上 下
49 / 69

エクリプス辺境伯家26

しおりを挟む
「ここはこうしてこっちはこうで、うん、これでいいか」

 今わたしは西部の領地に来ている。魔法で大急ぎで地形や資源の調査を行なうと鉱物資源が乏しい反面と平地が大きく気候が穏やかなので巨大農業地帯とすることに決定した、【豊穣の土】などを混ぜて整地する。そうして短時間で作業を終えてから、

「いきなりこんな広大で豊かな農地の管理を任されるなんて光栄です」

「はわわわ~、自分のような若輩者がこのような大役など普通はありえませんよ~」

「これほどの場所の警備を一任されるとは不安ですががんばります」

 3人にここ一帯の管理を任せる。エドガー、チェリス、フリードリッヒだ。この3人は全員王妃様から推薦されてわたしの領地に仕官しに来た。生まれは低いが能力評価は非常に高いし監督経験は時間が経てば十分だと判断して最低の騎士爵位を王国に認めてもらった。出来るだけ早く農作物の大規模生産をして欲しいそうなので白羽の矢を立てたのだ。

「これだけ豊かで広いのに何か不満があるのかな?」

「まだ仕官して1年も経たないのにいくらなんでもこの辺り一帯の管理など分不相応すぎます、産出される農作物などを計算すれば最低伯爵ほどの領地ですよ」

「そ、そうですよぉ。共同管理や基本的な統治は習いましたがいきなりこんな大役では他の貴族らからの反発は間違いありませんし」

「そうです、これほど重要な場所をほぼ自分らで経営させるなどどう考えてもありえません。王妃様から能力を認められていますが人選が不十分ではないかと疑います」

 3人ともまだ20代前なのでいきなりこんなのはありえないのだと思っている。

「わたしは辺境伯だよ。領地管理や運営は誰にも口出しさせない実力があるしあなた達のとっても出世したいでしょう。互いの利害が一致しているのだしその能力があると判断したから押すんだよ、それとも、他の人にここを任せて欲しいの?」

「「「そ、それは・・・」」」

 3人ともうろたえているが出世する大チャンスなのだ、これを拒否すれば二度とありえないだろう。こちらとしてはある程度役職と利権を認めて管理させれば楽なのだ。

「別に永久にここで仕事をしろと言う訳ではないしまだまだ開発しなければいけない重要な場所や仕事は多い、その最初の一歩で尻込みしてたら他の仲間から奪い取られるよ。出世して良い家に住みたいでしょう?家族や兄弟などに良い仕事や結婚相手を選ばせたいでしょう?お金が沢山欲しいでしょう?チャンスの神様は前からしか掴めない、それを見逃すというの?」

「「「・・・・・・」」」

 残念だが能力があろうともその覚悟が無ければ一生底辺を彷徨うだけだ。

「仕方が無い、せっかく押したんだけどそんな気弱な精神じゃダメだね。他の人とかわ」

「「「やります、是非ともやらせてください!」」」

 3人は縋り付いて仕事を承諾した。それから彼らは文句が出せないほど領民から慕われる統治者として一心不乱に働くことになる。結果が出るには少し時間がかかったが許容範囲内だ。彼らの功績はきちんと書類に書いておく。

「そうですか、領地の発展は非常に順調なのですね」

「君の能力なら当然だね。これで他国の方にも良い返事が出せるよ」

 国王や王妃様らのところに来ている、定期報告の期限だったのだ。周りの視線が痛々しいのは気のせいではない、完全に異常といえるほど発展し続けているのが気に入らないのだろう。そこに入りたいのだろうが能力が無いし今までのことからほぼ完全に受け入れを拒否している。向こうはその利権が欲しいだけで他には出そうとしないからだ。別に彼らの領地の開発が出来ないわけではないが引きこもり体質なので必要な金や人手を出そうとはしないことが原因だ、それに気づかなければ別に手助けする必要も無い。

「こちらからお金や人手などを出せるだけ出しますから専売権や領民の働き先を斡旋して欲しいです、人数や販売の計画書を書いていますから目を通してください」

「・・・分かりました、この条件なら問題ありません。開発した場所が広大で人手不足なのですぐさま働いてもらえるように手配します」

 会議の席でフェンリル公爵家など一部は非常に友好的で出すべき条件や約束をきちんと計画書に書いているので目を通してほぼ問題が無かったのですぐさま受け入れる、主導権を握っているのは殆ど王妃派だった。聞くところによると雇っている冒険者やダンジョンなどの管理費用や定職を持たない人たちが増え始めていてそのお金や働き場所などが非常に苦しいらしい。ダンジョンは稼げるが初心者から熟練者がそれぞれ実力に合わせて潜っているそうなのだが周辺にはそれらを援護できる施設などがないらしい。アイテムなどを大量に稼いでも持ち帰れないので荷物の運搬や武器の整備など便利屋商売の人たちが是非とも欲しいらしい。

「それならわたしの方でそういう方面の資金提供や管理や運営をしましょうか?領地の統治などと掛け持ちになりますがある程度は仕事が出来ますし南部方面から連れてくることも出来ますから」

「でしゃばるな若造が!そういうものは王国に任せておけばよい!この新興貴族が!!」

 それならあなた達がそれを出せるのですか?というと黙ってしまう。彼らの装備品や食事やアイテムなどは全て無料ではないし一部は王国に納めなくてはいけない。かなりギリギリなので新しい冒険者やそれを援護する関係者を増やしたいのだがその元手がない。

「それでは、一部ダンジョンや冒険者の管理を試験的に任せましょう」

 王妃様からの提案で一部ダンジョンの運営と冒険者の支援を任される、殆ど初心者なのでここからステップアップしろということだ。そうして彼らに基礎を叩きこむ。

「ほらほらどうした!守るべき王女様の方が負担が大きく頑張っているのにもうダウンか!」

 ユーフォリアを呼んで訓練をつけさせる。短時間で結果を出すのなら軍隊流が一番だ。重い荷物を背負わせてひたすら走らせる、基礎体力が無ければどのような教育も無意味。だから、ひたすら走らせる。ユーフォリアは60キロで他は全員その半分だがほんの少しの時間で周回遅れが出始める。

「も、もう、ダメ・・」

「王女様が文句を言わずに頑張っているのにそれでも魔物と最優先で戦う冒険者か?それで魔物の脅威から住民を守れるのか?ダンジョンで強力な魔物と戦うときに誰が守るのだ?泣き言を言うだけならば誰にでも出来るぞ?死にたくなかったらひたすら走れ!」

 止まった相手には無理矢理引き起こす。残念だがユーフォリアとは積んだ訓練の質も量も違いすぎるので付いていけるようになるのはもう少しかかるな。彼女に訓練内容を任せて王妃様に報告する。

「なんであの子がここまで短期間であそこまで逞しくなっているのですか?」

「どう考えてもおかしいよ、訓練内容は過酷だけどあそこまでにはならないはずだよ?」

 二人の王妃も別人なのではないかと非常に疑っている、普通ならば変化が異常すぎるだろう。

「ジョブの効果もありますがあの訓練を平然とこなせる実力だということです」

 定期的に領民を含めて男性女性としての健康状態が悪くならない様に健康診断をしている。始めの頃は変化すると体の構造が何から何まで変わることに多少精神が興奮状態であったが今は安定しているし子供などを生むことも問題ない健康状態だ。

「今の彼女のレベルは400を超えた程度ですがまだまだ成長の余地は十分すぎるほどあります」

「「ハァ!?」」

 さすがに数字がおかしすぎると驚く。普通ならばそこまで成長するなどありえないのだから。リースリットやシャナやステラも大体同じぐらいだ。全員に同じ訓練をしているがもう少ししたら専門的な訓練に移行しないといけないが。

「どこまで反則的なのですか。もしかして神族というわけではありませんよね?」

「本当に人間族なの?能力が異常極まるから誤魔化してるとしか思えないけど?」

 二人は疑惑の目を向ける。多少縁はあるが人間族だと思うのだが能力が異常なので自分自身でも疑うことがある。訓練を受けている冒険者は恐ろしい速さでレベルが上がっていきある程度まで行くとすぐさま装備などを支給してダンジョンに派遣する。その成果は王国の予想を完全に超えていて莫大な利益を出すことになる。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

家の庭にレアドロップダンジョンが生えた~神話級のアイテムを使って普通のダンジョンで無双します~

芦屋貴緒
ファンタジー
売れないイラストレーターである里見司(さとみつかさ)の家にダンジョンが生えた。 駆除業者も呼ぶことができない金欠ぶりに「ダンジョンで手に入れたものを売ればいいのでは?」と考え潜り始める。 だがそのダンジョンで手に入るアイテムは全て他人に譲渡できないものだったのだ。 彼が財宝を鑑定すると驚愕の事実が判明する。 経験値も金にもならないこのダンジョン。 しかし手に入るものは全て高ランクのダンジョンでも入手困難なレアアイテムばかり。 ――じゃあ、アイテムの力で強くなって普通のダンジョンで稼げばよくない?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

金眼のサクセサー[完結]

秋雨薫
ファンタジー
魔物の森に住む不死の青年とお城脱走が趣味のお転婆王女さまの出会いから始まる物語。 遥か昔、マカニシア大陸を混沌に陥れた魔獣リィスクレウムはとある英雄によって討伐された。 ――しかし、五百年後。 魔物の森で発見された人間の赤ん坊の右目は魔獣と同じ色だった―― 最悪の魔獣リィスクレウムの右目を持ち、不死の力を持ってしまい、村人から忌み子と呼ばれながら生きる青年リィと、好奇心旺盛のお転婆王女アメルシアことアメリーの出会いから、マカニシア大陸を大きく揺るがす事態が起きるーー!! リィは何故500年前に討伐されたはずのリィスクレウムの瞳を持っているのか。 マカニシア大陸に潜む500年前の秘密が明らかにーー ※流血や残酷なシーンがあります※

ヒロインさん観察日記

蒼碧翠
ファンタジー
あまりのお腹の痛さに気が付くと、たくさんの正統派メイドさんに囲まれて、出産の真っ最中?! ココどこよ? 分娩の最中に前世を思い出した私。今生での名前は、聞き覚えのあるような、ないような・・・ ま、いずれわかるでしょう って、私が好んで読んでた、ラノベに近い世界でした。 でも、何かおかしい気が?

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月 夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

処理中です...