【番外編中】巻き込まれ召喚でまさかの前世の世界だったので好きだった人に逢いに行こうと思います

白銀

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騎士祭、5日目。
今日は食祭と騎士灯の日である。
そんな日に俺はかしこまった格好をしていた。
高級生地を使った黒いジャケットに白いスラックス。ジャケットには金のボタンやチェーンアクセがじゃらじゃらと着いている。傍から見ても貴族の息子に見えるだろう。たぶん。

「はぁー」

部屋を見渡せば高そうな美術品や家具やらでソワソワする。別に悪いことをする訳じゃないのに……俺の目の前に高級な物を置かないでいただきたい。コワシタクナルヨ。まぁ、それはさておき。

「うー、何だか緊張してきた」

アークの袖を引っ張ったり、にぎにぎしながら緊張をほぐす。
あっ、皺になった。……見えないよな。
そっとシワを伸ばしていると、アークの手が俺の頭に乗っかった。

「ジン、似合ってるぞ」

「アーク、どうせ馬子にも衣装って言うんでしょ」

「ん、マゴニモイショウ?」

「あれ、これ、ないんだっけ?ごめん。これ、異世界のことわざ……って分かるのかな?名言?」

「あぁ、名言な。で、マゴニモイショウ、はどういう意味だ?」

「んー、確か、いい服を着ればそれなりに立派に見える、て意味だよ」

「それ、褒め言葉か?」

「ちがうよ、揶揄」

「つまらん名言だな、それ」

今アークといる場所はメルゾーラ城の控え室です。
朝早くからなぜかイーダが「衣装です」と貴族の坊っちゃんが着るような衣装を数着持ってきた。「着たくないんだけど」というと、「城ですよ、何があるか分からないので、着飾って、損はありません」と返された。そして、ささっと髪をカットしてセットされた。有能すぎるよ、イーダ。

「んー」

俺、窮屈なの嫌いなんだよな。
襟元に指を入れ、グイグイと引っ張っていると、ドアのノックと共に執事みたいな人が入ってきた。

「失礼致します。お時間になりましたのでお部屋へご案内致します」

執事についていくこと5分、大きな扉の前にきた。執事がノックをすると、中からガタイのいい男が出てきてチラリと見られた。

「よぅ、サバム」

アークが気軽に挨拶をしている。
知り合いかな?
アークの後ろからチラリと見ると、サバムと呼ばれた男はホワイトのマントを付けている。
第1騎士団か?それにしても、制服が違う。全身黒い制服だ。前世にはなかったな。その服装は見たことがない。

「アーク様、そちらが?」

「あぁ、そうだ。俺の息子で例の件の子だ」

じっと値踏みするような視線が嫌で、ささっとアークの背に隠れる。

「おぃ、そんなにジロジロ見るな」

「すみません、つい。小さ……16歳には見えなく」

今、小さいって言った!

「おぃ!早く入ってこい!」

奥から待ちきれないのかアーガンの声が聞こえた。
そう言えば、バルト来なかったな。
後ろを振り返っても人一人いない。
一緒に付いてきてくれるって言ってたのに……。
ちょっとブルーな気持ちを抱えつつ、アーガンがいる部屋に入っていった。






「よく来た」

高級衣装を纏い、オールバックの髪に冠を乗せている偉そうな、THE王様が高級ソファーに座っている。

「……誰?」

声がアーガンなのに色々違う。しかも、口は笑ってるのに目が笑ってない。
なんだろう?何か違和感がある……。
首を傾げているとアーガンが眉間に皺を寄せ大袈裟に声を上げる。

「おぃおぃ、忘れたのか?私だよ、アーガンだ」

「……」

不安になり、グイグイとアークの袖を引っ張る。

「ねぇ、アーク。あれ、本当にアーガン?」

「あぁ、そうだ……だが……」

「なんだか……」

いつもと全然違う……何て言うんだろ。雰囲気、いや、オーラー?が威圧的?

「そこにいつまでも立ってないで座れ。おい」

アーガンが偉そうに指示を出すと、執事がお茶を入れテーブルに置いた後お辞儀して出ていった。




アーガンに促されソファーに座る。左にアーク、右に俺。真正面はアーガン。そして、その左後ろに、眼鏡を掛けた水色髪の男性と、右後ろに赤髪赤目の騎士。

「まぁ、気軽にいこうぜ。まずは自己紹介からだな。私はアーガン・バリシ・メルゾーラ。この国の王をしている。後ろにいるのが……」

「宰相のスウェン・バルクールです」

「総騎士団長ザバム・スウェングだ」

えっ?スウェン?スウェング?
首を傾げているとアークが小声で笑いなが俺の頭をポンと叩いた。

「名前が似てるが親戚でもなんでもねぇぞ」

「おぃ、次はそっちだ」

「アーガン、今日は態度が悪くないか?」

「私はいつも通りだ。さっさとしろ」

腑に落ちない表情を浮かべながらも渋々アーガンの指示に従う。

「バクスギルドマスターのアーク・デルマルクだ」

「もう一個あるだろ」

「……アークサンダ・バリシ・メルゾーラ」

えっ!アークって、アークサンダって名前なの!
驚いているところにアーガンが無言で次はお前の番だと顎で指示し知らせる。

「あっ、えっと、異世界人で冒険者のジンです」

「異世界での名は?」

「……眞木夜見です。あっ、ヨミが名前です」

「へー、なぜ今までヨミと名乗らなかった?」

何この質問。召喚に関係あるの?
そっちから呼びつけて態度が悪すぎないか?召喚に全く関係ないアークでさえ最初に謝っていたのに……。アーガンは話を聞くつもりがあるのかな?何だかなぁ、王様ってどこも同じなんだな……。何だか冷めてきた。

「では、逆に質問しますが、王様は全く知らない場所に突然連れてこられて、何をされるかわからないのに本名を教えようと思いますか?」

俺が冷たい目でアーガンに言うと、ちょっと怯んだように目を泳がせる。

「そ、それは、しない、な」

「アーガン、何が言いたいんだ?」

「あー、いや……では、召喚の話を聞かせてほしい」

「わかりました」















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