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番外編

城編 7

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「マジか……」

はい、ジンです。
今、マイヤから案内され、護衛であるサザン達2人と一緒にやってきたのは、3階建ての白い大きな宮殿の前。
ここは歴代の第1王子の宮殿で、城の宮殿の中で3番目に大きな建物だ。ちなみに1番は城の横にある王と王妃の宮殿、2番目は前王と前王妃の宮殿。
俺にそんな大きな宮殿を……と思ったが、第2王子の宮殿と大きさは変わらないらしい。ならいいか。
門番が装飾の凝った鉄の門を開けると、50人以上の使用人達がズラリと並んでいた。

「「ジン殿下、おかえりなさいませ」」

一斉に深く頭を下げる彼ら彼女らを見て、口をポカンと開けたまま言葉がでなかった。
俺1人にこの人数、ありえないだろ。少人数でと言ったはずなのに……多すぎ。

「なんでこんなに……」

ボソッと俺が呟いた言葉に、先頭にいた執事らしき人が、反応し顔を上げた。

「えっ!マイヤがもう1人!」

思わず横にいるマイヤと、執事の格好をしているマイヤを交互に見る。
……若干、執事マイヤの方が若い気がする。

「ジン殿下。こちらは私の弟のヤミです」

マイヤがにっこりと笑いながら紹介してくれた。

「ヤミと申します。僭越ながらジン殿下の従者を務めさせていただきます」
えっ、俺の従者!

「いら……っ!」

いらないと断ろうとしたが、ヤミのとろけるような笑顔に俺は言葉を飲み込んだ。
そんな顔されちゃ、何も言えないよ……。

「ジン殿下は、かわ……ま……ね」

ぎゅっと軽く唇を噛み締めている俺の耳に、ヤミの小さな呟き声が聞こえ聞き返す。

「えっ?ゴメン。ヤミ、もう一度言ってくれる?」

「ふふ、お気になさらず。それよりもさっきのことですが……」

「さっき?」

「『なんでこんなに』とおっしゃっていた件です」

「そう、それ!俺1人にこの数、多すぎじゃない?俺、ただの平民だよ」

俺の言葉にヤミが首を左右に振った。

「ジン殿下は立派な王族の一員です。それは王が、王族の方が既にお認めになっていることです」

「だけど、俺に仕えるなんて……申し訳ないよ」

俺がここにいるのはたったの数ヶ月間。それ以降は……。

「ジン殿下、ここにいる者は皆、ずっと殿下の帰りを待ち続けてきた者達です」

「えっ!ずっとって……」

「王がジン殿下の存在を知られてすぐにです。ジン殿下がいつお帰りになられてもいいようにと、王自らが厳選されました」

嘘だろ!……あれ?でも、先日俺の宮殿を『用意した』って言ってたよな……『用意した』じゃなくて、『用意してた』んだな。
安易に断って悪かったかも……と反省していると、2つの疑問が浮かび上がった。
ん?待てよ、前世の俺、ジンが亡くなったことを知っていたのに、アーガンは今までずっとこの城を維持していたのか?それに亡くなったことを皆に周知させなかったのはなぜだ?
ヤミに聞こうかと思ったが、前世の俺が亡くなったことは多分知らされてないだろうと聞くのをやめた。

「そう、なんだ……」

何と言っていいかわからず、曖昧な返事を返しながらヤミを見ると、眉間に皺を寄せ、悔しそうにギリッと歯を食いしばっていた。

「本当はもっと数がいたのですが……第2王子が生まれて……」

ヤミのその言葉に俺は微笑する。
まぁ、当たり前だな。生きてるか死んでるかわからない庶子王子より、次期王確実の王子様だろ。

「ジン殿下」

隣にいたマイヤから名を呼ばれ、俯いていた顔を上げる。

「皆に一言、声を掛けてあげてください」

「えっ?あー、わかった」

何て言えばいいんだろう……あっ!
ずっと頭を下げたままの使用人達に気付き、慌てて声を掛ける。

「ゴメン、皆、頭を上げて」

そう声を掛けると、ヤミが手でさっと何かを合図をした瞬間、皆が一斉に頭を上げた。
涙ぐんでいる者や穏やかに笑う者、胸に手を当て軽くお辞儀するなど様々な者が、温かい目で俺を見ている。
なんだが胸がくすぐったい。
何を言えばいいかわからなかったが、皆を見て言葉が自然と出た。

「……皆、ただいま」

俺が照れながら挨拶をすると、ワッと歓声が上がった。拍手と共に『お帰りなさいませ、ジン殿下!』と皆からの想いが返ってきて胸がジーンと熱くなる。
なんだ、これ……。
優しく温かい目で俺を見てくれる人達に、じわりと目に涙がたまっていく。

「ジン殿下」

名を呼ばれ視線をやると、ヤミが愛おしい表情で涙ぐんでいた。

「お帰りなさいませ、我が主。私達の命はジン殿下に」

ヤミが左手の拳を胸に当て深く礼をした瞬間、ヤミの背後にいた皆も一斉に同じ礼をした。

「っ!」

これを断るなんて無粋なこと、待っていてくれた皆に失礼、だな……。
皆が頭を上げたので、一人一人の顔をじっと見つめていった。皆は不思議そうな表情で俺を見ていたが気にしない。
よし。ちょっと時間がかかったけど、だいたい顔は覚えた。

「ジン殿下、どうされましたか?」

無言で皆を見ていた俺を、ヤミが不思議に思って声を掛けたので、「何でもない」と首を振った。

「では、宮殿の案内を……」

「あっ、ちょっと、待って」

ヤミの言葉を遮り、呼吸を整えた後、真っ直ぐ皆の方を見つめた。

「待っていてくれて、ありがとう」

はにかみながらお礼を言うと、シーンとなった数秒後、うぉぉぉぉ!きゃぁぁぁ!と感嘆の声が響く。

「うわぁ……」

あまりの大きな声に驚き目をパチパチとさせていると、ヤミがそれに気付き皆に向かって声を荒げる。

「お前ら煩いぞ!静かにしろ!」

ワーと皆それぞれ騒いでいる中、ヤミの声が一番煩かったとは言わないでおこう。











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