君へ

白銀

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浅倉誠の場合 6

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保健室を出た僕は真っ先に教室に戻り、関に告白するため屋上に呼び出した。
落ち着け、大丈夫だ。
保健室を出て行く際、西松が言った言葉を思い出す。

『浅倉、頑張れ。もし、何かあればいつでもここにおいで』

西松の笑顔が脳裏に浮んだ。
大丈夫、大丈夫。

「誠?」

「あっ、ごっ、ごめん」

「まだ、体調がよくないんじゃないか?」

「うんうん、大丈夫だよ」

いつものように心配してくれる関。
君はいつも僕に優しかった。
君はいつも一緒にいてくれた。
ありがとう、関。
ギュッと両手を握りしめた。

「僕、関の事がずっと好きだったんだ」

僕の顔がカーッと火照っていくのがわかる。
そんな火照った顔で、恐る恐る関の顔を見た。
関は目を見開いたまま、固まっていた。
沈黙が続く。

「誠……好きってLOVEの方か?」

僕は頷く。

「いつから、なんだ……」

「中学2年の頃から」

「そっ、そうか……」

関の目が泳いでいる。
困っている時の仕草だ。
そうだよな、突然こんな事言われても困るよな。
僕はギュッと唇を噛んで、関に笑顔を向けた。

「困らせてごめん。でも、僕の気持ちを関に知ってほしかっただけだから」

へへへっと笑う僕に関は不自然に視線を外す。

「へっ、返事はいいから。聞かなくても分かってるし」

痛い……。
一言もしゃべってくれない関。

「きっ、気持ちが悪かったら、僕を無視してもらってもかまわないから」

その言葉に関が少し反応した。

「いやっ……あっ、と……」

言葉につまる関を見て僕は決心した。

「関、今までこんな僕と親友でいてくれてありがとう」

最後は笑顔で決して泣かないと決めたはずなのに、自然と僕の目から涙が零れ落ちる。

「ごめんね、じゃぁ」

去ろうとした僕の手を関が力強く掴んだ。

「まっ、待って!」

僕は関の予想しなかった行動に驚いた。

「あっと、えっと、あ゛ぁー!」

関がワシワシと髪を乱暴にかく。

「誠、ごめん。気持ちは嬉しいけど俺、お前の事そんな風に思えないんだ。でも、だからって、親友をやめることはない。ずっと一緒にいた訳だし、今更誠がいないのは嫌だし、あー、俺何言ってんだー」

関……。
僕は関の精一杯の言葉に嬉しさで胸が熱くなる。

「だから、俺が言いたいのは、誠さえよかったら、今のまま友達でいてほし……」

僕は関が言い終わらないうちに思わず抱きついた。

「うわっ、誠っ!」

「関……ありがとう、ありがとう」

関は苦笑いをしながら、僕の背中をポンポンと叩いてくれた。





関に告白してよかった。
結果は駄目だったけど、胸に突っかかっていたものが取れた気がする。
あの時、西松先生が僕の背中を押してくれなければこんな気持ちになれなかった。
西松先生にお礼いわなきゃ。
『頑張ったな』っと頭を撫でてくれるだろうか。
僕は関を抱きしめたまま、クスクスと笑った。
頭に浮んでいるのは、西松の優しい笑顔。




この時、僕は知らなかった
自分がすでに新しい恋をしていたことに……。






END


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