連中が肩を掴む。

「ちょーっとこっちに来なさいよ。ほら、美人のお誘いは断らないわよね」

受付の前から無理矢理連れ出され建物の中のテーブルに連れていかれる。

「エールと蜂蜜酒を頂戴。あなた達はどうする」

「…」「「…果実水で」」

後ろに並んでいた4人は強引に僕らを椅子に無理矢理座らせ注文を出す。それらが運ばれてきた。

(いったいこの子たちは何なのだろうか)

見た感じ他の二人と年齢はさして変わらないくらいに若い感じだがどれも長命種なので実際はどうかは不明。先のことで依頼がないことを責め立てていたが。

「あんた達、黒鉄色級なのよね」「そうなんですね。しかも明確な実績があると」

矢継ぎ早に捲し立ててくるビースト女とエルフ女に対して竜人男とドワーフ女だけがゆっくりとした口調で話しかけてきた。

「申し訳ないですな。他の二人が短気なもので」「この二人の騒ぎは日常茶飯事なのですよ」

「は、はぁ」

「んで、早速話を詰めましょ」

こちらの意見を出す暇もなく他の二人が話を進めようとする。

『パーティを組まないか』

色々と言葉を使うが単純明快に言えばそれだけだ。

「いや、あのね」

「何よこんな美人の頼みを断るの」

互いのこと何も知らないだろ。

「ビースト族一の勇士ミーアとは私のことよ」「エルフ族随一の弓兵エメリアとはこの私」

いや、前半の武名はそっちが勝手に言ってるだけでしょ。

「バーゼルと言う」「シェリルと言いますです」

前半の二人と違い後半の二人はおとなしめで常識人のようだ。

「それで、パーティを組むというのは」

本題はそこだ。

「今私達は依頼を受けようとしているの。でも実績が足りないってギルドの受付が拒否するのよ」「そうなのよ。私達に任せれば万事解決なのに」

前半二人はどうも自信家のようだ。言葉の端々からそれが分かる。それに対して後半の二人はというと。

「いや、そもそもランクが上の依頼を受けることが無謀なのだが」「そうですねぇ、下手に受けて失敗すれば罰金がキツイですし」

後半二人は現実を見ていて無理にランクが高い依頼は受けないほうがいいと言っている。僕も同意見だ。

「あたし達は歴史にその名を残すの。後世に語り継がれるぐらいに」

「欲を取った結果何度窮地に陥ったか忘れたか。前回など…」

「うっ。あれは不運だったのよ」

「よく調べれば鳴子があったのはわかったはずですけど」

「たったそれだけのことじゃない」

「私達には回復の奇跡が使える神官がいないんですよ。水薬代だけでも馬鹿になりませんし」

「それぐらい必要経費じゃない」

「それで現在金が足りないくせに酒を頼んだのですが」

「気分が滅入ったときは酒よ」

「はぁ、それを相手に支払わせるわけなのですかぁ」

「こんな美人とお話しできるだけでも十分代金は取れるわ」

あーだこーだ、パーティ内で騒ぎ立てている。

「見たところ戦士が一人神官が二人だから隙間を埋めるのにちょうどいいわ」

「それには同意しますが、黒鉄色級と赤彩石級の私達と組んでくれるかどうか」

「美人とパーティを組める。それで充分」

公言する二人に僕は即座に思ってしまう

(お前ら、寄生するつもりか)

冒険者ギルドの識別ランクでは色彩石は下位で鉄色は中位とされている。さして差がないように感じるが報酬は明確な差がある。討伐対象の敵のランクがそこから明確に上がるからだ。明確に線引きされているため上は下に要求できるが下は上に逆らいにくくなる。

酷い時には使い捨ての駒になる場合もあるのだ。なので、ギルドでちゃんとした申請書類の作成が義務付けられている。さて、どうしたものか。
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