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しおりを挟む『ジン?』
「……ん?」
『ボーとしてどうしたの?』
「んー、いや、何でもない」
前世を思い出して、ほっこりしてたなんてちょっと恥ずかしくて言えない。
「あー、ところで、2人ともどうしてここに?あっ、おい、フウマ!」
ひょいっとフウマに眼鏡を取られ、一気にボヤける視界に目を細めた。
自慢じゃないが、俺の視力は0.1。めっちゃボヤける。日頃の不摂生が原因でここまで落ちてしまった。
「フウマ、眼鏡返せ」
『んー、やっぱ』
『ない方がいいわね』
『だな』
フウマ、ベルの順でそう言うと、2人して俺の視界を防ぎ、何かぶつぶつと呟く。反射的に目を瞑った俺の瞼にスーっと温かい何かが染み込んでいくような不思議な感覚を感じた。
『ジン、目を開けてみて』
ゆっくりと目を開けると、2人の綺麗な顔がはっきりと見えた。
「おぉ、よく見える……」
感動してると、ベルが嬉しそうに俺の頭を撫でた。
『ジン、さっき、どうしてここに来たかって聞いたわよね?』
「あぁ」
『ジンの魔力を感じて、いてもたってもいられなくて、飛んで来たの』
『んで、俺はその付き添い』
「へー、魔力で……。それにしてもよく俺だとわかったな。前と姿も形も違うだろ?魔力が同じってだけで別人かも知れないだろ?」
『うーん、そうねぇ、何て説明したらいいかしら……私達は人を姿形だけで判断するのじゃなくて、魔力の味や色も含めて判断しているの』
「魔力の味や色?」
『えぇ、私達にとって魔力は食事であり、薬であり、観賞するものなの。人の魔力はね皆違ってて、ジンの魔力は特別に甘くて美味だし、近くにいるだけで心地よくてずっと側にいたい、見ていたいって思ちゃうのよ。だから、私達はその魔力を感じたくて、欲しくて、人と契約するの。
一度気に入った魔力は忘れないわ。人だって美味しい料理を食べるとその味を覚えてまた食べたくなるでしょう。それと同じ』
なるほど、つまり簡単にいえば、精霊たちは俺達、人の姿が変わっても、ご飯=魔力で誰だかわかるってことだな。じゃぁ、俺がこいつらに好かれるのは魔力が美味しいからなのか?……なんだか複雑な気分だな。
俺のブルーな気持ちを感じ取ったのか、ベルがぎゅっと抱きついた。
『ジン、違うわよ。私達はジンの魔力だけじゃなく、貴方のすべてが愛おしくて契約したの。じゃなきゃ、わざわざ契約と言う名の鎖なんて窮屈なものはしないわ』
『その通りだ。特に俺達は滅多に契約はしない。俺達が契約すれば、すべての精霊達がその契約者に服従せねばならんからな。まぁ、たまに逆らうやつもいるが……もし、そいつが逆らって俺のモノに傷一つでもつけてみろ、容赦はしない』
冷酷なフウマに動揺しつつ、ベルを見るとこちらも同意するようにうんうんと頷いている。
……ちょっと怖いな。
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