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しおりを挟むでは、なぜ、ニルクが俺に冷たく厳しく当たったのか。理由はその少年が黒髪だったこと、そして、その少年は周りからずいぶんとチヤホヤと甘やかされていたらしく、それが、俺と重なって見えたのではないかとバルトが教えてくれた。
そうか、そんなことがあったんだな。でも、だからって……。
「父が言ったことやったことは完全に八つ当たりだ。本当にすまない」
そうだよね、八つ当たりだよね。でも、怒る気になれないな……。本当のニルクを知ってるからかな。
それに、俺がダンジョンに入れば時短になるのは本当だ。少しずつ魔物を通して戦えば無駄な人数も戦力もいらないし、被害も少ないだろう。俺ってば魔力量が多いし、治癒魔法も使えるから、色々便利だよね。よし!
俺は決心すると、バルトに向かってにっこりと笑った。
「俺、決めた!参加する!」
「えっ?」
「本当に、いいのか?」
皆が準備で慌ただしい中、ニルクが俺と話したいと言ってきたので隅っこに移動してすぐ、俺にそう問いかけてきた。
先程とは打って変わって眉間に皺を寄せ、心配そうに俺の顔を窺うニルク。どうやらあれから、冷静になり、反省したらしい。昔みたいに目が優しいのが証拠だ。
「大丈夫ですよ。俺、怪我したら治療魔法が使えるし、危なくなったら攻撃魔法も防御魔法も使えますから」
「でも、な……」
「魔力だって人より断然多いですし、色々役に立ってみせますよ」
「っ……下手したら、死ぬかも、知れないんだぞ。親御さんだって……」
ギリっと奥歯を噛み締め、俯くニルクの手をそっと優しく包み込む。
「ニルクさん、俺がここで死ぬのなら、俺の命はここまでの運命だったってことですよ。それに、俺が死んでも、悲しむ人なんていませんから」
俺は大丈夫ですよという意味でにっこり笑ったが、ニルクは大きく目を見張り息を飲む。
「っ!……悪い、俺、バカだ。違うと、分かってたのに……」
ニルクは今にも泣きそうな表情で、ぐしゃりと前髪をかきあげた。
どうしていいか反応に困っていると、後ろからガバッと抱き締められた。ふわり清潔感のある石鹸の匂いが鼻をくすぐる。
ぎゅっと強く抱き締められ、肩に顔をうずめているので、後ろを振り向けない。
でも、この匂いは……。
「アークさん?」
「……ジンが死んだら、俺は泣くぞ。泣いて泣いて食事が喉が通らず、仕事も手に付かず、一日中ほうけて生きていく。ジンは、俺を苦しめたいのか?」
「アークさん、大袈裟だよ」
「大袈裟じゃない。出会って日は浅いが、俺はジンを大切だと、愛おしいと思っている。息子にしたいぐらいにな」
肩に顔をうずめているせいで、アークの表情が読めない。冗談なのか、そうではないのかが……。
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