上 下
34 / 111

33

しおりを挟む


「薬草採集終わりー」

依頼用と自分用のポーションを作るための薬草をインベントリへと入れた。
同じ姿勢で作業していたため、両手を上げ、体を伸ばす。

「うー、はぁー。今日は天気悪いな……」

採集前はカラリと晴れていたのにいつの間にか空が曇り、薄暗い。

「雨でも降るかな?急いで帰っ!!」

ピリリッと肌に何かを感じた瞬間、反射的に後ろに跳び跳ねた。

「何だ……これ……魔力か……」

森の奥から大きな魔力の塊を感じ、鳥肌が立つ。脳内が、逃げろ!と警告してくる中、その場に留まり戦闘態勢に入った。その数秒後ぶわりっと黒い何かが溢れでてきたのを目にした。

「これ……スタンピードの……予兆……」

冒険者時代、一度経験したことがある。あの時はもっと魔力が弱かったが、間違いない。スタンピードの予兆だ。
たらりと汗が流れ落ちる。
どうする……一度様子を見に行くか。まだ少しは時間の余裕があるはず。
身体強化を全身にかけ、腰に着けてあるポシェットにポーションを補充し、槍を持つ。
警戒しながら森の奥へ数分後、ダンジョンらしき岩の入口があった。
そこからちょっと離れた場所に、数十名怪我をし、倒れこんでいる人がいた。前世では使ったことがないが、光魔法を持っている今なら使えるはず。
急いで駆け寄り倒れている人に光の治癒魔法を掛けた。




「すまん、助かった」

ダンジョンの受付兼見張りの人が、何とか木を背にして起き上がる。

「ダンジョンで何があったんですか?」

「あぁ、それが、ダンジョンにいるはずのない魔物、バジリスクが出たんだ」

バジリスク……蛇の姿した鳥みたいな魔物だ。毒をもっていて目を合わせると石化する、ランクBの魔物。

「倒せたの?」

「いや、無理だった。何とか逃げ切ったが……逃げている際に、魔物が20体ぐらい現れた。ダンジョンにいた冒険者達が魔物を倒しつつ外に出たんだが……」

ドンッドンッと大きな音に驚き、ダンジョンの入り口を見ると……。

「見ての通りだ。魔物も一緒についてきた」

透明な板みたいなものが入口を塞いでいた。とっさに見張りの人が防御魔法で蓋をしたらしい。いい判断だと思う。だが、防御魔法が弱いのか今にも魔物が飛び出してきそうだ。時間の問題かも。
もう一度ドンッとデカイ音が鳴り響き、ヤバイ!と思った瞬間、大きな音と振動と共に防御魔法が破られた。反射的に魔力を練り、ダンジョンの入口へと手の平を向ける。

「ッ、『結界防御』!」

できた!
前世では結界防御が扱える属性を持っていなかったが、今は全属性を持っているので出来る!と、一か八かでやってみたが上手くいったようだ。だが、入口を結界防御で囲み、再度蓋をしたが、数体取り逃がした。急いで逃げた魔物の後を目で追うと、冒険者達が対応してくれている。流石冒険者。
魔物と冒険者の戦いを目で追いつつ、見張りの男性に声を掛ける。

「ギルドに連絡は?」

「っ!いや、まだだ。今からする!」

見張りの男性がネックレス型通信機でギルドに連絡しているのを確認。
よし。これでアークに連絡が行き対応してくれるだろう。俺はそれまで魔物でも倒しに行きますか。
ペロリと上唇を舐め、片足に力を入れ地面を蹴った。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

BL
 俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。  ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。 「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」  モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?  重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。 ※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。 ※第三者×兄(弟)描写があります。 ※ヤンデレの闇属性でビッチです。 ※兄の方が優位です。 ※男性向けの表現を含みます。 ※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。 お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目

カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。

処理中です...