【番外編中】巻き込まれ召喚でまさかの前世の世界だったので好きだった人に逢いに行こうと思います

白銀

文字の大きさ
上 下
44 / 115

43

しおりを挟む


当惑していると、急に肩から頭が離れた。そして、肩を引っ張られたかと思うと、くるりとアークの方向へ振り向かされ、俺は驚いた。
アークが片足を地面につき、真面目な表情で俺を見ていた。アークは数秒見つめた後、両手を優しく握るとニッと楽しそうに笑った。

「ジン、俺の息子にならないか?絶対に後悔はさせない」

「……俺が、アークさんの、息子に?」

また、アークと家族になれる……それは、嬉しい。でも、俺なんかが、また息子になってもいいのか?アークにまた迷惑をかけてしまうのではないか。それに、前世の時みたいに先に死んで悲しませるかもしれない……。
ぎゅっと目をつぶり、無言のまま俯いていると、ぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。

「俺としてはすぐにでも頷いて欲しいが、ジンにも色々あるだろう。すぐに返事はしなくていいから、頭の片隅にでも置いといてくれ」

「どうして、俺なんかに……」

ポツリと思っていた言葉が音に出る。
アークが握っていた手を離したかと思うと、立ち上がり両手で俺の頬を優しく包み込む。
自然と互いに目が合い、真っ直ぐな瞳に見つめられ、俺の目が泳ぐ。

「ジン、俺を見ろ。いいか、俺なんか、なんて卑下するな。俺はジンだから家族になりたいんだ」

「……でも、俺には価値なんて、ない」

「価値なんてもんは個人の思想だろうが。ジンが、自分には価値がないと思っていても、俺にとっては、ジンがこうして生きているだけでも価値があるんだ。価値がねぇなんて思うのは、俺にも、ジンを必要としてる奴にも、失礼だろうが。それにな、価値観つぅのは生きていく中で少しずつ変わっていくもんだ。価値がねぇと思ってんなら、変わればいい。変わりたいが変われねぇなら、ジンが変われるまで俺が側にいて手伝ってやる」

アークの強い眼差しに、言葉に、目が涙で滲んでいく。

「ジンの全てを受け止めてやる。だから安心して俺の息子になれ!」

あぁ、アークのこの瞳は、言葉は、嘘じゃない。本気で言ってくれている。……でも、だからこそ、聞いてみたい。

「ねぇ、アークさん。……どうして、俺を息子にしたいと思ったの?理由を、教えて」

「んー、理由か……。そうだな、前に言ったことがあるが、ジンが心配でほっとけないんだ。確かにジンは息子に似てる。顔じゃなく、ふとした仕草や雰囲気がな。でも、だからと言ってジンの代わりじゃないぞ。ジンと一緒にいたいと、俺のここが、心がそう言っている。それじゃダメか?」

グーにした片手で胸をトントンと叩いた後、愛おしそうに見つめるアークの瞳に俺が写る。

……あぁ、俺、笑ってる。嬉しいんだ。
答えは、もう、出てる。

「ダメ、じゃない。俺を、アークさんの息子にしてくれますか?」

「あぁ!ジン、大歓迎だ」














しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる

木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8) 和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。 この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか? 鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。 もうすぐ主人公が転校してくる。 僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。 これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。 片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される

田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた! なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。 婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?! 従者×悪役令息

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

処理中です...