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西松辰の場合 1
しおりを挟む「桜君へ」
君を初めて見たのは入学式の日だった
桜の花びらが舞い散る中で
遠くを見つめている君を見かけた
愛しそうな、でも、切なそうに笑う表情に
一瞬にして心を奪われた
それから、自然と君の姿を追うようになった
名前を知らない君を
私は「桜君」と名付けた
君の姿を見るために毎朝早く出勤し
煙草を吸いながら、君が通るのを待っている
その距離がとても新鮮だった
毎日フワフワして、キラキラと色鮮やかになる
そう、初めて本気で恋をしたんだ
大学時代の友が今の私の姿を見たら、さぞかし馬鹿だと嘲笑うだろう
この私が同性で、しかも、年下の高校生に一目惚れするなんて自分でも信じられない
君がどんな性格なのかも知らないのに
どんどん、君の事が好きになっていく
もっと、君の事が知りたい
私という存在を知ってほしい
だけど、今は君を見ているだけにするよ
君に会ったら何をするか分からないからね
桜君へ
君と出会う、その時まで
この恋心を楽しむ事にしよう
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