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西松辰の場合 5
しおりを挟む彼の目に涙が溢れ出し、頬に流れていく。
もう、泣くな。
浅倉は涙を止めようと必死になって袖で拭く。
その痛々しくも、可愛らしい浅倉の姿に胸がギュッと締め付けられる。
もう、限界だ!
そう思った瞬間、浅倉の唇にキスをしていた。
「んん!!」
浅倉は驚いて目を丸くしている。
「うぅ、んっ」
押し退けようと浅倉がジタバタと暴れ出したので、動けないように強く後頭部を抑えた。
私は理性をなくしていた。
ただ、本能に身を任せ、浅倉を欲した。
浅倉の口を無理やりこじ開け、舌を絡まらせる。
「はぁっんっ」
苦しそうに息を漏らす浅倉の姿に萌え、更にその次の段階へと進もうとした時だった。
ポケットから携帯のバイブが鳴り出し、私は理性を取り戻した。
やってしまった……と後悔する中、気持ち良さそうにキスの余韻に浸っている浅倉を見て、満更でもなさそうだと感じ思わす笑みがこぼれる。
「もう泣くな。今度泣いたらそれだけじゃ、すまさないからな」
浅倉は顔を真っ赤にさせながらコクコクと頷いた。
今の私が浅倉にしてやること。それは浅倉の背中を押してやることだ。
「浅倉、いいか、親友ってのは、互いに心開いて何でも言い合えるからこそ友なんだ。告白したぐらいで、ぶつくさ言うなら親友じゃない。そんな頭の固い奴は、こっちから願い下げしろ」
浅倉の顔がだんだんと青くなっていく。
浅倉の癖なのだろうか、また俯こうとしている。
私はそんな浅倉の顔をパチンと両手で挟んだ。
「恐れるな、前を向け。結果が良かろうが悪かろうが、精一杯ぶつかっていくのなら後悔するのも悪くない」
「先生……」
涙目で見つめる浅倉。
「浅倉、自分に素直になれ」
あの後、「告白してみる」と涙を流しながらも笑顔だった浅倉に「浅倉、頑張れ。もし、何かあればいつでもここにおいで」と、見送った。
私は馬鹿だ。
好きな奴が告白するって言うのに、それを応援するなんて。
でも、仕方がない。
私は好きな人を思って見つめている君の笑顔に恋をしたのだから……。
私はポケットから携帯を取出しながら深い溜め息をつく。
「はぁー、やばかったよなぁ……」
メールの送信者に思わず礼をいった。
あの時、メールが来なかったら私は浅倉を無理やり抱いていた。
あのまま、抱いたら浅倉は私を軽蔑しただろう。
どうして、こんなにも君を好きになったのだろうか……。
今度会ってしまったら自分をコントロールできるか自信がない。
その時君は私を受け入れてくれるだろうか………。
END
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