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しおりを挟むチュンチュンと鳥の声が聞こえる。太陽の光がカーテンの隙間から微かに差し、目蓋に当たる。
眩しい……。
コンコンとドアのノックが聞こえ、目を擦る。
「ん……」
「ジンさん、失礼します」
ドアの開ける音がし、足音と共にいい匂いが漂う。
「ご飯を用意した、のですが、食べれますか?」
重たい体を何とかして起こすと、イーダがお粥を持って来てくれていた。
「おはよう、イーダ」
「おはよう、ございます、と言いたいところですが、もう、お昼を過ぎてます」
「えっ!今何時!」
「20時、です」
おやつの時間!思いっきり寝てた……ん?俺、いつ帰ったけ?記憶が……。
「ところで、ジンさん。服のボタンは、ちゃんとしめたほうが、いいかと」
「へ?」
「油断は、大敵かと。悪い虫に、食われるので、お気をつけください」
トントンと鎖骨辺りを叩くイーダに不思議に思いながら、視線を下に向ける。
何か赤い点々が数ヶ所付いていた。歯形?ぽいのもある。虫に食われた?……でも、痒くないしそんなに痛く……。
「あぁぁぁー!」
思い出した……全て終わった後に怒っているバルトに抱えられ……部屋でキスされ……性行為まがいなことをされた!絶対バルトだ!
「あぁぁぁぁぁー」
グシャグシャと髪を掻き回し、うずくまる。
「ジンさん、大丈夫、ですか?」
「うぅぅぅ、たぶん、うん」
次会ったとき、どう接すれば……。まぁ、今考えても仕方がないか……。
「イーダさん」
「先ほどのように、イーダ、とお呼びください」
「えっ、でも……」
「お呼び、ください」
「はい」
無表情の圧で負けました。
イーダのご飯を美味しく食べた後、アークが呼んでいるというので、ギルマス室へ行った。
「失礼しまーす。アーク……大丈夫?」
ドアを開けると机に伏せピクリとも動かないアークがいた。
ギギギと効果音がつきそうな感じでアークの首が曲がり、こちらを見る。
うわー、その顔は寝てないな。
「よぉぉぉ、ジン、こんな時間に出勤とは、いいご身分だな」
「えっ、俺、冒険者だから自由じゃん」
「わかってるわ!嫌みだ!説教したかったがこれでチャラにしてやる!……とまぁ、冗談はさておき……」
アークが急に立ち上がり、真面目な顔になったので反射的に背筋を伸ばす。
「昨日は助かった。国を代表して礼を言う」
深く頭を下げるアークに慌てて両手と首を振る。
「俺はやれることをしたまでだから、礼なんていいよ」
「いや、実際ジンのお陰でスタンピードが短時間で終わり、死者がでなかった。ありがとう」
「でも、俺、特に……」
「こういう時は、どういたしまして。でいいんだ」
ニヤッと笑うアークに、俺は照れながら答える。
「ん、どういたしまして」
「あぁ、そうだ、のちにギルドと国からの報酬金がでるからな。期待しとけ」
マジで!やったー!お金大事!
「それとな、今回のスタンピードのことは国民に知らせていない。しゃべるなよ。それを含めての国からの報酬だからな」
おふ、お口にチェックですね。わかりました。
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