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89 完
しおりを挟む「おぃ、主!ここ来るなら来ると俺に言えと言ったよなぁ!」
「マイヤァー……ぐずっ」
「うわ、何泣いてんだ……きたねぇ……っと、失礼しました」
アーガンの従者兼護衛のマイヤが俺達に気付くといつものすまし顔に戻る。
マイヤさんって、あれが素なんだな。
後に聞いた話によると、マイヤはアーガンの従者兼護衛だが、元暗殺者で現在所属は暗部。ちなみにイーダもそうなのだとか。イーダの強さに納得です。
「ジン、明日も来るからな!」とマイヤに首根っこを掴まれ、アーガンは帰っていった。
台風が去ったような静けさにホッと息をつく。
「はあー、悪かったな。話をしようか」
「……あれ、何を話すんだっけ?」
バルトがそっと俺の涙の跡を親指で拭きながら笑う。
少し泣いただけなのに気付くなんて、さすがバルト。
「ジンのその姿のことだろ」
「あはは、そうだった。ありがとう」
俺は皆がソファーに座るのを確認すると、この姿になった経緯と王族と精霊の話をアークに話した。アークは俺の話に驚き、納得したように頷いた。
「精霊王と王族の誰かが結婚したのは知っていたが、【精霊王の祝福】は初めて聞いた……」
「えっ、じゃあ、精霊に近い子供の話は……」
「あぁ、一切聞いたことがない。たぶん数十年前に途絶えている……」
眉間に皺を寄せたアークが俺の方を向き頭を下げた。
「ジン、精霊王に会わせてくれ。頼む!」
「……わかった」
俺は魔力を練り、呼びたい精霊を頭に浮かべ名を呼ぶ。
「シロ、クロ。お願い、来て」
景色が歪み魔力を感じた瞬間、目の前にシロとクロが現れた。
『ジン、待ったわよ』
「ゴメンね、シロ」
シロにぎゅっと抱きつかれたので、よしよしと頭を撫でた。
『あー、こいつか。まぁ、見えるだろう』
「……ジン、精霊王はそこにいるのか?」
「アーク、やっぱり見えない?」
「あぁ、すまない」
「クロ」
するとクロがパチンと指を鳴らした。
『聞こえるか、メルゾーラの王族の子よ』
「っ!はい、聞こえます」
『目を瞑って俺の声に耳を傾けろ』
「はい」
素直に従い目を瞑るアークにクロが尋ねる。
『お前の名は?』
「アーク……いや、アークサンダ・バリシ・メルゾーラです」
『アークサンダよ。俺は闇の精霊王のクロだ。決して名で呼ぶな。名で呼んでいいのは主だけだ』
「御意」
『目を開けろ』
アークがゆっくり目を開けると、一瞬驚いたように目を開けたが、すぐに元の表情に戻った。
「っ!見えます」
アークは立ち上がり片膝をついて挨拶を、と思ったがクロから止められ大人しくソファーに座った。
『で、私達は何を説明すればいいのかしら?』
にっこり笑って言うシロにアークは丁寧な言葉で教えを乞う。シロとクロも答えられる範囲で答えると、アークは頭を抱え大きなため息を吐き出した。
3人の話を簡単に説明すると、王族に伝えたはずの掟や呪文の事を王族のアークは聞いたことも見たこともなかったようだ。
「一度城の地下の古文書を確認してきます……。もし、見つからなければ、お手数ですが、もう一度掟から教えていただけますでしょうか?お願いします」
深く頭を下げるアークに、クロ達は頷く。
『いいだろう』
『しょうがないわね。私達精霊にも関係あることだし』
「ありがとうございます」
アークはもう一度深く頭を下げた10秒後、顔を上げ俺達に視線を向けた。
「ジン、精霊王様との橋渡しをお願いできるか?」
「ん」
「ありがとう」
アークは優しく微笑んだ後、立ち上がりクロ達に視線を向けた。
「では、早速調べて参ります。数日かかるとは思いますが、終わり次第ジン経由で連絡させていただきます。では、御前失礼いたします」
アークはそう言うとお辞儀をし、部屋を出た瞬間、『結界・指瞬転移』で飛んでいった。
あれから、しばらく4人でのんびり雑談したり、俺の料理を食べたりした後、クロとシロは満足して帰っていった。
「はあー、つかれたー」
隣に座っていたバルトの膝へ倒れかかる。
「お疲れ、ジン」
笑いながら俺の頭を撫でてくれるバルト。
ん、気持ちいい。
俺はバルトに手を伸ばすと頭を撫でた。
「バルもお疲れー、ありがとうね」
「俺はいただけだが……」
「それがどれだけ心強かったことか」
「そうか、ならよかった」
優しく笑うバルトの頬に触れ撫でていると、バルトが俺の手を掴み手のひらにちゅっとキスをした。
「ふふふ、ねぇ、バルト」
俺の手にバルトの手が重なり、お互いぎゅっと握る。
「ん、何だ?」
「俺達の事、いつ言う?」
「俺はすぐにでも言いたいが……そんな雰囲気じゃなかったよな……」
「だよね。でも、俺、バルトと一緒にいたいし、離れたくない」
「俺もだ」
「黙って一緒に住んじゃう?」
「んー、そうなると、アークとアーガンが黙っていないだろうな……」
「あー、そう、だよね……」
俺達一応成人してるんだけどな……。勝手にすると難癖付けられてバルトと離ればなれにされそうで怖い。まぁ、そうなったら逃げればいいか。
「いっそのこと、旅に出るか?」
「第3騎士団長様が何言ってるの。ダメだよ」
「俺の世界はジン中心だから、騎士を辞めても悔いはないよ。そうだな、辞めた後は冒険者になろうかな。で、ジンと2人で旅をするんだ。楽しいだろうなぁ」
バルトに言われ想像してみた。
朝起きたら横にはバルトがいて、朝食を食べながら今日は何するかを決める。そして、手を繋ぎながら移動旅デートに人目気にせずのキス。戦い方を手取り足取り教えてもらい、うまく倒せたご褒美はバルトとの甘い夜のイチャイチャ……。
「……いいかも」
「だろ。だから旅に出たかったらいつでも言えよ」
「うん、最終手段にする」
クスクスとお互い笑い合っていると、ぐいと体をバルトの方に引っ張られお姫様だ抱っこをされた。そして、脇に手をいれられ、バルトの脚に股がるように向かい合わせに座らされる。甘い顔で見つめられドキリと胸が高鳴る。
「ジン……」
「バル……」
お互いの唇と唇がちゅっと軽く重なり、バルトが離れていく。
足りない……。
俺はバルトの唇を追いかけるように迫ると、バルトにペロリと俺の上唇をなめられた。
「ふはっ……んっ」
笑った瞬間バルトの舌が強引に俺の中へ入ってきた。
「んっ……はぁっ……」
浅く深くを繰り返しながらお互いの舌が何度も絡まりあい、ちゅっと音を立てて離れた。
「ん」
「はぁ……ジン」
愛おしそうに見つめて笑うバルトに、俺は満面の笑みを浮かべた。
「バルト、俺、幸せだ」
「俺もだ」
バルトはそう言うとグィと腰を上に突き上げた。
「っ!」
大きく立ち上がったバルトのモノが、俺のモノとお尻の間に当たり、思わず笑う。
「バルト……んっ」
俺もバルトのモノと俺のモノがわざと当たるように腰を動かした。
「っ!」
「……ねぇ、バルト。俺が壊れるほど愛してくれる?」
俺の行動と問いにバルトは目を見開いた後、ギラリとした鋭い眼差しでニヤリと笑って答えた。
「あぁ、まかせとけ。それ以上に奥深く愛してやる。俺の愛は重たいからな。ジン、覚悟しとけ。俺がいないとダメになるぐらいドロドロに甘やかして、これでもかっというほど愛するから、逃げるなよ」
「ん。俺もバルトの愛を全て受け止めるから、俺の愛も全て受け止めてね」
「あぁ、全力で来い」
俺達の愛はまだまだ始まったばかりだけど、これ以上の幸せが待っているかと思うと、胸がドキドキしてヤバい。もちろん、幸せ意外なこともたくさんあると思う。楽しいことばかりじゃなく、寂しいこと、苦しいこと、辛いこともあるだろう。それでも、バルトと一緒なら全部含めて愛おしいと思ってしまうのは、俺がバルトを愛してる証拠なんだろうな。
「ジン……」
「バルト……」
「「 愛してる 」」
巻き込まれ召喚でまさかの前世の世界だったので好きだった人に逢いに行ったら……、今は愛し愛されて最高に幸せです。
END
最後まで読んでいただきありがとうございました。感謝です♪
どうでしたか?
少しでも皆様の心に残る作品だったでしょうか?
そうだと嬉しいです♪
後はたまに番外編をいくつか書いて投稿していきたいと思いますので、よろしければ読んでいただけたらと思います。ではでは。
白銀
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