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番外編

城編 16

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「へー、よかったな」

「うん、午前中の授業は楽しかった」

横並びにソファーに座り、今日の出来事をバルトに報告中です。
今日、約束通りに来てくれたバルトの服装は、白いシャツの上に黒のロングカーディガン、黒のパンツの黒コーデです。いい!めっちゃカッコイイ。
なぜバルトが私服なのかと言うと、今日のお仕事が正午までで俺が終わるのを待っていたらしい。
うー、連絡してくれたらよかったのに!

「で、午後はどうだったんだ?」

「んーとね……」

あの後スウェンにエスコートされ食堂につくと、長テーブルに色々な料理が置かれてあった。
その横、4人が座れるぐらいのテーブルに2人分の食器やナイフなどがセッティングがされていた。ビュッフェ方式なのだろうか?と首を傾げているとスウェンがお皿を持ってきた。

「ジン殿下のお好きなものをお取りください。ただし、野菜、肉などバランスよくお願いします」

言われた通り皿に盛っていると、スウェンが料理の説明をしてくれた。アレはメルゾーラの○○地域にいる魔物の肉で栄養価が高いとか、アレは隣の国の果物で意外と固いとか、コレは柔らかくとろけるような肉だとか……俺が知らないことを教えてくれた。
お皿に盛った後は食事タイム。たわいのない話をしながら楽しく食べた。食べ終わると、デザートが運ばれてきた。甘すぎず苦すぎず丁度よい甘さのチョコケーキでどこで売っているのかを聞くと、驚いたことにスウェンの手作りらしい。すごい。息抜きにお菓子作りをするのが趣味なんだとか。今度一緒に作る約束をした。ぜひこれをバルトに食べて貰いたい。
食べ終わるとスウェンから、食事マナーの授業の合格点を貰った……けど……。

「食事のマナーは合格点を貰えたんだけど、午後の授業で……」

午後の授業は音楽だった。ダンスやピアノを習ってみなのだが全然ダメ。
ダンスはトラウマが発動して、吐き気がし授業にならず。ピアノは……うん、聞かないでほしい。結局、ダンスはまた何かいい方法を考えてくれるそうで、ピアノは辞めて違う楽器を習うことにした。吹く楽器ならいける感じがする。それっぽい楽器あるかな。

「ジン?」

「あっ、ごめん。えーとね、午後はダンスとピアノだったんだけど俺のせいでダメになった。俺音楽の才能ないわ」

はぁーとため息をつくと、バルトが笑いながら俺の頭を撫でた。

「学生時代は俺も音楽全般が苦手で、少しずつやって出来るようになった」

「バルトはピアノが弾けるの?」

「いや、ピアノは無理だったが……サックスを習った」

サックスか……ピアノより出来そうな気がする。

「俺もやってみようかな?」

「いいと思うぞ」

「ん、スウェンに相談してみる。ありがとう、バルト」

手を握り笑顔でお礼を言うとバルトも俺の手を握り返し、「あぁ」と愛おしそうに笑った。
バルトのその笑顔にドキッと俺の鼓動が跳ねる。
いつ見てもバルトのその表情ヤバイ!普段はカッコいいのに、その表情は可愛いくてエロい!
脳内でジタバタと暴れていると、バルトがポケットから何かを取り出し、俺の手の上に置いた。
よく見てみるとリボンの付いた小さな箱だ。
プレゼント?

「何これ?」

「開けたらわかる」

箱を開けてみると、銀のシンプルなペアリングが入っていた。2つとも逆向きの翼が彫られている。
今着けている鍵指輪と似てる?違いは魔石がない事ぐらいか?

「以前ジンが言ってただろ。夜見の国では、婚約や結婚をしたらペアリングをつける風習があるんだよな?」

「……うん」

以前、酔っ払った時にバルトに、なんで左手薬指につけてるんだ?と聞かれてそう答えたような……気がする。

「ジン、左手出して」

反射的にバルトの前に左手を差し出すと、薬指につけていた鍵指輪を外され、箱から取り出した指輪をそっと薬指にはめた。そして、その上に鍵指輪をつけなおす。

「あっ……」

鍵の指輪と逆向きの翼の先がくっついて対みたいだ。まるで元々ひとつだったみたいに。

「2つで1つみたいだね。不思議」

「だろ。この鍵指輪を作った店で注文したんだ。魔石も同じようにつけようかどうか迷ったんだが……」

バルトはそう言うと箱に入っているもう1つの指輪を手に取り裏側を見せてくれた。

「ここに、俺とジンの目の色の魔石を入れた」

明かりに照らすと赤と黒紫の魔石が光りに反射してキラキラと光っている。

「綺麗……」

指輪をじっと見ていると指輪越しにバルトが優しく笑っているのが見え、思わず俺もニヘラと笑う。

「ジン」

バルトは自分の左薬指の鍵指輪を外すと、俺の前に差し出した。

「俺にはめてくれるか?」

「ん」

俺は指輪を受けとるとバルトの左手薬指に指輪と鍵指輪をはめた後、親指で指輪を撫でた。
この世に2つしかない特別な指輪。同じ指輪をつけると、セックスで繋がっていなくてもバルトが側にいる気がする。

「お揃いだな」

「ん」

はにかむバルトを見ながら、自然と言葉が出る。

「早く一緒に暮らしたい、ね」
「早く一緒に暮らしたい、な」

お互いに同じことを思っていたらしい。
目をパチパチさせた数秒後、「ぷはっ」と2人して笑った。





指輪交換した後、しばらくバルトと雑談をしていたが、急に眠くなってくた。

「でね……ふわぁー、ん"」

今日の疲れもあって欠伸が……うにゅ、眠たい。
欠伸を噛み殺し目を擦っていると、バルトがふっと笑った。

「ジン、今日はもう帰るよ」

「えっ、でみょっ……ふわぁっ……」

「ほら、呂律が回ってないし、欠伸も止まらなそうだぞ」

「でも、まだ、一緒にいたい。ん……体を繋げるのは、無理だけど……バルト、一緒に……寝てくれる?」

トロンとした目で軽く首を傾げながら、バルトの袖を引っ張った。
そんな俺を見てバルトはぐわっと目を限界まで開けるとバシッと片手で目を覆った。

「くっ!ふぅー、落ち着け俺……」

胸を抑えブツブツ言っているバルトに、俺の方を向かせようと袖をもう一度引っ張った。

「バル……」

俺の声にこちらを向いたバルトは、ぐっと何かを我慢するような表情をしていた。そして、ふぅーと息を深く吐き出すと、仕方ないなと言う表情で笑った。

「よし!ジン、一緒に寝よう」

「ん……バル」

バルトに向かって手を広げると、ひょいっとお姫様抱っこでベッドに運ばれた。
互いベッドに横になり、今にも閉じてしまいそうな重たい瞼を何とか頑張って開けていると、バルトの手が俺の頭を優しく撫でる。

「ジン、おやすみ」

「ん、バル、おやすみ」

バルトが優しく微笑んでいたので、俺もつられてふにゃと口許が緩む。

「っ!……やば」

バルトにギュッと抱き寄せられ、チュッとおでこにキスをされた。俺も返そうとしたが睡魔が襲う。

「ジン、愛してる」

「ん……俺も……あいして……りゅ」

最後の言葉が呂律が回っていなかったように感じたが、限界がきて眠りに落ちた。







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