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しおりを挟むアークと初めて出会ったのは、ベルに助けられ数ヵ月がたった11歳の頃だった。
俺はいつものように食料を狩りに出掛けていた。
レベルもだいぶ上がり、ここら辺に住んでいる魔物は軽々と倒せるようになっていた。
そう、だから、少し油断していた。最後の止めを誤ってしまい、魔物に足をざっくりと切られてしまった。
だらだらと流れる血を数秒眺め、痛いな…とベルを呼ぼうと思った時だった。
「おぃ!大丈夫か!」
無精髭を生やしたおじさん、いや、青年がこちらに向かってきてテキパキと治療を始めた。
「ちっ、深けぇな。おぃ、親はどうした?」
「……いない、です」
「はぁ?いない?じゃぁ、どうしてこんなところにいるんだ?ここはお前のようなガキがうろついていい場所じゃねぇんだよ」
「……」
何と答えたらいいか迷っていると、チッと舌打ちされた後、担がれて街まで連れていかれた。
運ばれた場所はバクスの冒険ギルド。
「おい、お嬢、治療魔法を頼む」
受付けにいた女性が慌ててやってきて、治癒の魔法をかけた。数分後、傷が塞がると青年が『悪いな』と言うと、女性は『つけとくわ』とウィンクをして去っていった。
バタンとドアが閉まり、シーンと静まり返る。
どうしていいのかわからず、まずはお礼を言おうと口を開く。
「あの、ありがとうございました。……これ、いくら払えばいいですか?」
「あ?あぁ、治療のことか。ガキが気を使うんじゃねぇ。金なんていらねぇーよ」
グシャグシャと頭を乱暴に撫でられる。
「っ!」
大きな手で頭を撫でられたことに、感じたことのない何かが胸に広がった。
「……」
あぁ、なんだろう、この気持ち。
この不思議な気持ちが分からず固まっていると、青年が名前を聞いてきた。
「俺はアーク。お前は?」
「ジン……です」
「ジン、一人で家まで帰れるか?」
頷くと、「偉いな」とまた頭を撫でられた。
それから、1カ月後ぐらいだったと思う。最初に出会った場所でアークと再開した。
「あっ、アークさん」
「ん?ジン!」
俺を見るなり、アークが青ざめた表情で慌てて近付いてきた。
「大丈夫か!」
訳がわからず首を傾げる俺に、アークが焦ったように叫ぶ。
「全身血だらけじゃないか!」
「血?あぁ、大丈夫。これ、魔物の血だから。ほら、アレ」
「は?」
指を指した先には、大きめの魔物と中ぐらいの魔物、そして、数体のザコの死体。
「Cランクのブラックタイガーじゃねぇか……」
「ブラックタイガーっていうんだ。これ、美味しいよね」
淡々としゃべる俺にアークは深いため息をつきながら、俺の肩にぽんと手を置いた。
「色々、教えねぇと、いけねぇみたいだなぁ」
笑ってはいるが、こめかみに青筋が浮き出ている。
どうやら怒っているらしい。
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