【番外編中】巻き込まれ召喚でまさかの前世の世界だったので好きだった人に逢いに行こうと思います

白銀

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ジンがキッチンに行くと俺達の間に沈黙が訪れる。静まり返る中、最初に口を開いたのはアークだった。

「……で、バルト、どう言うことだ?なぜジンが酒を飲んでる?なぜ、お前の膝に座っていた?なぜ、お前はここにいる?」

目をこれでもかと見開き俺を見てくるアークに少々危機感を感じる。
質問が多すぎて怖。

「説明します。俺は午後から休みを頂きまして……」

「簡潔に」

「……はい。墓石で酒を飲んで酔っているジンを保護しまして、しばらく雑談した後、晩御飯の時間になり、今に至ります」

「墓石で酒?……わかった、ご苦労。明日も仕事だろう、早く帰れ」

無表情のまま早口で淡々と言うアークに顔がひきつる。「用事は終わっただろう、早くここから消えろ」と言う副音声が聞こえてきそうだ。
なんだかなーと思いつつ、ジンのことが気になる。

「あー、でも……」

「何かあるのか?」

アークが帰ってくる前のことだ。ジンから「ジンの生まれ変わりだと、今日アークにも話したい。どうしたらいい?」と相談された。
アークが後で知ったら色々うるさそうなので、言うことには賛成だが、信じてくれるかどうか……。まぁ、アークはジンのことを可愛がってるし大丈夫だと思うが、ジンには傷付いて欲しくない。

「なーに眉間に皺寄せて難しいこと考えてんだ?」

「あーいやー、ジンがアークに言いたいことがあるらしく……」

「俺にか?」

「はい。で、俺からお願いがあるんです」

真っ直ぐ偽りのない瞳でアークを見ると、アークもそれに答えるように俺を見た。視線が合うこと5秒、アークが口を開く。

「何だ、言ってみろ」

「ジンがもし、信じ難いことを言ったとしても否定しないでやってください。お願いします!」

ガバッと頭を下げ、アークの返事を待った。
数秒後、はぁーと頭上からため息が聞こえ、頭にぽんと手が置かれた。

「よくわからんがわかった。約束しよう」

顔を上げると珍しく俺に向かって優しく笑うアークが目に入ってきた。
驚いたな、アークが……。

「笑って……怖」

一瞬にしてアークの笑顔が消え、ゴンッと手拳が落ちてきた。

「いってー!」

マジで痛い!まるで、剣の反対側で殴られたような痛さだ。本当アークは俺に容赦ねぇな!この魔王め!

「ん、何か言ったか?」

「いえ、何も」

たまに思う。アークって読心術ができるんじゃないかって。

「できないぞ」

「何も言ってないんですが!」

怖!!






「お待たせー、からんあげの残りとサラダに俺んちスープだよ」

からんあげとはカラバンカの唐揚げ。ちなみにカラバンカは大きなニワトリの魔物です。

「おぉ!美味しそうだな」

「でしょう。美味しいお酒もあるよ」

バルトの隣に座り、インベントリから今日買った酒を取り出す。

「ありがとな。でも、ジンは飲んだらダメだぞ」

「えっ、ダメ、なの?」

うるうる攻撃が来るとわかったアークが俺の目を片手で塞ぐ。

「ダメなもんはダメだ!大きくなれないぞ」

チッ、それを言われたらしょうがない。今回は諦めるか。

「いただきます。ん、うまい!」

「よかった。お酒注ぐね」

「さんきゅー」

お酒を入れてると、アークがスープを飲んで目を丸くしているのが見えた。

「これは……」

「どう?美味しいでしょ!」

「あっ、あぁ……」

「久しぶりに作って不安だったけど、よかった」

「……」

その後無言でスープを飲むアークに、どうか気付いてくれますように、と期待しつつ、バルトにお酒を注いだ。
しばらく3人で和気あいあいとおしゃべりをした後、アークが「そうそう」と話し始める。

「ジン、王との謁見が決まった。嫌なら断ることができるがどうする?」

「えっ?何のこと?」

「ジンが召喚された異世界人だって話だ」

「はっ?」

目を丸くし俺を見るバルトに俺は首を傾げる。

「あれ?バルトに言ってなかったっけ?」

「あー、言ってなかったのか?てっきり知ってるかと……すまん」

片手を立ててゴメンと謝るアークに、俺はいいよーと片手を軽く振った。

「ジン」

ポンと片肩にバルトの手の重みがずしりとのしかかる。心なしか魔力が含まれてるような……。

「詳しく、話してくれるよな?」

「あっ、はい」

アークに話したことをそのまま話すと、バルトが無言で椅子から立ち上がり、真顔で俺をじっと見つめた。なんだか少し怒ってるぽい?

「ジン、ちょっと待ってろ。あの国を滅ぼしてくる」

「ちょっと待って!」

今にも飛び出しそうなバルトにガシッとしがみつきながら、「アーク!」と助けを求めるが、アークは腕を組みながら、うんうんと頷いている。

「俺も手伝おうか?」

「お願いします」

「ダメだからね!」

この2人、意気投合したらダメなやつ!

















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