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しおりを挟む「んっ……」
体がだるい。動けない。
目を開けると申し訳なさそうな表情で覗くバルトと目が合う。俺は自分に『回復』魔法をかけ、だいぶ軽くなった上半身を起こし、バルトを見つめる。
「ジン、すまん、加減ができなかった……」
しょぼんと垂れ耳が見えるぐらい反省するバルトが可愛くて、よしよしと頭を優しく撫でた。
「ん。バル、これからは手加減して」
「っ!わかった!ありがとう」
パッと明るく笑うバルトにクスクス笑っていると、お互いに愛おしい笑顔で見つめ合い、額と額をコツンとぶつける。
「ねぇ、バ……ん」
俺が頬を赤く染めながらバルトの名を呼ぼうとすると、バルトが俺の唇を人差し指で軽く押し当て言葉を遮る。
「ジン、待って、俺に言わせてくれ」
真っ赤な顔で低く甘い声で言うバルトに思わずふふっと笑った。
「ん」
バルトは顔を真っ赤にさせたまま、片手で口を塞ぎ、ぶつぶつと呟いた後、「よし!」と声に出して言うと俺を真っ直ぐ真剣な眼差しで見つめた。
「ジン、俺はジンがいないと、もう生きてはいけない。おかしくなりそうなぐらいジンを愛しているし、もう絶対離れたくない。……俺の愛は他の人より重いかもしれないが、ジンを思う気持ちは誰にも負けない自信がある。だから、俺の側に一生いて欲しい。寂しい思いも、苦しい思いも、辛い思いも絶対……は無理かもしれないが極限させない!もし、させたら俺を煮るなり焼くなりしてくれていい。あーくそ、決まらんな!」
ガシガシと頭をかくバルトに俺はひと言告げる。
「俺はいつものストレートなバルトの言葉の方が嬉しいな」
バルトはキョトンとした後、ふわりと優しく破顔した。
「ジン、大好きだ。愛してる。絶対幸せにすると誓う。だから、俺と結婚して、一生添い遂げてください」
真っ直ぐなバルトの言葉に胸が暖かくなる。
「ん、バルト。俺も愛してます。一生添い遂げた後も愛してくれる?」
「あぁ!もちろんだ。添い遂げた後も愛することを誓う」
ぷはっと2人で笑い合いながら何度もキスをした。
俺はベル達の『精霊王の祝福』で大きくなれたことに感謝した。体が小さいままだとバルトの大きいアレは厳しかったと思う。うん。
ありがとう、ベル、フウマ、クロ、シロ、ガイ、ドイ。俺、幸せだよ。
皆の顔を思い浮かべて、はっ!と思い出し、時計をみると、16時を過ぎていた。あれから2時間は経っている。
「あっ……」
「どうした?」
「どうしよう……ベル達待ってたんだった……」
『で、来るのが遅くなったわけね』
「うっ、ごめん、ベル」
えぇ、全て白状しました。だって、遅くなったのは確かだし、何せ来た瞬間ベルに、『あなた達、ヤったわね……』と言われた。どうやら俺の中にバルトの魔力が混じっているのがわかるらしい。ちなみにバルトも俺の……アレを飲んだり、俺の中に長時間入ったりしたので、俺の魔力が混じっている。
精霊王にはヤったことがバレバレやん!はずい!
「水の精霊よ、責めるなら俺だけにしてくれ」
キリッと決めたつもりだろうけど、バルトの顔はにやけている。
『バルト……あなた幸せなのはわかるけど顔緩みすぎよ』
ベルは、はぁーと呆れたように溜め息をついた。
『でも、まぁ、意外なことがわかったし、よしとしましょうか』
「意外なこと?」
『聞きたい?』
ニヤッと笑うベルに若干構えつつも頷くと、ふふふと笑いながら教えてくれた。
どうやら俺とバルトが性行為……ゴホン、まぐわって致したので……あれ、これも同じ意味か?
バルトと性行為を行ったことで、俺の【正の感情】が急激に増え、バルトに無意識に全属性の【正の感情】を直接渡したことで、バルトの【不純魔力】がかなり減ったらしい。
「そんなことが……」
「何の話だ?」
そういえばバルトに詳しく説明してなかったなと思い出し、詳しく話した。
「……と言うわけで、魔王化にならない為、定期的にベル達に見てもらおうと思って」
「ジンは大丈夫なのか!まさかジンも魔王化に……」
「まだ魔王レベルにもなってないから大丈夫だよ」
「だが……」
眉間に皺を寄せ悩むバルト首を引き寄せ、唇にチュッとキスをした。バルトは突然のキスに目をパチパチとさせた後、ふわりと笑いながら俺を抱き寄せ、チュッとキスを返される。
「ジン、本当に大丈夫なんだな?」
「うん、大丈夫。回避方法はわかったしね」
照れ笑いを浮かべる俺に、バルトは今まで見たことのない幸せ全開の笑顔で笑った。嫌な予感。
「そうだな、ジンと長く繋がればいいんだよな」
「ちょっ、言い方!」
「毎日ヤろうな」
「あれを……毎日……無理!絶体無理!俺の体が持たない!」
俺とバルトの会話にベルは、はぁーと息を吐き出す。
『はいはい、ごちそうさま』
ベルは呆れたような、それでいて嬉しそうに笑った。
『ねぇ、じゃあさ、今日は2人のお祝いしようよ』
後ろで聞いていたフウマがニコニコで俺の肩に手を置いた。
「えっ、また飲むの?」
『あらー、いいわね』
ベルは木の下でぐっすり寝ているシロ、ガイ、ドイをチラリと見る。
『んー、よし。クロ以外はいるわね。クロー、私の泉に至急集合よ!ジンに関してだから早くきなさ……』
ベルが言い終わらない内に、クロが一瞬で飛んできた。
『ジンに何かあったのか!って……バルトもいるのか……』
「よう、闇の精霊様。相変わらず嫌そうな歓迎ありがとう」
いつもと違う反応をしたバルトをクロは訝しみ、目を細めた。
『……っ!お前、ジンを!』
「ふふふ、ジンはもう俺のモノを、ジンは俺のモノ……」
バシッとバルトの頭を容赦なく叩いた。これ以上卑猥な言葉は結構です!
「バル、黙っとこうか」
「……はい」
『ぎゃははは、もう尻に敷かれてやんの!……ん、あれ、前から敷かれてたな?そういう場合は何て言うんだ?』
フウマが一人でボケツッコミしているので放っておこう。
『料理はどうしようかしら?』
「あっ、そうだ。ジンと一緒に昼食べようと思って実家の料理人に作ってもらった料理がある。あと、酒もあるぞ」
「実家の料理人の料理って……」
「あぁ、ジンが好きなベジタスープに、ピッザンとトメットのパスタだ」
「やったー!あっ、俺もデザートと酒ならある」
『昨日の残りの料理もあるぞ』
皆で料理と酒を並べながらガヤガヤと楽しんでいると木の下で仮眠をしていたシロ、ガイ、ドイが起きた。
『ん、なんの騒ぎ……』
シロが目を擦りながら俺の方を向くと、これでもかと目を見開き、いい笑顔で笑った。
『おめでとう!ジン、バルト!』
「あはは、ありがとう」
「ありがとう」
ガイ、ドイも目を覚まし、俺を見て固まった。
『ジン様が……』
『俺達のジンが……』
「ガイ、ドイ」
俺が笑いながら両手を広げると2人は飛び込んできた。
『ジン様の魔力がバルトに……』
『バルトの魔力がジンに……』
「ん、でも俺は変わらないから、大丈夫だよ」
ポンポンとガイとドイの背中を叩くと2人はグリグリと頭をなすり付けた。本当可愛い。背も年も2人の方が上だけど弟みたいに思ってる。
「……」
バルトの複雑そうな視線が痛いが、大目に見てほしい。
『さぁ、皆、ジンとバルトのお祝いを始めるわよー』
『『おー』ですわ』
ベルとフウマとシロは元気に手を上げ、残りの3人、クロとガイとドイは納得いかない微妙な表情を浮かべていたが、きっと、バルトをよく知って話していく内に祝ってくれると思う。だって、俺の大切な友達だからね。
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