私には未来が見える ※ただし生活密着型

黒辺あゆみ

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第三話

11 終わりました

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わたしが襲撃した教室内にいる生徒全員の鉢巻を回収し終えたところで。

 ピンポンパンポーン♪

 教室に設置してあるスピーカーが鳴った。

『ゲーム終了!』

それからそんな声が流れる。どうやら鉢巻争奪戦は、ここまでのようだ。

「くそぉ、もうちょいだったのに!」

私に負けた男子たちが悔しがる。
 うむ、ギリでカモっちゃって悪いね、諸君!

『ゲームに勝ち残った生徒は、講堂へと移動してください!』

朝集まった講堂に再集合なようだけど。
 続けてあった説明によると、鉢巻を失くした生徒は行かなくてもいいみたいだけど、結果を見に行くのは自由だそうだ。

「だってさ、神高」

「僕はゲーム結果に興味ないんですがね」

これらのことを聞いた私が神高を見ると、講堂への移動を面倒がる様子。
 そうね、アナタはこのゲームも基本、私の付き合いだもんね。
 だけどボディガードな以上、最後まで私に付き添うことになった。
 というわけで、私と神高は移動を始める。
 すると私たちと同様に、大勢の生徒が講堂へとゾロゾロ歩いている。
 鉢巻がない生徒ばかりで、ゲーム結果を見に行くのが目的のようだ。
 なるほど、皆野次馬したいんだね。
 そういえば、徳倉君や松川君はどうなったかな?
 そして今更だけど、移動するほとんどの生徒はみんな手ぶらで、リュックを背負っているのは私だけ。
 だから私だけ、なんだか遠足帰りみたいなビジュアルになっていた。
 そうか、みんなこのゲームを体育の延長線上みたいに考えていたのか。
 お茶とおやつを用意したのは私だけと。
 長丁場のレクレーションを舐めていたな?
 体力なし&補給なしじゃあ、自然相手に生き抜けないぞ?
 こうした理由で周囲から若干浮いている私だけれども、奪取した鉢巻を全部リュックに仕舞っているので、その点で目立つことはなかった。
 ところで、周りで遠巻きにしている野次馬たちの態度が、朝までと少し違うみたいだ。
 朝は私じゃなくて神高ばっかりが注目されていたのが、今は私に視線が突き刺さっている。
 しかも朝はそれでもたまに来る視線が、無害な小動物系の珍獣を見ているみたいだったのが、猛獣系の珍獣を見つけたみたいになっている。
 歩いていると自然と道が空くし。
 おお、これが噂のモーゼ状態か!

「マジか」

「本当だって!」

「なにそれ、こわぁい!」

「うわ、今目ぇ合った! やられる!」

そしてヒソヒソ声ばかりが届くのは、今までと変わらないという。
 私と直で話すのって、神高と徳倉君松川君、あとは万智先輩と鴻上先輩くらいなんだよね。
 最後の人、私は目が合ったくらいで噛みつきませんから。
 安心安全な人間ですよ!
 ちょっと一発かましてやろうという作戦は、おおむね成功っぽいかな?
 だがしかし、ビビるのはまだ早いのだよ諸君!
 このような状況の中、講堂へと到着した。
 講堂前では、生徒会の人が机の前で受付をしている。
 その中でも入学式の受付でも見た覚えのある女子の先輩が、わたしを見てニコッと笑ってくれた。

「モニターで見ていましたよ、大活躍でしたね」

「ありがとうございます!」

そう言ってくれた先輩に、わたしもお礼を言って笑みを返す。

「では安城さん、集めた鉢巻を提出してください」

「はい!」

生徒会の先輩に促され、私はまず自分の腕に巻いていた鉢巻を机の上に置いて、リュックを開けて他の鉢巻を探る。
 そこで背後から、「そうか、鉢巻を保管する鞄を持っとけばよかったのか!」と悔しがる男子の声が聞こえる。
 手ぶらだと鉢巻が増えると嵩張るということを、シュミレーションしていなかったのが落ち度ですよ!
 ちょっと得意になりつつ、私はリュックから十の束ごとに分けていた鉢巻を出していく。

「え……?」

わたしが徐々に積み上げていく鉢巻の束に、生徒会の先輩が顔を引き攣らせている。
 まだまだ、どんどん行くよ!

「……よし、これで全部です!」

そしてリュックがぺしゃんこになって、逆に机の上が鉢巻でこんもりとなったことに、周囲がシーンとなる。

「これ……全部を、あなたが?」

先輩がそう尋ねながら、チラッと神高を見る。
 あ、神高に手伝ってもらったんだろうとか、そういうこと?
 まあ確かに、移動は力を貸してもらったんで、助力ナシとは言えないけどね。
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