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しおりを挟む「あー、アーク、なんだかごめんね」
「いや、いい」
拗ねてしまったアークのご機嫌伺いをしながら、いまだに笑っているバルトをバシバシと叩く。
「アーク、続きをお願いします」
俺が軽く頭を下げると、アークは溜め息をついた後、軽い調子で言った。
「アーガンはこの国の王だ。だから謁見するとなれば明日会うことになる」
へ?王って王様のことだよな?
「えっ、アーガン、王様なの!あのチャラチャラしたのが王様ってこの国ヤバくない?」
「ぷはっ、んん。大丈夫だ、王様をやっているアーガンはちゃんとしてるぞ」
「そう、なの?」
そう言えば前世で騎士の時、アーガンを城で何度も見たし、会っていたことを思い出す。
そうだよ、城で何度も会ったじゃないか。貴族の服を着崩したアーガンが、剣を持って俺に会いに来ては、「試合しようぜ」とやってきた。で、従者の人が……あっ、あれ、マイヤさんだ。そうだよマイヤさんがアーガンを回収していくのを何度も見た。だけど……。
「でも、王様を何度か見たけどアーガンじゃなかったよ。オールバックをした威厳のある上品な王様だった」
「あー、あれだ、うん。きっと王様スイッチが入っていたんだと思う。普段はチャラ……少しだらしないからな、俺もたまに別人に見えるよ。まぁ、話は戻るが、昨日……いや、その前に最初から話さないとダメだな……」
「何の話?」
「アーガンとアリサの話と、その後の話だ。話しても大丈夫そうか?」
ドクリとまた嫌な音。まるで、聞きたくないと心臓が叫んでいるような音だ。
でも、アークが俺に話すんだ。きっと大丈夫。ちょっと不安だけど。
今まで黙って隣にいたバルトが、ぎゅっと俺の手を握り心配そうに俺を見ている。
「ジン、無理しなくてもいい」
「ううん、大丈夫。真実を知りたいから……。でも、不安だから手を握っててくれる?」
「あぁ」
優しく笑うバルトに少し心が落ち着いてくる。
ん、大丈夫だ。
「アーク、お願いします」
アークが俺の返事に頷くとゆっくり語り始めた。
「先代の王の頃、次期王後継者は4人いた。腹違いの2人兄、そして、アーガンと俺だ。2人の兄は日々王位継承を争い、俺とアーガンは王位に興味がなく関係ないと傍観してたある日、次兄が兄弟達の食事に毒を盛った。運悪く長兄が死に、俺達2人は何とか生き残ったが、その後も次兄に何度も命を狙われるようになった。王は俺らが何しようとも達観。俺達は自分の命を守るため行動を開始した。俺は王位継承を放棄し冒険者に、アーガンはチャ……軽薄な人を演じながら次兄の補佐になった。俺が冒険者になって1年後のことだ。アーガンは仕事をさぼる名目に、街にいる俺に会いに来る途中のことだった……」
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あまりアーガンにいい印象を持っていなかったアリサだったが、アーガンと幾度のデートを重ねる内にだんだんと絆され恋人同士に。生まれて初めて恋人との楽しい日々を過ごしていたアーガンは……油断していた。
突然、次兄から「他国と戦争するから戦ってこい」と言われ、アリサと半年間以上離れることになった。
アーガンは、「必ず帰ってくるから待っていてほしい」と、アリサに言うと彼女からは「もちろんずっと待ってるわ」と返事をもらった。だが、半年後全てが終わって帰った時、アリサはいなくなっていた。アリサの家族に尋ねると、「誰の子かわからない男の子供を産んでいなくなった」と言われ、アーガンはかなりショックを受けたらしい。
だが、アーガンは、アリサがいなくなったことが信じられず、独自の情報部を使い調べると、その子供はアーガンとアリサの子供だとわかった。産婆さんが保管している契約書類の親欄にアーガンの名前があったそうだ。
アーガンは嬉しさと同時に、では、なぜアリサがいなくなったのかが不思議だった。きっとなにかあったはずだと、情報部だけでは足りず暗部を使って調べ始めた。
最初は街中を探したが手がかりが全く、次にアリサがいなくなった前後にこの街を出ていった馬車を1つ1つ調べていった。
門番に密偵を送って分かったことが1つ。次兄の命令で隣の国ガイヤードルの馬車は検問しないで通れるようになっていた。おかしいと気付いたアーガンは内密に次兄を調べ始めた結果……。
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