【番外編中】巻き込まれ召喚でまさかの前世の世界だったので好きだった人に逢いに行こうと思います

白銀

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暫くお互いに抱き合っていると少し気持ちが落ち着いてきた。涙をバルトの服で拭くようにグリグリと押しつける。そんな俺の行動が可笑しかったのか、バルトが「ふはは」と笑った。

「……なぁ、ジン。俺達が出会った頃のこと覚えてるか?」

「……ん」

「俺、あの頃自分の強さに自惚れててさ、魔物なんて全て倒してやる!て、いきがってた。……あの頃の俺を殴りたい……」

はぁーと深いため息をつきながら、甘えるように俺の頭に頬をスリスリと寄せてきたので、手を伸ばしよしよしと頭を撫でる。バルトはそんな俺の行動が嬉しかったのかぎゅっと強く抱き締めた。

「あの森で……歯が立たない魔物に会って、戦うことができない自分が、逃げることしかできない自分が、本当に情けなくて悔しかった。無謀だったんだよな。いくら父上に認められたかったからって、準備もなしに行って魔物は狩れるものじゃなかった。……あの時、ジン達に出会わなければ確実に死んでたよ。今さらだけど、本当にありがとう」

「ん、どういたしまして」

お互い目を合わせ、ついおかしくて笑った。

「ジン、まだ、話す時間はあるか?」

「ん、あるよ。バルトは?」

「俺も大丈夫だ。今日は午後から休みを取ったんだ……そうだな、あそこのベンチで話さないか?」

キョロキョロと見渡した後、100メート先のベンチを指差すバルトに頷き、自然と手を引かれ歩き出す。

「そう言えば、あの時、俺が助けられて気絶する前だったかな……アークに俺を飼っていいか?みたいなこと言ってなかったか?」

「あー、言った。俺が助けたから責任もって飼わなきゃって思ったんだよ」

「俺はペットかよ!」

「仕方なかったんだって!前の俺は、人間を飼っちゃいけないなんて知らなかったんだよ」

「……それは」

「ほら、バルトには話したじゃん、糞義理の兄弟から、『お前を飼ってやってるんだ。ありがたいと思え』、てよく言われてたから、人間を飼うことがダメだということを知らなかったんだ」

「ジン……」

バルトが握っていた手をギュッと強く握りしめ、無表情で俺を見つめた。

「そいつらの居場所を教えてくれ。いまから、殺ってくる」

目がマジだ。これは本気で止めないとヤバイ!

「いや!今はいいよ!大丈夫!そんなことよりもっと話そう、ねっ」

渋々頷くバルトだったが納得のいかない表情をしてた。
ベンチにつくと繋いでいた手を離し、パッパッと座る場所を手で払いハンカチを敷いた。

「ジン、座って……って何だその目」

「ん、バル、大人になったね」

「そりゃ、どういう意味だ?」

怪訝な表情で俺を見る目がちょっと怖い気がするが、気にしない。あのヤンチャなバルトが!紳士になったね。すごい!うん、うん。






ベンチに座るとちょっと離れた場所で2人の子供達が追いかけっこをして遊んでいた。バルトはそれを懐かしそうに見つめている。

「昔の俺達を見るようだな……」

「そうだね」

「……俺さ、ジンと出会う前、性格悪かったんだ」

「知ってる。俺様だったよね」

「うぐっ!」

「でも、バルトは皆に優しかったよ。屋敷の人が、しょうがないですね、って温かい目で見てた」

「そう、なのか……俺は嫌われているのかと……。ジンと毎日一緒に遊んで、勉強するようになって性格が変わったから皆優しくなったんだと思ってた……」

「俺はどっちのバルトでも好きだったよ。たまに困ることもあったけど、バルトだから、楽しいから、まぁいっかって。友達もそう思ってたんじゃないかな?」

「それはないな。表面上の友達は俺の機嫌を取るばかりだった。対等で、心から一緒にいて楽しいと思ったのはジンだけだった。あの頃は本当、楽しかったな……」

「ん、俺も楽しかったよ」

親同士が親友なのをきっかけに、一緒に遊び始めた俺達は自然と友達になった。一緒に遊んで、勉強して、剣や魔法の練習をしたり、毎日が充実してた。
あの頃はバルトと会わない日はないというぐらい一緒にいた。だからだろうか、お互いになくてはならない存在になっていた。切磋琢磨と言われればそうなのかもしれない。俺とバルトはメキメキと強くなっていった。が、いつの間にかバルトと俺の差が開いていき、バルトの方が強くなったけど。
うん、きっと体格だと思う。1歳差だというのにすでに身長や体つきが全然違ったから。

「一緒に馬鹿なこともしたよな」

「でも、いつも怒られるのはバルだった」

「本当!おかしいよな、俺だけ怒られてジンは怒られねーんだから」

「ん、バルの日頃の行い。自業自得」

「ジン、相変わらず、つめたいな!」

2人して目を合わせ笑った。

「バルト、あのバカ貴族家ぶっ壊し事件覚えてる?」

「ふはっ、すごいネーミングだな。でも、それを聞いてわかる俺も俺だが」

「だって、そんな感じだった」

「確かに」

「あの時、バルトが助けに来てくれなきゃ俺……危なかった」

とある少女連続誘拐事件を解決しようと、俺が女装し犯人を騙し捕まえようと言う作戦だったが、不意なことが起こり俺が拉致られ捕まってしまった。
犯人にベッドに押さえつけられ、俺が男とバレたのにも関わらず続行。もちろん抵抗しようと魔法を使おうとしたが、部屋に魔法無効の魔石が置かれてあり魔法が使えなかった。
もうダメだ!と思った時、ドーンという大きな音と「ジーン!」と俺を呼ぶ大きな声と共に、バルトが部屋に乗り込んできた。
俺の泣き顔と乱れた姿を見たバルトが怒り狂い、「ふざけんじゃぁねぇ!変態が!」と犯人をボコボコにした。家を半壊させ、犯人をボコボコにし、捕まった俺と少女達を助けたバルトは、ヒーローのようにお咎めなし……とはならず、アークとニルクからめちゃくちゃ怒られた。俺も珍しく怒られて1ヶ月の自宅謹慎を食らったっけ。でも意外と快適に過ごせたのは、きっとアークが俺に甘すぎたんだろうな。そう言えば、アークも俺のされたことを知って、バカ貴族の家をぶっ壊しに行ったっけ……今になっては笑える話だ。うん。

「あの時本当に間に合って、いや、俺的に間に合ってねぇけど、俺の馬鹿げた作戦でジンを大変な目に合わせたこと、今でも後悔している……すまん!」

「バル、俺は気にしてないよ。危なかったけどバルが助けに来てくれたから」

そう、この時だ。俺はバルトを恋愛感情として好きだということに気がついたんだ……。

「バルト、あの時、かっこよかった。俺を助けに来てくれてありがとう」

「あぁ、なんだか照れるな」















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