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しおりを挟むカランカランとドアベルが客のうるさいざわめき声に混じって高く鳴る。
アークはジンが座っていた席をしばらく見つめた後、ジンが残したウィンナーに手を伸ばしパクリと食べる。
「アーク様」
珍しく声をかけてきたイーダにアークは首を傾げた。
「なんだ?行儀が悪いって言いたいのか?」
「いいえ……」
「イーダ、言え」
「……彼はどこか、ジン様に……似てます」
「……そう、だな」
「仕草や口調……何より、アーク様を見つめる表情……まるで、昔の、アーク様とジン様を見ているようでした」
あぁ、まるでジンがいるみたいに楽しかった。
戦い方も似ていた。息子のジンだと錯覚するぐらいに……。だから、手加減ができずに怪我をさせてしまった。
まるで生まれ変わって俺に会いに来たんじゃないかと思うぐらい、似ていた。
……わかっている。いくら似ててもあり得ない。そんなこと、あるわけ、無い。
「アーク様……彼は一体……」
「イーダ、今日はよく喋るな」
「……失礼、しました」
「いや、いい。……イーダ、彼が来た時は気にかけてやってほしい」
「御意」
「はぁー、ここもかよ……」
俺は、今、疲れて地べたに座り込んでいる。
アークと別れた後、門に行き仮身分証を返すと預けていたお金が返ってきた。その際、門番さんに『宿は見つかったか?明日から騎士祭があるから大変だっただろう』と言われ意味がわからなかった。よくよく聞いてみると明日から5日間騎士祭という。8年前のスタンピードの時、騎士達が命を懸けて王や国民を守り抜いたことに、全国民が称賛した。王はその功績を称え、毎年騎士パレードやイベントを開催するようになったそうだ。
「……8年前」
前世の俺が死んだ日だ。
そうか、そんなに経ってるんだな。実感がわかない。あれから仲間はどうなったのだろう。明日、会えるかな……。
ぼーと行き交う人を見つめていると、旅行者らしい子供がお菓子を食べながら親と話をしていた。
どうやら宿が取れず困っていたところ、宿の人から門の外ならばテントを張っていいと聞いたらしい。
俺もそうしようとインベントリを開く。
あっ、テントがない。布は……ある。そういえば冒険者時代テントが破れて捨てた記憶がある。その後、騎士団に入るのが決まってたから支給されると聞いて買わなかったんだった。
買いに行きたいが今日は色々ありすぎて流石に疲れた。まぁ、1日なら布だけでも大丈夫だろう。
フラフラと門の外に出るとたくさんの旅行者達がテントを張っていた。
フラフラと人がいない外壁へ行き、布を頭から被ると崩れるように寝っ転がった。
「あー、疲れた」
しばらく横になったまま辺りを見渡していたが、いつの間にか眠ってしまった。
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