上 下
55 / 111

54

しおりを挟む


深呼吸を何度か繰り返した後、頭上にある魔力の塊に近付くよう数十歩前に出る。集中して光魔力を手の平に集め、光の塊へ放った。
数分後、光魔力を当て続けながら、ふと、もっと効率のいいやり方はないかなと考える。
そう言えばサザンさんが、俺の光魔法で攻撃しても吸収されるって言ってたな。
光で思い出すのは太陽や雷。
太陽ってどうやて出来たんだっけ?確か水素やヘリウムなどの元素や微小な塵粒子からできた分子雲の中で重力が働いて、いろんなものが集まって核融合反応が起こるようになったから、だったんだよな?
えっ、なんかちょっとやばそうだな。却下。
じゃぁ、雷の光はどうだったけ?
上にある氷と粒と下の氷の粒がぶつかることで静電気が出来て、その電気が曇の中で溜まっていって、雲が溜めきれなくなった電気を地面に逃がすときに出来るんだよな。で、雲から放出された電気の通り道が超高温になることによって光るっと。
あれ、そういえば、光魔法って光エネルギーなのか?
うむ、色々考えたけど、俺には難しい。なら、イメージして魔法を作った方が早いか。
光魔力を放ったまま、MPポーションを2つほど飲み魔力を回復。さて、やってみるかと思っていた所に、突然声が聞こえてきた。

『ちょっと、待て』

低音ボイスにピクリと肩が跳ねる。

『クロ、ジンがびっくりしちゃうから急に声をかけちゃダメよ』

優しい声と共に何もない所から現れたのは、全身黒の服を纏った黒色の長髪と瞳のイケメン男性と、全身白の服を纏った金色の長髪と瞳の優しそうな綺麗な女性。

「クロ!シロ!」

闇の精霊王のクロと光の精霊王のシロだ。前世で水の精霊王ベルと暮らしていた時に仲良くなった精霊王達。ちなみに名前は俺がつけた。クロは契約できたが、シロはできなかった。だが、シロから『どうして私だけ!』と泣かれ「仮名なら」とつけた。

『久しぶりだなジン』

『会いたかったわよ、ジン』

クロとシロからふわりと抱き締められ、思わず魔力が弱まる。

『ダメよジン。魔力はそのままに』

シロに言われ、慌てて魔力を保つ。

『今止めると闇が弱ったとこから溢れ出すぞ。魔物と一緒にな』

クロにも言われ、気合いをいれた。






『いいか、よく聞け。ジンが囲っている黒いものは闇魔力の塊だ。スタンピードは殺された魔物の負の感情と、人間が使った全ての魔力の残りが混ざりあってできている。闇魔力は全ての魔力の集まりでできているからな』

ん?あれ、今大事なことをさらっと言ったような……。

『いいか、それを小さく出来るのは、大量の光魔力が必要だ』

「小さく?完全には消えないの?」

『えぇ、闇魔力を完全に消すことはできないわ。闇は光。光は闇だから。2つで1つなの。私達のようにね』

クロとシロは仲がいいもんね。納得。

『消すことはできないけど、目立たないように小さくすることが出来るわ』

『ジン、俺達が力を貸そう』

「クロ、シロ、ありがとう」

『ふふ、いい、今からジンの最高の光魔法を放ってちょうだい。そしたら、私がジンの光魔法を増加させるわ。それを当てれば闇魔力の塊が小さくなるはず』

『そこに、闇魔力と光魔力で作った糸で小さくする』

「俺が作るの?」

『そうだ。簡単だから、その時に教えよう。あぁ、一つ注意がある。完全に閉じるとダンジョンがなくなるからな。次にダンジョンを拝めるのは数百年後だ』

うむ、それはバクスにとって損害になる。責任重大だな。はぁー、できるかな俺。

『ジン、心配しないで。失敗してもジンだけは絶対守るから』

「俺だけ?」

『あぁ、俺達はもう、あの時のようにジンに命令されても、他の人間は守らないことにした』

『もう、突然ジンがいなくなるのは嫌……』

眉間に皺を寄せるクロ、悲しそうに目に涙を溜めているシロ。
精霊は基本、人のする事に興味がない。感心があるものだけに興味を示す。
俺は愛し子だったから……。だからこそ俺はあの時、最後の日に、精霊王達にお願いではなく、命令を出したんだ。『俺ではなく、皆を守れ』と。愛し子の命令は絶対だ。契約できなかった精霊王達も仮でも、唯一無二の名前を授けたからこそ、俺の命令を聞いてくれた。
本当は命令なんてしたくなかった。俺の友達に……。
なのに、そんな俺をまた守りたいと言ってくれている。

「そんな守ってもらう資格はないのに……」

『ジン、そんな悲しいこと言わないで……』

『俺達が』

『私達が守りたいと、一緒にいたいと思うのは』

『『ジンー愛し子ーだけだから』』

「クロ……シロ……ありがとう。俺もだよ。また、友達になってくれる?」

2人は笑って頷くと、優しく俺の頭を撫でた。

『ジンに光の加護を』

『ジンに闇の加護を』

チュッと右頬にシロから、左頬にクロから、キスをされ、ふわりと暖かい何かが全身を包み込む。俺の魔力とシロとクロの力が混ざり合い一つになっていくのを感じた。

『全力でやるといい』

『私達がフォローするわ』

「……クロ、シロありがとう」

よしっと気合いを入れて光魔力を過去最大に練り魔法を放つ。

「『閃光波動・超最大』」

『いくわよー』















しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。 お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

BL
公爵家の長女、アイリス 国で一番と言われる第一王子の妻で、周りからは“悪女”と呼ばれている それが「私」……いや、 それが今の「僕」 僕は10年前の事故で行方不明になった姉の代わりに、愛する人の元へ嫁ぐ 前世にプレイしていた乙女ゲームの世界のバグになった僕は、僕の2回目の人生を狂わせた実父である公爵へと復讐を決意する 復讐を遂げるまではなんとか男である事を隠して生き延び、そして、僕の死刑の時には公爵を道連れにする そう思った矢先に、夫の弟である第二王子に正体がバレてしまい……⁉︎ 切なく甘い新感覚転生BL! 下記の内容を含みます ・差別表現 ・嘔吐 ・座薬 ・R-18❇︎ 130話少し前のエリーサイド小説も投稿しています。(百合) 《イラスト》黒咲留時(@kurosaki_writer) ※流血表現、死ネタを含みます ※誤字脱字は教えて頂けると嬉しいです ※感想なども頂けると跳んで喜びます! ※恋愛描写は少なめですが、終盤に詰め込む予定です ※若干の百合要素を含みます

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

俺の婚約者は、頭の中がお花畑

ぽんちゃん
BL
 完璧を目指すエレンには、のほほんとした子犬のような婚約者のオリバーがいた。十三年間オリバーの尻拭いをしてきたエレンだったが、オリバーは平民の子に恋をする。婚約破棄をして欲しいとお願いされて、快諾したエレンだったが……  「頼む、一緒に父上を説得してくれないか?」    頭の中がお花畑の婚約者と、浮気相手である平民の少年との結婚を認めてもらう為に、なぜかエレンがオリバーの父親を説得することになる。  

処理中です...