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しおりを挟む門番さんに笑顔で礼をし、大きな門を抜けると沢山の人達がイキイキした表情で行き交っていた。
行き交う通りには、たくさんの出店がズラリと並び、野菜や果物、魚や肉などが売られている。
「変わったな……」
昔は多くても数店舗しか出ておらず、人も少なかった。隣の国が近かったせいか、いつ戦争になっても可笑しくない場所だった。子供などめったに見かけることもなかったのに、今はどうだろう。たくさんの子供たち、大人達や観光客で溢れ返っている。
「いったい、俺が死んでどのぐらいたったんだろう……」
ちょっと、不安になってきた。
昔の記憶を頼りに冒険ギルドを探す。
「あった……懐かしい」
大きな灰色の5階建て。周りの建物を比べるとわかるが結構大きい。元々雑貨店だったらしく、ギルドマスターが値切って値切りまくって手にいれたものらしい。
地下室は練習場、1階は冒険者専用依頼全般受付と食事処兼バー、2階は依頼者受付と会議室、3階は冒険者緊急宿、4階はギルドマスター室と重要会議室、5階は秘蔵室となっている。
ドキドキしながらギルドに入ると共に、全身にフッと清潔魔法がかかる。これは以前ギルド内の臭さが問題となったときに俺とギルドマスターが考えた魔法だ。入った者の魔力を使うが微々たるものなので問題はない。
まだあるということは前世の俺が死んでからそんなにたってないのかもしれない。
ギルドの懐かしさが蘇り心が騒ぎ出す。知った顔がいないかきょろきょろと見渡すが、いなかった。
そうだよな……。
ちょっとセンチな気分になりそうなのをぐっと押し込め、冒険者登録の受付へ向かう。
「バクスの冒険者ギルドへようこそ。えっと……」
男性が俺を顔と姿を見てちょっと戸惑っている。
この世界の平均寿命は150歳で、成人は16歳。身長もかなり高い。俺の今の身長じゃ10歳ぐらいにみえるよな。
顔は幼く見えないはずだから依頼か登録か迷っているのだと思いたい。
「あの、16歳になったので冒険者登録を……」
「あっ、はい。冒険者登録ですね。ありがとうございます。まずはこちらに記入をお願いします」
名前、年齢、出身(不明でも可)、得意な技の項目、冒険者になりたい理由、を書いていく。
ジン、16歳、不明、魔法と槍を少し、金を稼ぐため、と順に書いていく。
よし、と顔を上げた瞬間、後から頭をポンポンと叩かれる。
「おー、新人かー」
少し掠れた、聞き慣れた低い声にドキリと胸が高鳴る。
焦る気持ちを抑え、ゆっくりと振り返った。
「……あ」
声の主を見た瞬間、前世の記憶が一気に甦った。ぶわっと感情が押し寄せ、目から涙が溢れだす。
冒険者らしいガッシリとした体格に、端正な顔付き。左眉から左頬に掛けて10センチほどの大きな傷跡がある白銀の髪で黒い瞳の男の名は、アーク・デルマルク。
メルゾーラの三大都市の一つ、バクスのギルドマスターであり、前世の俺を家族にしてくれた大切な人だ。
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