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「……それからの俺は、ジンのその言葉にすがって生きてきたんだ」

俺は微笑しながら、ジンの手をぎゅっと握りしめた。

「幻滅したか?」

「するわけない!」

「即答だな。情けないついでにもう一つ懺悔をいいか?」

「情けなくないけど、バルトが話したいなら俺は聞くよ」

「ありがとう」

俺はふぅーと息を吐き出し、目を細めながらジンを見つめた。

「……あの、最後の日に、ジンが命を懸けてまで俺を助けてくれたこと、だ」

「っ!」

目を泳がせるジンに俺は可笑しくてふっと笑う。ジンは困った時や嘘をつく時に、よくその仕草をしていた。変わってないな。

「ジンはあの日、俺が気絶から目を覚ました時には、ドラゴンの呪いに掛けられていた。そうだろ?ポーションが効かなかったのが、その証拠だ」

「……」

「ジン。俺、あの後、生き残った他の騎士団達から聞いたんだ。気絶していた俺をドラゴンの攻撃から庇ってくれた奴がいたと。その誰かがドラゴンの目を魔法で凍らせたお陰で倒せたのだと。そして、その後『ドラゴンの叫び』が発動する前に、その誰かがドラゴンに向かっていったお陰で、近くに倒れていた奴らは助かったのだと……。なぁ、それって、ジンだろ?」

答えたくないのだろう、ジンは親指の皮膚を噛み、視線をそらしたままだった。俺はジンが噛んでいた手をぎゅっと握り、噛んでいた親指の手をそっと外した。そして、噛んだ跡を優しく撫でながら、ジンに問うように話す。

「俺はあの時、ドラゴンの近くにいた。ジンは怪我を負っていたが、『ドラゴンの叫び』は避けようと思えば避けれたはずだ。それなのにジンは呪いに掛かった。と、言うことはただ一つ。……俺が後ろで気絶していたから……ジンは俺を助けるために……」

今まで言えなかった言葉を一度飲み込み、ギリッと歯を食いしばる。次第に涙が溢れ、視界が歪んでいく。

「すまん、俺が……ジンの命を、奪った……」

「違う!それは俺が決めたことだ。バルトのせいなんかじゃない!」

「いや、俺のせいだ。俺があの時、皆に攻撃の指示を出したせいだ。俺が攻撃するタイミングを間違えたせいで攻撃を食らった……俺が気絶しなければジンは……」

「そんなのやってみないとわからないじゃないか!それに俺がドラゴンの呪いに掛けられたのは俺のせいだ!俺が生き残りたいと思ったから、最後まで悪あがきして戦ったんだ!バルトのせいなんかじゃない!」

「ジン……」

ジンが俺の頬を両手で掴み、優しく笑った。

「ねぇ、もうお互い自分で自分を責めるのはやめよう。俺達、今、ここにこうして一緒にいるんだよ。もう、いいじゃん……過去の思い出ばかりじゃなく、今を一緒に生きようバルト。それとも、今の俺じゃダメ?愛せない?」

ジンのその言葉に、胸にあったモヤモヤが一気に無くなり、視界が晴れたように、目の前がクリアに広がった。

本当、これだからジンは……。

「ダメなわけないじゃないか。俺はどんなジンでも愛してる」

「ん。俺も、どんなバルトでも愛してるよ」





お互い笑い合いながら目が合うと自然に距離が近付き、唇と唇が軽く重なる。

「ふふ……」

軽いキスがなんだか可笑しくて笑うと、微かに開いた隙間からバルトの舌が入り込み、俺の口内へ。

「んっ……」

舌が絡み合い、ぐるりと一周したかと思うとお互いの舌を軽く吸い、吸われ、深く浅くを繰り返す。ぴちゃぴちゃとキスの音と吐息が脳に響く。

「はっ……んっ……」

バルトの大きな手が俺の後頭部を支えながら、ゆっくりと後ろに倒れ、俺の体がベッド沈んだ。見上げるバルトの目が僅かだが躊躇しているように見えた。
俺は微笑しながら、バルトへ手を伸ばすと、バルトは伸ばした手を優しく掴み、ギラリとした熱っぽい瞳で俺を見つめた。バルトの雄の顔に、ズクンと俺の下の部分が反応し疼く。

「ん、バル、きて……」

バルトは俺の手の平をペロリとなめ、人差し指と中指の間の指間腔をねっとりとなめた。

「んっ……」

「はぁ……ジン、意味わかって言ってるのか?」

「ん、バルトと……繋がりたい」

バルトの目が大きく見開いたかと思うと、バシッと額を叩き天井を見上げた。

「っ!反則だろ、その顔」

俺、一体どんな顔しているんだろう?
両頬を触ってみるがいつも通り……だと思う。
はぁーとバルトが息を深く吐き出すと、俺を情欲的な熱い眼差しで見つめた。

「ジン、嫌がっても、止められないから」

「ん、嫌じゃないから……きて……」




























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