18 / 112
17
しおりを挟む「はぁ……ジン……お前、ヤバイな……」
間をたっぷり開け、眉間にシワを寄せそう呟くアークを、仰向けのまま息を切らし、見上げる俺。
「はぁっ……はぁっ……んっ……やば……い、です、かっ……」
「あぁ、体が固すぎだ……」
「はぁっ……はぁ……、もうっ、一回っ、はぁ……お願い……します……はぁ……はぁ……」
「でもな、まさかここまでだとは……」
「お願いっ……アーク、さん……はぁ……後、一回で……いい、からっ……はぁ……んっ」
アークは困ったように深いため息をつくと、ぐしゃりと俺の頭を撫でた。
「……はぁ、わかった。後悔するなよ」
「はい……でもっ、少しだけでっ……いいのでっ……はぁっ、んっ、休憩、させて……ください」
「……わかった。今度は身体強化使っていいからな」
「了解っ……ですっ……はぁ……」
そう、もうわかっていると思うが、俺らは別にエロイことをしているわけではない。
あの後、地下の練習場に連れていかれ、アーク自ら実技試験をしてくれちゃったりした結果がコレである。
魔法不可の槍オンリーでは、こんなものだろう。いままで、運動をしてこなかった体だ。めちゃ固いし、筋肉なんてない。
戦うイメージは出来ている。ただ、何度やっても体が追い付かないだけ。思うように体が動かず何度も転けた。おかげで、傷だらけのボロボロだ。対戦中、あまりにも酷かったのでアークの顔がひきつっていた。魔法さえ使えれば少しは相手にはなるのに!……たぶん。
数分後、息も落ち着いてきたので、魔法で一口サイズの球体の水を出し、それを口に入れ、喉を潤わせた後、立ち上がった。
「よし、復活!アークさん、お待たせしました!」
身体強化し、アークの方向を見ると、目を大きく見開いていた。
「アークさん?」
「あっ、いや、昔同じ飲み方の奴がいたが……珍しくてな……」
「コレですか?」
人差し指の上に一口サイズの球体を浮かべさせた後、魚の形に変化させ、ぐるぐると回す。
「凄いな……ここまでの細かい制御魔法は難しいはずだ。通常は手の平に出して飲むか、コップに入れて飲むかなんだが……」
あぁ、そう言えば大抵の人は、細かい制御魔法は訓練しても難しいて言ってたな。前世じゃ目立つからと、水魚はアークに見せてなかったことを思い出す。
「まぁ、死ぬ気で頑張ったので……」
あの時は生きるか死ぬかの日々を送ってたから、何度も血反吐吐いて死にかけた結果、制御ができるようになった。
いやー、今も思い出すと口の中が鉄の味がするわ。
くるくると空中に泳がしてあった水魚を自分の口の中へと思ったが、アークがじっと水魚を見ていたのでピンとイタズラを思いついた。
「アークさん、水魚見てて」
「ん?あぁ」
くるくるとアークの周りを回り一回転した後、口許へ軽くキス、キス、キス。ぶはっと思わず笑ったアークの口の中へ水魚を素早く入れ、パチンと指を鳴らすと、水魚は水に変わる。
慌てて口を閉じ、水を飲み込んだアークは俺を見るなりバシッと軽く頭を叩く。
「ビックリしただろうが。でも、まぁ、ご馳走さん」
愉快そうに笑うアーク。何だかイタズラが成功したのにスッキリしない感が……。色々消化不良。
266
お気に入りに追加
1,466
あなたにおすすめの小説
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
悪役令息物語~呪われた悪役令息は、追放先でスパダリたちに愛欲を注がれる~
トモモト ヨシユキ
BL
魔法を使い魔力が少なくなると発情しちゃう呪いをかけられた僕は、聖者を誘惑した罪で婚約破棄されたうえ辺境へ追放される。
しかし、もと婚約者である王女の企みによって山賊に襲われる。
貞操の危機を救ってくれたのは、若き辺境伯だった。
虚弱体質の呪われた深窓の令息をめぐり対立する聖者と辺境伯。
そこに呪いをかけた邪神も加わり恋の鞘当てが繰り広げられる?
エブリスタにも掲載しています。
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!
ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー]
特別賞受賞 書籍化決定!!
応援くださった皆様、ありがとうございます!!
望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。
そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。
神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。
そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。
これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、
たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。
僕はただの妖精だから執着しないで
ふわりんしず。
BL
BLゲームの世界に迷い込んだ桜
役割は…ストーリーにもあまり出てこないただの妖精。主人公、攻略対象者の恋をこっそり応援するはずが…気付いたら皆に執着されてました。
お願いそっとしてて下さい。
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
多分短編予定
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる