君へ

白銀

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浅倉誠の場合 2

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僕には好きな人がいる。
その人は、同性で親友の松田関。
関は僕の気持ちなんて知らない。
中学3年の頃、この気持ちを押さえられなくなり、学校の帰り道に気持ちを伝えようと告白を試みたことがある。
だけど、たまたま前にいた男性同士のカップルを見て、関が放った一言で、僕の心が、全てが、凍りついた。


『気持ちわりぃ……』


その時の関の嫌悪した顔が今でも忘れられない。
それ以来、関に気付かれないように気持ちを押し殺してきた。


一緒にいられないなら、ずっと友達のままでいい。


そう思っていた。
関に彼女が出来るまでは……。






「誠、俺な、彼女が出来た」

そう照れながら告白する関に僕は体を固まらせた。

「よっ、よかったな関。あっ、ごめん、トイレにいってくる」

無理やり作り笑いを浮べ、急いで教室を出ていった。
関の顔がまともに見れなかった。

とにかく、早くその場から逃げ出したかった。
わかっていた。いつかこうなることは……。

覚悟をしていたはずなのに……。

今にも溢れ出しそうな涙と泣き叫びそうな声を必死に押さえ込む。

「うっ……」

爆発寸前だった。
ドン。

俯きながら、小走りで走っていた僕の右肩に人がぶつかった。

「おっと」

男性の声に振り向こうとしたが、重力がそれを許さなかった。
ぶつかった拍子にバランスを崩し、足を滑らせたのだ。僕の目に写るのは硬く冷たい廊下。
ある程度の衝撃を覚悟し目をつぶった瞬間、倒れゆく僕の体は、ぐいっと強い力に引っ張られた。
引っ張られたお蔭で転ばずに済んだのか安心し、足の力が抜けペタンと廊下に座り込んだ。
そして、スイッチが入ったように、目からたくさんの涙が溢れ出していく。

「えっ!おい、大丈夫か?」

白衣を着た男が僕の目の前にしゃがみこむ。
ポタポタとこぼれていく涙。
高校生にもなって他人に涙を見られるなんて最悪だ。っと心の中で思っていても涙は止まらない。
男は泣いている僕の頭に手を乗せ優しく撫でてくれた。
暖かい……。
男の手の暖かさと、優しさに更に涙が止まらなかった。











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