【番外編中】巻き込まれ召喚でまさかの前世の世界だったので好きだった人に逢いに行こうと思います

白銀

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アークとバルトに状態異常封印が後5分で切れると伝えた後、地面を蹴りケルベロスに近付くと、魔力を纏った槍で頭を叩いた。するとケルベロスは怒って口をパカッと開けるが、何も出てこない。ケルベロスは不思議に思ったのか、もう一度口を閉じパカッと開ける。ケルベロスは何も出てこない口を開けたまま停止している。
ん、じゃあ、遠慮なく。

「『火炎弾・圧縮』」

小さな炎がケルベロスの口に入っていくのを確認し、素早く跳躍しその場を離れた。

「『火炎弾・爆破』」

バンッと爆発がおき1つの頭が首からダラリとぶら下がる。

「第2・第3、今のうちに頭を氷漬けにして思い切り叩き切れ!」

「「了解!」」

バルトの声で、第2・第3騎士団が動き出す。

「第1、補助しながら蛇は丸焼きにしろ!お前らは各自暴れてやれ!」

「「御意」」

「「おぅぅぅ!」」

アークの指示で騎士団達が動き出し、冒険者達が声を上げながら飛び出していく。
攻撃を喰らわし、その光景を見ながら、空中でくるりと一回転した後、地面に綺麗に着地。

「……えっ、もう俺の活躍の場なくねぇ?」

まだ、戦略が5通りほどあったんだけど……。






数分後、全て倒しきりました。
うぉぉぉぉぉぉ!と雄叫びの声がフロア内に響いた。
数分後落ち着くと、アークの指示が飛ぶ。

「まだ、終わってねぇぞ!まずは怪我人の確認だ!治療ができるやつ、ポーション飲んで半分は部屋の外で待機!残り半分は動かせない怪我人の治療を。その他のやつらは動ける怪我人を部屋の外へ運べ!残りのやつは早くこの部屋から一時退避だ!」

チラリと頭上の塊を気にしながら、慌ただしく動くアークを横目に、俺は深く息を吐き出した。
俺、体力低いのにめっちゃ頑張ったー。体が重い……休みたい。でも、まだ、やることがある。
頭上に浮かんでいる白い塊……正確には闇魔力の塊を包む光魔力をじっと見つめた。
若干だが小さくなった気がする。このまま光魔力を当て続けたら消えるかな?それとも、爆発させるか?順番に試せばいいか。
よし、やってみようと思っていたら、背後からガバッと抱きつかれた。ふわりと懐かしい香りが鼻をくすぐる。太陽のような優しいこの匂いは……バルトだ。

「ジン……」

声の方向へ顔を上げると、目を潤ませながら俺を見つめるバルトがいた。

「バルト、さん?」

「バルトでいい」

「え?」

「バルトでも、バルでも、好きに呼んでくれていい」

バルトは目を細めながら愛おしそうに優しく微笑む。
あぁ、俺の知ってるバルトの顔だ。
嬉しくなってくるりと半回転し、バルトと向かい合わせになった後、腰にぎゅっと抱きついた。

「ん、バル」

「ジン……」

ぎゅっと、丁度よい強さで抱き締め返された。
あー、心がポカポカする。
バルトの腕のなかでほわほわしているとポンと肩を叩かれた。

「ジン」

アークの声だ。振り向くと、笑っているのに目が笑っていない。
あれ、この顔、知ってる。説教する気だ。

「あーあー、皆すごかったね。アークもカッコよかったよ。今度剣教えてほしいな」

「そうかカッコよかったか、ありがとうな。あぁ、いいぞー、色々教えてやる。……1からなぁ」

うほぉぉぉ!目が怖いんですけどぉぉぉ!
ちょっと泣きたくなっていると、背後にいたバルトがよしよしと俺の頭を撫でる。

「大丈夫だ。怖くないぞ。あれはアークの通常運転の顔だ」

「バルトぉー」

口角をピクピクさせ、こめかみに青筋を浮かべるアークとそれを無表情で見守る第1・第2騎士団。そして、「団長が笑ってる」「嘘だろ……」「ひぃっ」と驚愕する第3騎士団。「あれ、第3の団長じゃねぇ?」「ギルマスもいるぞ」「修羅場か?」「おもしれぇ、賭けようぜ」と他にも退避しないで俺達を楽しそうに見ている人達。
カオス。

「……お前らうるせぇぞ!この部屋から退避しろと言っただろうが!」

鶴のひと声で皆散り散りになって去っていった。










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