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しおりを挟む「……バルト」
そっと自分の唇をなぞりながら思い出すのは、数分前に俺に軽くキスをして帰っていったバルトの笑顔。
「さみしい……」
右耳に付けたピアスを触りながら寂しさをまぎらわす。本当はまだ一緒にいて欲しかった。でも、早く確認したいことがあったので、強引にバルトを早く帰すことにした。それは、城で起きたあの、暗く、冷たく、重い、ドロリとしたもののことだ。
久しぶりにステータス画面を思い浮かべ、ステータスを出す。
「ステータス・オープン」
俺の前に透明な板が映し出される。
名前 ジン・デルマルク
年齢 16
職業 治療師 魔法剣士
レベル 45
HP 6700
MP 450000
スキル 全属性魔法(火・水・風・土・光・闇)、無属性、武術(槍)、身体強化、隠密、範囲検索、異空間無限収納(前世での持ち物有)、家事全般、全言語理解
称号 バルトの最愛の人
愛し子(精霊王達に愛されし者)
ジンの魂を持つ者でメルゾーラの第一王子
召喚に巻き込まれし者
魔王の卵
「あっ、名前が変わってる」
アークの養子になったからかな?レベルも結構上がってるな。スキルは隠密と範囲検索が増えてる。
「称号……増えてる」
うわぁぁぁぁ!バルトの最愛の人ってある!恥ずかしい!……けど嬉しい。
ステータスに映し出されるということは、この世界の守り神であるマファーレ様に認められたということ、だとされている。そして、俺以外からもその称号を認めているという証拠。ということは、バルトのステータスにも映し出されているわけで……。
バルトのステータスにもきっと同じことが映し出されるんだろうな。うん、その通りだからいいんだけど、ちょっと気恥ずかしい。ん?そう言えば俺達って恋人同士なのかな?親友は通り過ぎている気がする。
んーと首を傾げていると、次の次の称号に目がいく。
「ん?何これ?」
メルゾーラの第一王子?何で?転生したから違うんだけど……うーん、わからないものはスルーしよう。
俺が今確認したいのは……。
「やっぱり……」
ステータスの最後の文字を見て、俺は目を細める。
魔王になりうる者から魔王の卵に変わっていた。
ぎゅっと拳を握りしめ、最悪な想像をした後、ふと思った。人より長く生きている精霊王なら何か知っているのではないかと。俺は魔力を練り、呼びたい精霊を頭に浮かべ名を呼ぶ。
「クロ、お願い、来て」
景色が歪み魔力を感じた瞬間、目の前に微かに笑いながら闇の精霊王クロが現れた。
『主に呼ばれて恐悦至極』
全身黒ずくめの闇の精霊王がふわりと俺の前に降りてきて、片膝をつき俺の指先にキスをした。
「クロ、コレなんの遊び?」
『ふふ、主は中々私達を呼んでくださらないから畏まってみた』
にっと笑うクロに俺は微笑しながら、頭をパチッと叩いた。
「クロ、俺、ちょっと怒ってるから、真面目にお願い」
『ジン、どうした?何を怒っている?』
軽く首を傾げるクロに、「ここに座って」とベッドをポンポン叩く。クロは俺の指示に従い座った。
「ん、まずは、ダンジョンではありがとう。助かった」
『礼には及ばん』
「ん。でね、クロ、バルトに精霊が見える魔法を掛けたよね?」
『あぁ、昔面白いから掛けてやった。それに、便利でよかろう』
「えっ、便利なの?」
『あぁ、精霊が見えるようになれば、力を貸す精霊が多くなり威力が増すからな』
へー、始めて知った。そう言えばバルト他の人より魔法の威力が強いっていってたな。
「そっか……じゃぁ、怒れないな」
『あいつは怒っていたか?』
「ううん、困ってたけど怒ってなかった」
『なら、よかろう?』
「そうだね。ん?いいのか?」
なんだかクロに丸め込まれた気がするけど気のせいか?
『それで、俺に用があるのだろ?』
ニヤッと笑うクロに、なんだか見透かされているみだと思うのは気のせいだろうか?
俺は、はぁーと息を吐き出して、クロに思いきって尋ねた。
「クロ、魔王って知ってる?」
『魔王か?知ってるぞ』
「えっ、知ってるの!」
驚いている俺にクロは更に爆弾発言をしてきた。
『あぁ、俺が知っている魔王はバルトだ」
「……は?」
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