勇者育成機関で育てられた僕よりも異世界から呼ぶ勇者のほうが楽で簡単で強いそうなので無用となりました

無謀突撃娘

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エルフは美人が多いと聞くがそれって何がいいの

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あれから少し時間が経過しモンスターの駆逐が終わった北部から商隊がボチボチ行き来をし品物もそれに応じて行き来する。北部由来の特産品や工芸品を始め物流が始まると値付けが行われる。

まだ始まったばかりの交易路で一山当てようと皆が熱気に溢れているがそれを成し遂げた僕はというと。

カーンカーンカーン

鍛冶場で装備を作っていた。

以前から貸していたメイスとスモールシールドでは彼女たちの能力に見合わなくなったのだ。装備の変更と更新もまた重要かつ不可欠なものだ。素材は以前倒したヘッドハンターを魔法の炉で溶かして延べ棒にしたのをベースにより鋭く強く固くを目指して設計する。

設計図は3人分一緒だ。

基本は神官だからメイスとロッド兼用で長さを変えられるようにして棒術のように使えるようにするか。先端が必要に応じて変わるようにすれば長槍としても使える。必要に応じて神聖力を込めればいいようにして完成。盾のほうは小盾のままだが腕を覆う長め六角形にして神聖力で防御範囲の拡大縮小させる機能と内臓武器として神聖力をボウガンのように射出できる機能を組み込んで通常は腕輪に出来るようにしてこちらも完成。

よし、これで後は3人に渡せばいいだけだ。

「おーい、みんな」

コテージに戻ると3人がうなだれていた。ちょっと前までの元気はどうしたの?何かとっかかりが欲しいのだけど。

「ピュアブリング!聞いて聞いてよお願いだからさぁ!」

「な、なんなの」

3人は何か悔しそうな表情をしていた。何かよろしくない連中に絡まれたのか。理由を求めると。

『エルフってどう思う?やっぱり美人さんが多いよね。そうだよね。女として明確に違うから悔しいの!』

はい?エルフが美人だから男の子としてそちらに惹かれるんじゃないか。なんだかちんぷんかんぷんだ。よく話を聞くと北部からエルフたちがこちらにやってきたそうだ。それもそれなりの数が。明らかに若々しく美男美女ぞろいのエルフと比べてヒューマンの自分たちがいかに美貌で劣っているのかを痛感したそうだ。

…容姿の美醜、ねぇ…。僕が施設にいた環境に置いて容姿など意味を持っていなかった。首からぶら下げた番号だけが僕らの個別の認識であり顔が良いとか綺麗な体など実験一つでどう変わるのかさえ不明だ。

ぶっちゃけて言えば、

「容姿の美醜で何が変わるの?その日に貰えるパンと水が約束されるの?ひどい目に合わなくて済むの?」

それだけしか考えられない。

あの施設ではその日のパンと水ですらもらえるのかどうかさえ争っていた。他人のパンを奪い取る子供も珍しくなかったし飢え死にすら普通に存在した。ガリガリにやせ細り放置され最後には行方不明だ。そんな日常で容姿のことなどどうでもよい問題だったのだ。

だが、3人からすると容姿で負けているというのは重要な要素なのだろう。

「今教会にエルフの神官らが呼ばれてるんだけど」

自分らの美貌をひけらかしているそうだ。それがとても悔しいらしい。はぁーっ、そんな程度のことで…、僕はつまらないことで悩むなと言いたい。

それよりも3人のために装備作ったんだからちゃんと練習しておいて。3人の前に装備を出すが心ここにあらず、であった。

エルフがどのぐらいの美貌を持っているかなど僕には何の関係もないはず、そのはずであったはずだが、

「ねぇ、君」

軽く外を出歩くと見知らぬ女に声をかけられた。

無視して通り過ぎようとすると。

「君だよ君、お姉さんを無視しちゃダメだぞ」

無理矢理進路をふさぐ女性たち。耳が長いのでエルフなのだろう。

「…僕に、何か」

別に呼び止められる理由はないはずだ。そもそも彼女たちは外からやってきたのだろう。外に出て開放感が出てしまったのか。

彼女らは僕の上から下までを隅々まで観察する。

(嫌な視線だなぁ)

まるで蛇が獲物を狙い体を締め付けるかのようなねっとりとした視線、それだけと言えばそれまでだが僕にはどうでもよかった。さっさと食材を買い出しに行こうとする僕の手を掴む、女たちの目には色欲が浮かんでいた。

「私達はあなたのように小さい子が好みなの。まだ男の子であって精が通ってなさそうなのが良いわ」

「はい?」

僕は思わず返答を疑問形にしてしまう。これは誘惑というやつなのか。

「外見が少女っぽくて無駄に筋肉がなく骨ばってなくてどっちともとれる部分が堪らないわ」

「…あまりふしだらな言動は控えるべきだと思いますが」

「だってぇ。自分好みの男をほっとけないのが女の本性というものなのよ」

どうもこのエルフの女たちは淫欲が好みのようだが僕にはその気がない。

「あなたの家族が心配してますよ」

「ふふふっ。森に暮らすエルフは貞淑にと情愛を尽くすけど外のエルフは男が無能なら必要ないの」

「はて、エルフは美男子ぞろいと聞いていますけど」

「確かに外見は…ね。でも、行為が拙いのよ」

「それに比べて外の世界は色々なものに満ちてるわ。ちゃーんとそっちのプロがいるし」

「あれに比べたら森のエルフの男どもはおかしいとしか言いようがないわ」

僕にはよくわからない単語が色々混じるが要するに「拙い」のだろう。何を持ってそう言っているのかは不思議だがまぁ男としてなんとなくわかったことがある。

『たとえ極上の美男子でもそっちが下手ならすぐさま女は見切りをつける』

最上級のベッド最高の食事と酒湯舟も完備し最高のアプローチで迫ってきてほしいのだろう。淫らと言えばそれまでだがそこに至る過程の満足度が明確に足りないのだとエルフ女たちは明言しているのだ。僕は僕の姿を確認したことはないが彼女らの好みにはあっているようだ。

もっとも、普通じゃ有り得ない好みのようだ。変態だとか年下志向とかそんな類だと思う。

ここまで同族の男を非難するということは相当鬱憤が溜まっているのだろう。彼女らの不満はたとえ不貞と呼ばれてもいいからこの欲望を鎮めたいのだ。

はぁ、仕方ない。僕は「ご期待に沿えそうにないので」そんな言葉で逃げようとした。

「駄目よ。あなたからは素晴らしい香りがするの。そこら辺の男など眼中に入らないぐらいに」

こちらの腕を握りつつ両脇を挟み込んで逃がさないつもりだ。彼女らの瞳からはすでに正気が薄れてかけている。おい、ここはまだ市街地だぞ。さすがにこれ以上は誘惑の罪じゃなかろうか。

「あなた達、そこで何をしているのですか」

お、どうやら秩序の番人の登場のようだ。女神官である、名前などどうでもいいからこいつらに秩序を教えてやってくれ。

「今取り込み中なのですが」

「こちらから見るとどうもその子をかどわかしているように見えますが」

どういった用件で彼を拘束しているかを問いただす。

「いえ、ちょっとばかりからかって遊んでいただけですよ」

ねぇ、と。仲間らに同意を求める。

「ここは他国です。ふしだらな真似は慎んでください」

「わかっておりますとも。神官様」

言葉の端々に「邪魔しやがったな」そう感じるのは気のせいではないのだろう。エルフの女たちは拘束を解いてどこかへ行ってしまう。

「大丈夫ですか」

「助かりました」

ここの神官らは僕のことを知らない者はいない。

「エルフの女は情愛も強いですが裏切り者には容赦しません」

特に男のことではと。それはもう十分理解している。

「なんか同族の男性を『不能男』って呼んでたけど」

「なるほど。それには同意見ですね」

女神官は悪びれもせず明言した。エルフの男は外面は良いが自信過剰なうえにあっちがスカスカだそうであまり結婚相手として人気がないらしい。エルフの男は自分を選ばれた存在だと信じており女にひたすら命令する。それに対してエルフの女も他に男を作ってしまう。エルフの社会では男性よりも女性のほうが権限が強く基本的に女が相手を選ぶ慣習があるそうだ。

で、見放されたエルフの男は外に出ることになるのだが外見だけしか取り柄のない男などお呼びではないわけであまりいい仕事にはありつけないそうだが一部からは人気があるわけだ。主に欲望処理機として。外見だけならまぁ最高だしね。ぶっちゃけそっちで成功する場合が多いそうだ。

「エルフの女全体に言えることですけど彼女らはこと性に関しては妥協をしませんし行為が始まれば野獣に変わりますから。ちなみにビーストの女達も性に対しては貪欲の一言ですから」

「なるほど」

「あと、一番厄介なのがその嗜好です。年下男子というか幼い男の子が無類と言えるほどに大好きなのです」

エルフは寿命が長く若い時代がとても長いから欲望を持て余す。だからまだあどけない男の子を誘い込み行為に及ぶ。さすがに犯罪だろ、って思うが金やら品物を握らせるのでほぼグレーゾーンになっている。

「この手の問題はエルフに限った話ではないのですが」

不道徳を嫌う教会はこのエルフの女たちの行動に手を焼いている。どんなに注意しても「それがエルフの道徳だから」それでおしまいだ。

男も女も情欲を持て余しているので始末が悪い。

「気を付けたほうがいいですよ。あなたの外見はエルフの女からすれば願望機が歩いているのと同じですから」

僕の外見はまともに見れば変態だがエルフの女には願いうるすべての理想だそうだ。だからあれほど迫ってきたのか。

これからは外を出歩く時には注意しよう。
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