【番外編中】巻き込まれ召喚でまさかの前世の世界だったので好きだった人に逢いに行こうと思います

白銀

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84 ※後半

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「……それからの俺は、ジンのその言葉にすがって生きてきたんだ」

俺は微笑しながら、ジンの手をぎゅっと握りしめた。

「幻滅したか?」

「するわけない!」

「即答だな。情けないついでにもう一つ懺悔をいいか?」

「情けなくないけど、バルトが話したいなら俺は聞くよ」

「ありがとう」

俺はふぅーと息を吐き出し、目を細めながらジンを見つめた。

「……あの、最後の日に、ジンが命を懸けてまで俺を助けてくれたこと、だ」

「っ!」

目を泳がせるジンに俺は可笑しくてふっと笑う。ジンは困った時や嘘をつく時に、よくその仕草をしていた。変わってないな。

「ジンはあの日、俺が気絶から目を覚ました時には、ドラゴンの呪いに掛けられていた。そうだろ?ポーションが効かなかったのが、その証拠だ」

「……」

「ジン。俺、あの後、生き残った他の騎士団達から聞いたんだ。気絶していた俺をドラゴンの攻撃から庇ってくれた奴がいたと。その誰かがドラゴンの目を魔法で凍らせたお陰で倒せたのだと。そして、その後『ドラゴンの叫び』が発動する前に、その誰かがドラゴンに向かっていったお陰で、近くに倒れていた奴らは助かったのだと……。なぁ、それって、ジンだろ?」

答えたくないのだろう、ジンは親指の皮膚を噛み、視線をそらしたままだった。俺はジンが噛んでいた手をぎゅっと握り、噛んでいた親指の手をそっと外した。そして、噛んだ跡を優しく撫でながら、ジンに問うように話す。

「俺はあの時、ドラゴンの近くにいた。ジンは怪我を負っていたが、『ドラゴンの叫び』は避けようと思えば避けれたはずだ。それなのにジンは呪いに掛かった。と、言うことはただ一つ。……俺が後ろで気絶していたから……ジンは俺を助けるために……」

今まで言えなかった言葉を一度飲み込み、ギリッと歯を食いしばる。次第に涙が溢れ、視界が歪んでいく。

「すまん、俺が……ジンの命を、奪った……」

「違う!それは俺が決めたことだ。バルトのせいなんかじゃない!」

「いや、俺のせいだ。俺があの時、皆に攻撃の指示を出したせいだ。俺が攻撃するタイミングを間違えたせいで攻撃を食らった……俺が気絶しなければジンは……」

「そんなのやってみないとわからないじゃないか!それに俺がドラゴンの呪いに掛けられたのは俺のせいだ!俺が生き残りたいと思ったから、最後まで悪あがきして戦ったんだ!バルトのせいなんかじゃない!」

「ジン……」

ジンが俺の頬を両手で掴み、優しく笑った。

「ねぇ、もうお互い自分で自分を責めるのはやめよう。俺達、今、ここにこうして一緒にいるんだよ。もう、いいじゃん……過去の思い出ばかりじゃなく、今を一緒に生きようバルト。それとも、今の俺じゃダメ?愛せない?」

ジンのその言葉に、胸にあったモヤモヤが一気に無くなり、視界が晴れたように、目の前がクリアに広がった。

本当、これだからジンは……。

「ダメなわけないじゃないか。俺はどんなジンでも愛してる」

「ん。俺も、どんなバルトでも愛してるよ」





お互い笑い合いながら目が合うと自然に距離が近付き、唇と唇が軽く重なる。

「ふふ……」

軽いキスがなんだか可笑しくて笑うと、微かに開いた隙間からバルトの舌が入り込み、俺の口内へ。

「んっ……」

舌が絡み合い、ぐるりと一周したかと思うとお互いの舌を軽く吸い、吸われ、深く浅くを繰り返す。ぴちゃぴちゃとキスの音と吐息が脳に響く。

「はっ……んっ……」

バルトの大きな手が俺の後頭部を支えながら、ゆっくりと後ろに倒れ、俺の体がベッド沈んだ。見上げるバルトの目が僅かだが躊躇しているように見えた。
俺は微笑しながら、バルトへ手を伸ばすと、バルトは伸ばした手を優しく掴み、ギラリとした熱っぽい瞳で俺を見つめた。バルトの雄の顔に、ズクンと俺の下の部分が反応し疼く。

「ん、バル、きて……」

バルトは俺の手の平をペロリとなめ、人差し指と中指の間の指間腔をねっとりとなめた。

「んっ……」

「はぁ……ジン、意味わかって言ってるのか?」

「ん、バルトと……繋がりたい」

バルトの目が大きく見開いたかと思うと、バシッと額を叩き天井を見上げた。

「っ!反則だろ、その顔」

俺、一体どんな顔しているんだろう?
両頬を触ってみるがいつも通り……だと思う。
はぁーとバルトが息を深く吐き出すと、俺を情欲的な熱い眼差しで見つめた。

「ジン、嫌がっても、止められないから」

「ん、嫌じゃないから……きて……」




























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